ミャンマーのサイクロン、中国四川省の大地震、天災が続きます。多くの命が失われていることに悲しみを覚えます。


 ところで、こういう時に「人道支援」というのがあります。今回も日本のみならず世界各国が両国に人道支援の用意があることを伝えています。ただ、これに対してミャンマー、中国は「支援してくれるなら何でも歓迎」とまでは言っていません。まあ、両国の事情は必ずしも同一ではないですが、特に人道支援の名の下に人を入れることには共通してお断りしています。


 私にはこの感情がよく分かります。簡単に言うと、人道支援というのは決して純粋無垢な世界ではないということです。国内の情勢不安な地域に外国人を入れたくないというだけじゃなく、人道支援の名の下で「現地の政情調査」でもやられてはたまらんという思いがあるはずです。「スパイ」が混じっていることを懸念するんですね。


 私が外務省にいた頃、とある途上国に詳しい人と話をしていて意見が一致していたことがありました。「政情不安の地域にいる国際機関の人間の中には、どう考えても自国政府の意向を受けてスパイをやっている人がいる。特にアメリカ。」。WFP(世界食料計画)、WHO(世界保健機関)、UNDP(国連開発計画)・・・、何でもいいのですが、そういうところにいる人の中には、時折、動きが怪しい人達がいます。アメリカ政府との関係が悪い国に対して、アメリカ政府職員としてではなく、(中立が装える)国際機関職員として行ってあれこれと裏調査をする、そういうことは珍しいことではありません。また、かつてインドはアメリカ版青年海外協力隊員(Peace Corps)を追い出しました。一部にスパイ疑惑が抜けなかったからです。


 まあ、そんなこんなで、人道支援で人を入れてしまえば、チベット自治区に近いところであれこれと都合の悪い情報を聞かれたりするかもしれませんし、ミャンマーでも政情の機微なところを悟られてしまうかもしれないと思えば、できれば外国人はどういう形態の支援であろうと入れたくないと思うことには理由がないわけではありません。


 日本も人道支援をする際には、それ以上の効果を出せるように人材を育成しておくと面白いですよね。自国の支援要員として出す際に、(勿論人道支援に尽力することは言うまでもありませんが)あれこれとこっそりリサーチする能力を身に付けてもらうとか、更には国際機関職員として出して、チベットとか北朝鮮とかのリサーチをしてもらい、日本政府にこっそりフィードバックしてもらうといった発想はあっていいと思います。