日本のコメ輸入事情の続きです。
大まかに言って、前回こんなことを書きました。
● 76.7万トンのアクセス機会を提供する義務がある(輸入義務ではない)。
● ただ、自由にアクセス機会を提供すると外国から良いコメが入ってくるので、国が一元的に76.7万トンを輸入してきた。
● 国は国内では売れにくいコメを優先して買ってきた。その結果、在庫が積みあがった。
● 昨年は76.7万トンの輸入をしなかった。
● 今年は外国から買ったコメを輸出に回している。
これがアメリカから見ると、多分、こんな感じに見えているでしょう。
○ 本来だったら、輸出に回すなんてのは、アメリカのコメ輸出市場を荒らすので認められない。
○ ただ、今はコメが市場に出回っていない状況だから仕方がない。
○ しかも、日本は76.7万トンの輸入の中でアメリカのコメを優先的に買ってくれている(注:自由にアクセス機会を提供するとアメリカ産はかなり排除されるはず)。
○ まあ、こういう例外的な状況であれば、日本が勝手に輸出するのはいいのではないか。ただ、輸入が76.7万トンに満たないことには不満がある。
つまりは、これまでも買ってくれてきている、今回は国際市況がかなりタイトで、日本が再輸出しても別にアメリカは困らない、そういう理由で「特に問題ないんじゃないの」ということです。徹頭徹尾、国益を重視した判断でありつつも、国際的な考慮も幾許かは持っているということでいいと思います。
さて、これがオーストラリアだったらどう見えるか。本当にこう発言してないかもしれませんが、多分心の中ではこんなことを思っているはずです。
◎ 日本はこれまでオーストラリア産米には温かくなかった。あまり買ってくれなかった。
◎ しかも、日本国内で需要のないコメを買っておいて、「国内で売れないから」とブツクサ言ってはさっさと輸出に回している。
◎ 全然WTOのルールを守っていない、けしからん。そもそも、輸出する時に(マークアップ付加後の)国内販売価格より下げて輸出しているんじゃないか。それは輸出補助金じゃないか。もっとけしからん。
今の日本の慣行を責め立てるでしょうね、こんな感じで。ルール遵守の姿勢が強く出ますが、それはルールが輸出国にある程度有利にできているからルール遵守が強く出るわけですね。
さて、これを踏まえて、色々と今のWTOについて出てきている問題点を次回(次々回かも)指摘したいと思います。