久しぶりにアフリカネタです。アルジェリアで憲法改正が行われて、大統領の3選を禁じる規定が廃止されたようです。何のことはない、今のブーテフリカ大統領にあと5年以上大統領をやらせるよう、政権が憲法を変えたということです。


 まあ、この手の話はアフリカだけでないのですが、アフリカの名君としての呼び名も高かったブーテフリカ大統領にしてこの程度か、ととても残念になりました。アフリカでトップランナーと言えば、南アのムベキ大統領、アルジェリアのブーテフリカ大統領、ナイジェリアのオバサンジョ大統領あたりでしたが、ムベキは党内闘争に敗れ退場させられました。オバサンジョは、今回のブーテフリカと同じような3選を可とする憲法改正に失敗し後進に後を譲りました。そろそろ、アフリカもまた世代交代の時期に入ってきたかなと思っていた矢先にこのブーテフリカ大統領の3選を可とする憲法改正でした。


 えてして、こういうことをする政権は「ろくでもない」度合いが高まってきます。裸の王様とまでは言いませんが、まあ取り巻きが政権維持に既得権益を持ち、独裁の度合いが高まってくるのですね。


 かつてのブーテフリカ大統領は結構輝いてみえていました。アルジェリアという国は、1991年に民主選挙をやったら、イスラム勢力が大勝してしまったため、軍が選挙無効を宣言してクーデターを起こました。その後の10年は事実上の内戦状態で悲惨なものでした。頻繁に欧米人が首を切られて殺害されたりしたものです。実はそういう中で闘争的なイスラム原理主義者(この表現は嫌いなのですが)が育成され、アルジェリアからアフガニスタンに行ったり、その逆だったりと、国際的な武装勢力ネットワークの一つの軸になっていたりもしました。


 そういう中、1999年に民政移管が実現して、ブーテフリカ大統領が出てきた時には「これでアルジェリアも落ち着くよな」と思ったものです。それくらい輝いてみえました。勿論、ブーテフリカ政権の10年が決して輝かしい10年だったとまでは言えません。言論の自由を抑圧している件は褒められるものではありません。ただ、その前の10年が悲惨だったので、ウォッチャーとしては「少なくとも良くはなった」という前向きな評価をしたいところです。また、外交面での活躍は特筆してもいいでしょう。元々26歳の時に外相をやったことがあり、通算16年くらいは外相をやっていたので、その経験たるやなかなかのものです。エチオピア・エリトリア紛争の調停や大湖地域での活動は盛んでした。アフリカを代表して、欧米と対峙しても一歩も引かない姿勢に感心したものです。


 だから、残念です。アフリカの小国の独裁政権がやるのなら、「しょうがねえなあ」で済ましてしまいたくなるような話ですが、アフリカの大国の一つアルジェリアでそういうことが起こると「よくないお手本」になるんですよね。


 こういう時、日本政府はどういう見解を持つのか、これまた関心があります。TICADⅣでは「ガバナンス」という言葉が非常に多用されました。「民主主義」という言葉をどちらかと言えば避けて、「上手く統治されている」という意味合いの強い「ガバナンス」という言葉が多用されました。その是非についてはここでは書きませんが、「Good Governance」というスローガンとの関係で、今回の件はどう見えているのだろうか。表向き聞くと「内政事項ですから」という返事が返ってくるんですかね。それはそれで別の残念さがあります。