イスラエルとパレスチナとの間での紛争に関して、日本政府は政府特使を現地に派遣して、まずはエジプトでアブルゲイト外相と会ったそうです。


 私は外交政策上は(「人道上は」ではありません)イスラエル・パレスチナ和平というのは「お付き合い」でいいし、「お付き合い」以上のことをやろうとしても無理と思っている人間です。日本は「情報収集と適時適切なメッセージ発信」+「双方に恨まれない程度の『貢献』」で止めておく方が無難です。変にイニシァティブを取るべく気張る必要もないし、トップを切って援助することもないでしょう。それくらいが現実的な立ち位置でしょうし。


 ただ、そういう私であっても、特使派遣自体は意義がないことだとは思いません。まあ、「適切なメッセージ発信(「関心は持ってますよ」くらいの)」の一環だと思えば納得できないこともありません。


 しかしですね、派遣されたのが有馬龍夫特使と聞いて驚きました。既に瑞宝大綬章(かつての勲一等瑞宝章)を貰った方で、たしか75歳を超えているんじゃないかと思います。私が役所に入った15年前には既に退官間近でしたね。高齢者を軽んじる意図は毛頭ありませんが、何も75歳を超えた人を今、一番のホットイシューに関する特使で出さなきゃいけないくらい若い世代には人材がおらんのか?という気になりました。


 そういう有能な人はいるんですね。しかし、何故、そういう人にお鉢が回ってこないかというと、人選自体が完全に官僚世界の秩序と論理で動いているからですね。元大物大使が現役気分でいるのを外務官僚の後輩が止めきれてないのでしょう。かつての上司に引導を渡せず、今でも何となくポジションを与え続けなきゃいけなくなっているわけです。日本の霞が関でのみ通用するその「元大物大使のステータス」は外国では一切通用しません。勿論、人生の先達に対する敬意は表するでしょうけども、具体的なビジネスのレベルでは非常に違和感を感じている可能性が高いです。アメリカが特使を送る時、こういう人選は絶対にしないでしょう。


 折角、真剣に特使を送るなら50代でバリバリ動くことができて、場合によってはシャトル外交くらいできる人を(外務官僚としての経験に拘泥することなく)出せばいいのに、と思います。欧米がこの問題で大騒ぎしている時に、日本は70代後半の特使を送ったという事実に私はとても違和感を持ちました。その事実自体が、相手に対するメッセージになっていることに、もっと留意すべきではないかとすら思うわけです。