東京オリンピック招致に関して、石原都知事と宮内庁との間で激しいやりとりがなされています。宮内庁の東宮大夫が「招致段階から関わることは難しい」ということを話し、それに対して石原都知事が激怒しているということです。


 多分、宮内庁の発想は「皇太子にお出ましいただいてダメだったら傷がつく」、これが第一の理由だと思います。あの役所は基本的に「事勿れ主義」の権化ですので、恐らくはそういうことだと私は思います。それにくっつけるように「政治的な利用」云々の話があるのでしょう。


 かつてちょっと書きましたが、皇族というのはとても外国ではステータスが高いんですね。特に王室がある国はそうですし、更に言うと、王族が政治的権力を持っている国では、皇族からの働き掛けはかなり効き目があります。王族がいない国、例えばフランスでは何処か王族的なものへの憧れというか、かつてのブルボン王朝への復古みたいな思いがあるので、皇族は大歓迎されます。


 ちょっと数えてみましたが、多分王族があるのは日本を除いて27カ国だと思います。私の基準で分類するとこんな感じです(争いのある部分がたくさんありますが、大まかにこんな感じだということでお許しください。細かく「あそこの国の分類がおかしい」といった指摘は歓迎しますが、不勉強もありあまり責め立てないでください。)。


● 王族が政治的実権を持っていて、かなりその権力が強い国:アラブ首長国連邦、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ブルネイ

● 立憲君主制だけど王族が政治的権力を持っている国:モロッコ、ヨルダン、バーレーン、トンガ、スワジランド、ブータン、サモア、モナコ

● 象徴的な役割を果たす国:イギリス、オランダ、カンボジア、スウェーデン、スペイン、タイ、デンマーク、ノルウェー、ベルギー、マレーシア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、レソト
 特にこういう国の中でも、上の2つに分類される国に対しては皇族が訪れたりして働きかけをすれば、かなりのインパクトがあるでしょう。お気付きだと思いますが、中東の国が多いのですね。


 ここで私は「皇族」と書きましたが、「Crown Prince(皇太子)」でなくてもいいのです。「Prince(殿下)」でも十分なくらいです。例を出すのがちょっと憚られますが、例えばサウジアラビアのアブダッラー国王に対してオリンピック招致を働きかけると仮定して、福田総理がやるのと秋篠宮殿下がやるのではどちらが効果があるかというと、それは言うまでもなく秋篠宮殿下です(私の直感では10倍くらい効果が違います)。自分のカウンターパートは、伝統ある(と相手が認識する)皇族であって、偶然その時に為政者である(に過ぎないと相手が認識する)総理大臣ではないと思っている節がありますからね。


 なので、東京都側も「なんでもかんでも皇族」ということではなくて、皇族から当たってもらうことによって最大限の効果を発揮できる相手はだれなのかということをきちんと分析しないとダメですね。皇族が行っても響きが弱い国もありますから。中東あたりに主たるターゲットを定めつつ、欧州でも効果がありそうな国(必ずしも王族が残っている国だけではない)をしっかり見極めるのが一番賢いでしょう。


 それらを踏まえた上で、私が思うのは「宮内庁はもうちょっと融通を利かせてもいいと思うんだけどな。」ということです。この件では石原都知事に同情的です、私は。