先日、救急車が通っていた際、パッと見たら「石油貯蔵施設立地対策等交付金」みたいな文字がチラッと見えました。「何のことかな」と思って調べてみました。


 我が街北九州市には白島石油備蓄基地というのがあります。市の北部にある小さな島なので、市民の大半はあまりご縁がありません。私も名前だけでしか知りません。これは非常に大きなプロジェクトでして、日本が必要とする石油備蓄の中で大きな役割を果たしています。


 この基地を作る際に地元に「迷惑料」的なかたちでお金を流したのがこの交付金なんだろうと思いました。今、米軍基地再編でも似たようなアプローチで、基地受入地域では色々なメニューが用意されています。沖縄北部でもそうですし、岩国市でも基本的には構図は同じでしょう。


 その交付金を使って、北九州市は救急車を整備した、まあ、それだけのことです。「市街地から遠く離れた場所に石油備蓄基地を作らせてお金を呼び込む」、前の末吉市長らしいやり方です。市民からすると「白島が何かはよく知らないし、日々の生活とも全く関わりがないけど、国からお金がやってきた」、それが普通の受け止め方だろうなと思います。前市長はこうやって筋の良いお金を呼び込むことが得意な方でした。「石油備蓄基地」と「救急車」の繋がりのなさに違和感を持つかどうかは、各人によって違うでしょう。


 なお、この件を北九州市のサイトで調べようと努力してみましたが、全然何処にもデータが出てこないのですね。たしかにこういうお金を上手く組み合わせて事業を進める末吉前市長のスタイルは「職人芸」的なところがあるので、おいそれとノウハウを公開できないということなのかもしれませんが、それにしても情報公開があまりに進んでいないことには不満を感じました。


 あと、「へー」と思ったのは、近隣の市町村にもこの交付金が出ていることです。直方市、中間市、芦屋町、苅田町といった市町村のサイトにはこの交付金が出ています(そういう意味で情報公開が進んでいます。)。たしかに九州経済産業局のサイト を見てみると白島のような新設の基地については、当該自治体:近隣の市町村:県=4:4:2とかなりの交付金が出ているようです。これはさすがに「?」という印象を持ちました。たしかに岡山の倉敷みたいに居住地域から相対的に近いところに基地があるなら近隣にもある程度ご迷惑がかかるということで、交付対象にすることは分からなくはありませんが、北九州市の白島みたいな、市の居住地域自体から隔絶された場所に建設する石油備蓄基地の迷惑料が遥か遠く離れた市町村にまで行き渡るとなると「やりすぎじゃないか」という気がします(なお、私は交付対象となった市町村を批判する意図は全くありません。単に制度設計として「やりすぎ」感があると思っているだけです。)。


 ちなみに(正確ではないかもしれませんが)基地関連の交付金は、公開文書を読む限りは近隣の市町村にまでは及ばないようです。


 1台の救急車を見ながらそんなことを考えました。ちなみに、この白島の石油備蓄基地を作る際には、当時の閣僚クラスに色々な不透明なお金が流れたり、地元では発砲事件が起こったりと、まあ何かとお騒がせなことが起こりました。いまだに資源エネルギー庁の古株の方達には嫌な思い出として残っているという話を聞いたことがあります。