遺伝子組換えのコーンスターチが輸入されてくることになりそうです。理由はトウモロコシ価格の上昇と、それに伴うトウモロコシ市場の逼迫です。これまでは日本企業はコーンスターチについては非遺伝子組換えを貫いてきましたが、そうも言ってられないということでやむを得ず遺伝子組換えのコーンスターチ輸入に踏み切るようです。


 コーンスターチというとピンと来ないかもしれませんが、私達がよく接するのはビールに使われていたり、とろみのある中華料理のあんかけ、プリンの凝固剤みたいなものが想像しやすいですね。あとは異性化糖として、糖分の原料として使われることも多いです。


 さて、このコーンスターチが遺伝子組換えトウモロコシとなることで何が変わるかということですが、見た目の上ではあまり変化はありません。実はこれが問題なのです。今の日本の法制度上は、トウモロコシの遺伝子組成が残らないくらい加工したものについては表示の義務がないのです。したがって、異性化糖といったかたちで、遺伝子組換えトウモロコシで作った糖分については、それが遺伝子組換えトウモロコシで作った糖なのかどうかということは表示されないのです。逆にビールに使われる時は、まだ遺伝子組成が残るらしく、表示の義務があります。


 しかし、そんなオタクな表示義務の裏側など知っている人は稀です。何も書いてなければ「含まれていない」と思うのが普通でしょう。実はそうではないのですね。今、日本は非常に多くの遺伝子組換え作物を輸入しています。品目によっては6割くらいが遺伝子組換えだともいわれます。しかし、通常販売されている製品の中に「遺伝子組換えを含む」と書いてあるものは一つもありません。それで、一般の方は安心感を持つのでしょうが、実は上記にも書いたとおり、遺伝子組成が残らないくらい加工した製品については表示義務がないのです。だから、6割を遺伝子組換えで輸入しても、市場で買う段階では「含む」としている製品がゼロになるという歪な構図になるのです。つまり、遺伝子組換えという表示義務がある製品については、非遺伝子組換えの材料を使い、表示義務がない製品については遺伝子組換えの材料を使う、そういう慣行がかなり定着しています。


 私個人について言えば、私は「遺伝子組換えであろうがなかろうが、あまり気にしない」人間です。遺伝子組換えトウモロコシで作った製品でも殆ど気にしません。ただ、強い信念として「遺伝子組換え作物で作られたものは(組成が残ろうが残るまいが)嫌だ」という方の気持ちを尊重すべきだと思っています。多くのお母さんが「うちの子供にはきちんとしたものを食べさせたい。遺伝子組換えは嫌だ。」と思っておられます。そういう思いに対して、表示の厳格化というかたちで応えたい、それが私の信念です。


 今、遺伝子組換えで作っているのはトウモロコシ、大豆、ジャガイモ、ナタネ、アルファルファ等、結構な品目があります。もっと、政治は消費者に対して情報提供をしていくべきだと思っています。その端緒としての表示義務強化だと確信を持っていますがいかがでしょうか。