前回は少し品のない内輪モノでしたので、今日は真面目に。
アフリカ開発会議では、これまでとちょっと違うなと思うことがあります。気のせいかもしれませんが、非常にインフラ物への支援を強く打ち出していることです。外務省のサイトを見ると、一見総花的に見えるのですが、今回はこれまでの3回に比して、道路等のインフラに非常に力点が置かれているように見えます。
意地の悪い見方をすれば、対中円借款が終わり、貸出先を探していたらアフリカがあったということかもしれません。資源高で返済能力のある国が増えたといった説明もされているようですが、それでは円借款は「資源で潤っている(おそらくは)独裁の国」ばかりになってしまいます。アフリカで資源が豊富な国は、えてしてその資源収入で独裁に近い国が多いですから、「資源高で返済能力のある国」ばかりを狙っていると非常に偏在が出てくると思います。
まあ、もう一つあるのは財界からの要請だろうと思います。資源の調達や成長するアフリカを視野に、産業面を強調するアプローチをようやく財界が求め始めたのではないかなと感じます。今回、国際協力銀行に基金を設け、2650億円の金融支援を行うことが決められたようですが、「ちょっと遅いよ、アンタ」という気になります。資源調達に困難を抱え始め、かつ成長するアフリカを見て動き出すようでは遅いのですね。このあたりは中国の先見性に比べて、明らかに遅れをとっています。
これまでの対アフリカ援助は、どちらかといえば基礎的な生活を送るために必要な案件(学校、水等)が主体でした。私もアフリカ在勤時には学校とか、井戸とか、そういう案件形成をしていました。それはそれで今後とも重要だと思います。ギニア・ウォーム、オンコセルカ症、住血吸虫・・・、まあ、日本ではちょっとお目にかからない病気は、水起源のものが多いですし、学校だってそれほど充実しているわけではありません。
ただ、インフラに目をつけるのは悪くないと思います。実はアフリカには資源もさることながら、それなりに良い商品作物があるのですね。ただ、それを上手く加工し輸出する能力がないので、いいように欧州の企業に良いとこ取りされているようなところがあります。私がよく出張したマリという国では綿花が相当に取れるのですが、結局は輸送能力とか加工技術の問題で利潤のかなりの部分は欧州系の企業にとられていました。
若い世代の方には想像もつかないでしょうが、道路が悪いというのは辛いのです。アフリカでは大半の道は舗装されていません。そういう状態ではすべての輸送が困難になってしまうのです。道路が整備されることによる限界効用はアフリカでは非常に高いのですね。そういうところに目をつけてみること自体は評価しうるものです。
ただ、幾つか問題があります。インフラ整備ものはえてして現在の政権への支援という形になることが多いです。軍用にも使えるから、なんてつまらないことは言いませんが、現政権の成果の誇示に繋がるケースが多いでしょう。それ自体は悪いわけではありませんが、あまりよろしくない政権に塩を送ることになりうることは少し心に留めておいていいように思います。後は社会インフラものでの円借款は、そのインフラ自体が利益を生むわけではありませんから、返済に窮することがあります。インフラが整備されることによる社会全体への利益は、恐らく道路建設料よりも高いと信じていますが、その利益は政府に入ってくるわけではないので、借款の返済時に「ゴメン、返せん」と泣きを入れてくることもありうるわけです。とある国で、30年前くらいに作った道路に日本が数十億円の円借款を出したのですが、道路は整備不良で朽ち果ててしまっていても、返済だけが滞り残っていくというのを目の当たりにしました。これは先方様の問題ではあるのですが、円借款にはそういうリスクはあるということです。
まあ、言っても仕様がないコメントばかりを付しましたが、ある程度は総花的になるのは会議の性質上仕方ないとしても、少し重点の置き方が変わってきているのかなと思えるサインが出ていることは評価していいように思います。総花的にアフリカの面倒を見ることなど日本にはできませんからね。