昔から国会審議を見ていて、「もうちょっと何とかならんかな」と思っていることはたくさんあるのですが、その中でも「なんでもかんでも大臣出席を求めるのはどうかね」というのがあります。


 一番ヒドいのは外務大臣です。衆議院だけで予算、外務、安全保障、沖北特、テロ特、拉致特があって、参議院で予算、外交防衛、沖北特、拉致特、ODA特とあります。勿論、このすべてに出張っていくわけではありませんが、かなりの確率で呼ばれます。また、この他にも決算にも呼ばれたりします。これだけ出ていると、会期中は日中は外交活動などもっての外、国会にベッタリ張り付かなくてはならなくなります。


 この中で、網の目を縫うように日程を見つけて、外国訪問、要人との会談等をやっているのを見て、「外相というのは大変なもんだ。身体が3つくらいないとやれんよ。」と思いました。外国から朝、成田に着いて、そのまま国会審議に直行なんてことは珍しくはありません。普通の人なら間違いなく身体を悪くします。外国の外相でここまで国会に拘束される人はいないでしょう。


 かつて、私の上司が与党政治家を訪問した際に、「大臣を無茶使いするなよ。君達は前科三犯なんだからな。」と言われたという話を聞かされたことがあります。何のことかと言うと、外相というのは時に総理を目指す最有力者がつくことがあるので、外相ポストで身を粉にして頑張って、その結果、命に関わるくらいまでお体を悪くされた方がかつて3名おられたということです。具体的には安倍晋太郎、渡辺美智雄、小渕恵三のお三方です。実際はそれぞれの方に事情があったので、そう簡単に言い切れるものではないのですが、それでも外相ポストというのはかなり健康に悪いポストです。今で言うと厚生労働大臣なんかもそうかなと思います。年金、医療制度、労働問題、これを一人の大臣でやるのは至難の技ですね。


 国会審議出席の負担をもう少し軽くした方が、日本外交のみならず、日本の政治のあり方にとってもいいと思うわけです。今のように日中は国会審議で忙殺され、懸案課題についてはその間に行うというのは主客が逆転しています。今は国会側から「立法府の意志として呼んでいるんだから来るのは当然」というような認識が表明され、閣僚側も大半が議員ですからその意向に逆らうことはできないのですね。三権分立の帰結といえばそれまでですが、それにしても、もっと大臣に活躍してほしいと思うなら、少し解放してあげることが必要です。ひどい時になると、重要法案の審議では全大臣出席ということがありますが、例えばテロ特措法審議のために農林水産大臣を一日拘束して何になるんだろうと不思議に思っていました。


 解決策は簡単で、副大臣答弁をもっと活用すればいいわけです。今の副大臣は、かつての政務次官とは違って天皇陛下の認証官です。この点だけを取れば、閣僚と同じ重みです。それをそれぞれの副大臣も誇りにしているところがあります。ただ、実態は別に政務次官の時代と何ら変わりはないわけで、「結局、認証官になったのって、副大臣になる人の自己満足なんじゃないの?」と揶揄されかねないのが現状です。


 国会側が「政府提出法案を審議するんだから、大臣が出席して当たり前」みたいなプライドと建前論から、あちこちで大臣出席を国会審議に求めるという考えを改めて、「認証官たるところの副大臣が、大臣の名代として審議では答弁する」ということをもっと当たり前にしていくことは焦眉の急だろうと信じて疑いません。国会にはこの手のメンツに関わる話が非常に多いですが、メンツよりも中身を取るという発想に転換していくことも必要ですよ、きっと。


 こういうことを書くと、コメントで「あなたの所属する民主党がそう求めているんでしょ。」というご指摘があるでしょう。多分、そうです。だからこそ、その文化を変えたい、それがすべての人のためになると思っているということです。