千葉県知事選が盛り上がっています。あまり具体的なことを書くと不都合が生じるので、公職選挙法のトリビアを少しだけ。なお、私は自分が民主党に属することに基づいて、特定の候補者を攻撃する意図は有しておらず、あくまでも法の適用関係を述べるだけです。


 私はこの業界に身を置いて3年半くらいになります。そういう私が見て、(普通の人はなんとも思わないんでしょうが)ギョッとしたものがありました。このサイト です。何が驚いたかと言うと、「千葉県知事候補」という文言がストレートに書いてあることです。少し説明します。


 公職選挙法上は、選挙の告示までは「選挙活動(私に一票を入れてくださいという活動)」は禁じられております。選挙告示日までやっているのは、一応「政治活動(政治信念を理解してもらう活動)」です。とはいっても、実態的にはその「政治活動」と「選挙活動」との違いは分かりにくいのですが、ともかくそういう違いがあります。


 そして、選挙の告示までは、立候補の意図を持っている人であっても、あくまで「候補予定者」に過ぎないわけであって、私が「●●選挙候補です」と公言していいのは告示後のみです。


 更には、選挙告示日の0:00以降は候補者はウェブサイトをいじることが禁じられています。これはこれで今、ウェブ選挙解禁の議論がありますが、少なくとも今はダメです。


 お分かりいただけたでしょうか。上記の要素をすべてつなぎ合わせて考えると、自分のことを「千葉県知事候補」というかたちでウェブ上で売り込むことは法令上はありえないはずなのです。候補になった瞬間にウェブをいじってはいけない以上は、原理的にありえないはずなんですよね。


 ありとあらゆる政治関係のウェブサイトというのは、すべて「政治活動」の範疇に収まっていることが、今の公職選挙法上の理念です。「選挙活動」になってはいけないし、なるはずがないんですね。他の候補のサイトを見てみましたが、まあ、グレーゾーンがかなりあるものの最後の一線を越えちゃいけないという配慮は見え隠れします。


 まあ、本当のところは「公職選挙法と選挙の実態はかなり乖離している」とお感じになられた方が多いかもしれません。識者によっては、この「政治活動」と「選挙活動」の区分けをなくすべきと主張しておられます(たしか、北川元三重県知事はそういう主張だったと記憶しています。)。ただ、そうすると平時から選挙活動をムチャクチャにやる人が出てくるでしょう。私は今の公職選挙法の仕切りは、そう悪いものではないと思っています。あとは運用の問題でしょう。