とある政権与党の国会議員の書いたものを読んでいたら、「うんうん、そうなのよね」と思ったことがありました。私はその方については「うーん、それは違うんじゃないか」と思うこともあるのですが、今回は素直に納得しました。


 それは「ODAに優先順位は付いているのか?」ということです。国、分野、セクターそれぞれにおいて、重点が何処にあるのかということですね。一応、こういう基礎となるのは「政府開発援助大綱 」というものです。もう一度読み直してみましたが、とどのところ「折衷案」的な要素が非常に強く、確実に把握できたのは「アジアは重点地域」ということだけです(意地の悪い読み方なのでしょうが)。後の部分は「どうとでも読める」という感じです。アジアが重点地域と言いつつも、「アフリカ開発会議」もありますし、質問すれば「中東も重要」と言うでしょう。ガバナンスが大事だと言いつつも、独裁国家への支援もかなりやっています。


 ある程度は仕方ないと思うのですが、かといって「どうとでも読める」状況では政策方針としては不十分だという指摘は免れないでしょう。かつて、私がとある途上国の援助担当幹部と話していた際、「んで、あなたの国としての開発優先順位は何処だ?」と聞いたら、「全部だ」という返事が返ってきたのを思い出しました。当時の私は今よりもガツンガツン言うタイプだったので「あのな、『全部優先分野だ』ってのは気持ちは分かるが、実務上は『どれも優先分野でない』というのと大差ないのよ。」と突き返したものです。なんとなく、それと似た感じがあります。


 とは言っても、何かを落とすというのは難しいのですが、少なくとも「こういう国には援助しない」くらいのことは相当明確に方針として立てていいのではないかなと思います。「独裁の国」とか、「ガバナンスがなってない国」とか、そういうところにはやりませんよ、と言うくらいのことをしないと、相手に対してもグリップが利きません。


 かつても一度書いたのですが、一例として再褐します。1998年のトーゴ大統領選挙だったと記憶していますが(2003年だったかも)、1967年から大統領をやり続けていたニャシンベ・エヤデマがかなりインチキをやって大統領に再選したのですが、それに対して欧米は援助をボイコットしました。ただ、日本は既に援助を閣議決定したという事実だけをもってトーゴにそのまま援助を実施。国際社会からお灸をすえられているはずのトーゴに、「けど、日本は支援してくれるもんね」という勘違いをさせてしまいました。こういうところにくらいは手当てができるようでないと、日本の援助体制は非常に硬直的な印象を与えてしまいます。


 優先順位を付けるということは、とりもなおさず優先しない分野をある程度切り捨てることでもあります。そこまでやるのはなかなか難しいのですが、少なくともその覚悟が滲んでこない政策というのは、結局八方美人になってしまいます。ODA予算が限られてくる中、今後は日本として優先順位を付けていかないといけないのでしょうからね。