今をときめくグルジア。行ったことがある身としては思いが深いです。ただ、ちょっと今日は違う視点から見てみます。


 オリンピックに出場していたグルジア代表団は、ロシアとの紛争開始により出場を取りやめ帰国するかどうかの選択に迫られましたが、サーカシヴィリ大統領の決断で出場することになったという経緯は報道されていましたね。そういう中、男子柔道では90キロ級でチレキゼが金メダルを取っていました。この階級、アテネオリンピックではズヴャダウリという選手が日本の泉選手を破って金メダルを取った階級です。つまり、グルジアは男子柔道で選手は異なるものの二連覇なんですね。ただでさえ内心穏やかでない中、金メダルを取ってくるというのは素晴らしいことだと思いますね。この層の厚さ、今後、グルジア柔道は益々伸びてくるでしょう。


 まあ、柔道ネタはともかくとして、私がかねてからグルジアについて「その説は違うんじゃないか」と思っていることがあります。それは「グルジア」を「ジョージア(Georgia)」と英語表記することの起源です。「グルジア」という名前については色々な説明があるんですが、こういうのがメインだそうです(ウィキペディア英語版より)。


1. ラテン語で「農業」を意味する「georgicus」という言葉から来ている。

2. グルジアで活動しており、今でもグルジアで人気のあるキリスト教の聖人ゲオルギウスから来ている。

3. 古代ペルシャ時代、グルジア人は「グルジャーン」と呼ばれていたことからきている。


 日本ではすぐに欧米社会での「Georgia(ジョージア)」に引きずられてしまい、2.の説が採用されているようですが、私は「それって違うんじゃないの?」と感じています。というのも、別の言葉ではとても「ゲオルギウス」とは関係のなさそうな読みだからです。

 

● アラビア語:جورجيا→私の拙いアラビア語知識によれば「ジュールジヤー」と書いてあるように読めます。)

● ペルシャ語:گرجستان→私の拙いペルシャ語知識によれば「グルジスターン」と書いてあるように読めます。)

● トルコ語:Gürcistan→私の拙いトルコ語知識によれば「グルジスタン」と書いてあるように読めます。

● ロシア語:Грузия→私の拙いロシア語知識によれば「グルジヤ」と書いてあります。

● グルジア語:საქართველო→全くグルジア語の知識がないのですが、「サカルトヴェロ」と書いてあるようです。


 本当に聖ゲオルギウスから来ている読みであれば、ロシア語読みでは少なくとも「ゲオルギー」か、更にその派生形の「ユーリー」にある程度引きずられるはずですが、全然そんな気配はありません。また、信仰深いグルジアのことですから、聖ゲオルギウスから取ったのであれば、少しくらいその痕跡が正式名称にも残っていそうなものです。


 そもそも、グルジアという国と欧米の接点なんてのは相当に最近であり、参照するなら歴史的に接点の多かったペルシャ、アラビア、トルコといった地域の言葉に当たるのが筋であり、かつ、同じ正教会系に属するロシアといった言葉に当たって考えるべきでしょう。派生した英語読みから、起源を探るというのは邪道です。結果として、私は上記の中では3.の説にとても惹かれます。つまり、国内ではグルジア語の「サカルトヴェロ」という名前であり、国外では「グルジア」又は「グルジヤ」という言葉が定着し、そこから色々と派生していったというのが普通でしょう。


 では、何故欧米では「Georgia」と呼ぶようになったか。単に「グルジア」と聞いた時に、何となく一番近そうに聞こえたのが「ジョージア」だった、それだけだろうと思います。単なる欧米人の耳の感覚を優先した傲慢に過ぎないと、私は決めつけています。イギリス、フランスなどは結構そういうことを世界各地でやっています。


 欧米人が勝手に自分の耳を優先した結果、トンデモない読みになった都市として、シリアのアレッポという町があります。本当は「ハレブ(Haleb)」と呼ぶ町なのですが、そこに最初に入ってきた欧米人がフランス人だったのが不運でした。フランス語には「H」の発音が存在しないため、彼らは「ハヒフヘホ」が発音できません。その結果として、「ハレブ」が「アレッポ」まで崩れてしまいました。「H」を読めないフランス人のせいで変な名前にされてしまった例ですね。


 別に何の役にも立たない考察なのですが、結構拘りのネタです。