チベットで暴動が起こっています。4年くらい前に行ったことがある身としては、テレビで映る暴動の各場面がリアリティーを持って甦ってきます(旅行記その1
、その2
)。青蔵鉄道ができて、チベットの首都ラサまでの鉄道網が整備され、どんどん中国化が進んでいくことに対する焦燥感なんかも背景にあるのかなと思います。
ところで、この暴動に対する各国のコメントを見ていると、ちょっとした違いに気付きました。色々な比較方法があると思いますが、今回は「誰が抑制すべきなのか」という一点に絞ってみてみました。本来でしたら、私の方で邦訳するのが良いのでしょうが腰痛が辛いのでそのまま載せます。
<コメント>全体として中国に厳しいですね。「最初は平和的抵抗だったのに人命が失われてしまう事態になった」みたいなコメントは、中国政府への批判とも受け止められます。そして、ラサで軍のプレゼンスが高まっていることを懸念した上で、まず、中国政府に対して抑制を求めています。最後に暴力は控えましょうねと、すべての関係者に求めています。全体として、中国に対して厳しい姿勢を貫き、抑制するのはまず中国政府というトーンです。
<コメント>完全に中立です。ある意味、何の中身もありません。単に「みんな抑制しようね。そして対話しようね。」、これだけです。イギリスらしいと言えばイギリスらしいです。
【フランス・クシュネール外相インタビュー】La Présidence slovène nous a proposé un texte que nous avons accepté. Ce sont trois paragraphes qui demandent de la retenue, qui demandent que les personnes arrêtées manifestant pour le Tibet soient relâchées. On a demandé de la retenue aux autorités chinoises et nous avons demandé très clairement que le respect des droits de l’homme soit assuré.
<コメント>EU議長国のスロベニアが提示した声明案を受け入れたことを解説するかたちで間接的にコメントするだけです。ただ、声明案では「中国政府に抑制を求めた」と言っています。EU議長国のルペル・スロベニア外相からまだ最終的な声明が出てないようですので確認できませんが、まあ、フランスもこのEUの声明案の考え方に同意していると見ていいのではないかと思います。
<コメント>まあ、少し中国寄りに読めなくもないですが全体として中立です。インドはダライラマ14世を抱えていて、中国との関係改善を進めていることもありますので、突出した立場は避けてますね。
【日本・外務省局長による対中メッセージ】
「死傷者が出ている情勢を懸念している。関係者が冷静に対応し、事態が早期、平和裏に沈静化することを強く期待する」
<コメント>これも特に中身はないですね。日本外務省は多分、チベットそのものには大した関心はないと思います。私が居たころから関心はなさそうでした。多分、胡錦濤訪日時に作成する文書において、(1)チベット情勢で中国政府を支持するような文言を求められること、(2)更には、この件のため台湾問題で硬化した中国政府から、台湾問題で現状より踏み込んだ文言を求められること、この2件だけが頭にあるはずです。
アメリカが中国に明確に抑制を求めていること、フランスやEUが中国に対する抑制のトーンを強めていることは、ちょっと驚きではありました。バスクを抱えるスペインや、ロシアがどういう声明を出しているかも探ってみたのですが、語学力のなさからよく突き止められませんでした。
日本にとっては、この件はあまり歴史的な制約もないわけですし、単なる台湾問題との関連のみから捉えるのではなく、広がりを持って考えてみてもいいと思わなくもありません。