金融機能強化法に関連して、資本注入の対象として農林中金を含むか否かの話が発展して、最後には農協等の政治的中立を求める方向にまで来ています。我が民主党が農協法改正案を提出しており、一括して農協法、水産業協同組合法、土地改良法、森林組合法、農林中金法の中に「特定の政党のために利用してはならない」という文言を盛り込もうとしています。

 これに対しては、JA全中、全林連、全漁連が抗議声明を出しています。抗議は総じて「切実かつ正当な要望を実現させる主体的な行動を妨害する・・・」といった感じです。党派を抜きにしても、この抗議自体はちょっとピンぼけだなと思います。「自分達は中立でない」と宣言しているようなもので、私から言わせれば、この程度のことは受け入れることによって、農林中金を資本注入対象団体に入れる件を纏めに入った方がいいんじゃないかなと思います。


 それはともかくとして、この政治的中立性ですが、どういう団体に求められるのかということを調べてみました(○は関連する政令等です。)。


● 教育基本法第十四条第二項
法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。


● 特定非営利活動促進法第三条第二項
特定非営利活動法人は、これを特定の政党のために利用してはならない。


● 商店街振興組合法第四条第三項
組合(注:商店街振興組合及び商店街振興組合連合会)は、特定の政党のために利用してはならない。


● 商工会法第六条第三項
商工会は、これを特定の政党のために利用してはならない。


● 中小企業団体の組織に関する法律第七条第三項

組合(注:商工組合及び商工組合連合会)は、特定の政党のために利用してはならない。


● 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法第三条
 何人も、教育を利用し、特定の政党その他の政治的団体(以下「特定の政党等」という。)の政治的勢力の伸長又は減退に資する目的をもつて、学校教育法に規定する学校の職員を主たる構成員とする団体(その団体を主たる構成員とする団体を含む。)の組織又は活動を利用し、義務教育諸学校に勤務する教育職員に対し、これらの者が、義務教育諸学校の児童又は生徒に対して、特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してはならない。


● 自衛隊法第六十一条第一項

隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。


○ 自衛隊法施行令第八十六条
法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的目的は、次の各号に掲げるものとする。
三 
特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること。


○ 同施行令第八十七条
法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的行為は、次の各号に掲げるものとする。
六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。


● 商工会議所法第四条第三項
商工会議所等(注:商工会議所又は日本商工会議所)は、これを特定の政党のために利用してはならない。


● 地方公務員法第三十六条第二項
職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。(以下略)


● 中小企業等協同組合法第五条第三項
組合は、特定の政党のために利用してはならない。


● 社会教育法第二十三条
公民館は、次の行為を行つてはならない。
二 特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。


● 国家公務員法第百二条

職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。


○ 人事院規則一四一七

5 法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
三 特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。

6 法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。
六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。


● 消費者生活協同組合法第二条第二項
消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会は、これを特定の政党のために利用してはならない。


● 地方自治法第二百六十条の二
 町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(以下本条において「地縁による団体」という。)は、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
(略)

9 第一項の認可を受けた地縁による団体は、特定の政党のために利用してはならない。


● 食品安全基本法第三十二条第二項

委員(注:食品安全委員会)は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。


● 地方独立行政法人法第五十条

役員(注:特定地方独立行政法人)は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。


● 労働金庫法第五条第三項
金庫は、その事業の運営については、政治的に中立でなければならない。


 ・・・と、こんな感じです。もう少しあるのかもしれませんが、これ以上は調べきれませんでした。


 さて、この中に農協、漁協、全林連、農林中金が入ることが是か非かということになるわけです。まあ、農林中金は抵抗できないでしょうね。労金が入っていますから。また、この政治的中立規定によって、商工会、商店街、商工組合等が「切実かつ正当な要望を実現させる主体的な行動を妨害」されているとは到底思えません。ここも苦しいんじゃないかなと思います。


 上記にも書きましたが、JA全中をはじめとする各団体の皆様方はこんなことに拘ることなく受け入れて、農林中金を資本注入の対象団体に含めるためのディールに入った方がいいんだと思いますけどね。この件、私にはちょっと不可解なところがあります。