【以下は、以前書いた内容 とほぼ同じなのですが、昨今の情勢を踏まえ再褐します。】


 公務員制度改革で「キャリア制度の廃止」というのが上がってました。「キャリア」というと分かりにくいのですが、つまりは国家公務員一種試験に合格した人ということです。この「キャリア制度」、私もその中にいたのでよく分かります。簡単に整理すると、以下のような特徴があります。


① 幹部候補生として役所に入る。
② 昇進のスピードは、他の職種と比べて速い。
③ 形式上はほぼ同時に昇進する。
④ ただし、ポストの上では差を付けていく(そうやって競争を煽る)。
⑤ ポストが上がっていくにつれ、ポスト数が足らなくなるので外に出していく(天下り)。


 今、いろいろと議論されていますが、この中でダメなものは何なのでしょうか。私は①はどういう組織であってもある程度は存在していいと思います。あまり無理をして「キャリア制度廃止」みたいなことはしない方がいいでしょう。そもそも、それは現在抱える問題に対する解決になっていないのです。


 一番問題なのは、③なのではないかと思います(②と⑤は③に付随する。)。つまりは、20代前半の段階で幹部候補生で入ったら、そのまま自動的に(少なくとも形式的には)順調に昇進していくということが一番問題なのでしょう。これは分かりにくいかもしれませんが、私が「課長補佐」になる時は、私と同期入省は課長補佐になります。その後も大体似たようなプロセスを辿ります。私が見る限りでも、たしかに「こやつを同時昇進させるのはどうかな」と思うキャリア職員を結構知っています。そして、それに対する他の職員の冷たい視線も分かっています。


 ③を止めれば、そもそも④は必要性がなくなりますし、②、⑤のようなことも自然に修正されていくでしょう。つまりは「能力がないのに単にキャリア職員というだけで昇進していく」ことが止めばいいのだと私は思っています(ホンネでは「能力はあるけど、人格に問題がある人が昇進していくこと」も何らかの手を打つべきだと思いますが)。それが止めば、同時昇進制度の結果であるところの「天下り」も自然に是正するための道が見えてくるはずです。同時昇進だからこそ、上に行けば行くほど、最終的にポストが足らなくなって天下りをさせる必要が出るのです。


 では、「同時昇進」を止めさせるための最善の方策はと言えば、「公正な昇進システムを何処かで取り入れること」でしょう。もっと具体的に言えば「昇進試験」を設けることです。「課長補佐」にでもなる際に、公正な昇進試験をやればいいのです。通常の昇進システムの中で一定の地位に到達した人に、課長補佐昇進試験資格を認め、それに合格しないと職種が何であろうとも上には上がれない、これで良いわけです。そんなに難しいことではありません。


 勿論、「勤務評定」も勘案すべきでしょうし、試験内容にも配慮すべきでしょう。実施に移していくには色々な調整が必要になることは重々承知しています。ただ、原則論として、一度そういう区切りを入れればキャリア制度の弊害のかなりの部分は是正されるでしょう。なんで、そういう提言が上がってこずに、必ずしも問題解決にならない「キャリア制度廃止」みたいなものしか議論されてないのかなと不思議に感じてしまいます。


(余談ですが、キャリアには人格に難を抱える人が、世間一般に比して多いです。実は、上記のような問題点よりも「賢いかもしれないけど、あんなに人間的に問題のある人が昇進していくのがけしからん」という声の方が大きいような気がします。ただ、こればかりはなかなか制度論では対応しにくいんですよね。)