ここ10年くらい、ずーっと公務員の不祥事について色々と一定の盛り上がりを維持しています。私は過度に公務員叩きで溜飲を下げるような風潮は、やる気を失わせるだけだと思っています。ということで、備忘録的に自分のことを書いておきます。


 かつて外務省報償費問題(いわゆる「機密費」)が盛り上がりましたね。相当に叩かれました。支出の性質上、ブラックボックス化しており、かつては外務官僚が相当に無茶な使い方をしていたものです。10年くらい前に「報償費でお子様ランチ」みたいなことで、外務官僚が叩かれていました。


 当時、私は外務省で7年選手くらいでした。こういうことの記憶力は非常に良い方なので、「多分、正当な予算執行の観点からは適当ではないと思われる方法で支出された公費でメシを食ったこと」を自分の中で数えたことがありました。正直に言えば23回あったことを今でも覚えています。


 一番不思議だったのは「●●長主催の食事会」みたいなのでした。交際費か何か(いずれにしても税金)でアレンジしているのに、何故か「本日はありがとうございます」みたいな謝辞を言ったのですが、さすがに、出席した同期と「おまえの金でやっているんじゃないのに、なんでおまえに礼を言わないかんのだ。バカらしい。」とぼやいたことを思い出します。


 そもそもなのですが、そうやって公費で食べるメシというのは旨くないのです。特に高額なものを奢ってもらったケースでは(正確には奢る人のお金ではないのですが)、今でも嫌な思い出になっています。詳細は控えますが、私はかつてミシュランで星のついたレストランに公費で2回行ったことがあります。「払いますよ」と言ったのですが、「いいから、いいから」ということで押し切られました。本当に嫌な思い出としてしか残っていません。


 言い訳をすれば、役所に入った頃は毎日がバタバタしていてよく分からなかったのですね。最初の頃は「何処から出ているお金か」なんてことに気を回すほどのゆとりはありませんでした。おかしいなと思えるようになったのは外国に行って客観的に自分の来し方を振り返った時でした。外国で同期と少し呑みながら話をしていて、「やっぱりありゃ不当な使途だよな」と話した時、ようやく問題意識を持つようになったわけです。


 自我自賛と自己防衛になりますが、入省5年目くらいからはさすがに「?」と思い始め、公費での食事をする時は、天命に誓って「これは正当なものである」と思えるものに限定するようにしていました。それでもやむを得ず、結果として公費でのムダ飯になったことが数回ありました。組織全体がそういう慣行を止める意思を明確にしないと、個人でどんなに抵抗しても難しいものだと感じたものです。


 多分、私はそういう意味でムダ飯の回数が少ないほうだと自負しています。勿論「23回もムダ飯を食っておいて何だ!」とのお叱りは甘受いたします。なお、今ではそういうのは表向きはなくなっているはずです。今時の若い世代の官僚は、そういうタダ飯をありがたがらないですし。裏でやっているとすれば、古い慣行に慣れきった古い世代の方でしょう。