何度か書きましたが、私はマラリアに罹患したことがあります。アフリカ在住時に蚊に刺されて、体内に卵(だと思いますが)を産み付けられてしまったわけです。かなりの高熱でうんうんうなされました。太い筋肉注射を打ってすぐに治りましたが、なかなか辛い経験でした。私は早期発見で済みましたが、遅れると激性肝炎になって命にかかわります。青年海外協力隊員はたしか3回マラリアに罹ると強制帰国になっていました。


 これを地元で話すと「話すのは止めておいたほうがいい」というご指摘を頂きます。多分、伝染すると思われるからということだと思います。これは蚊に刺されない限り罹らない病気ですので、この場でも一応御理解を頂くようお願いしておきます。私に触れても、私がくしゃみをしても、全くマラリアとは関係がありません。


 そんな中、先日高齢の方から「そうか、君もマラリアに罹ったのか。うちの兄も太平洋戦争で南方戦線に行った際、マラリアに罹ってな。非常に苦しんでいた。それ以来、聞くことのなかった病名だけど君の話で兄のことを思い出した。」とのことでした。たしかに太平洋戦争中、南方では相当な日本兵の方がマラリアに苦しんだことが推察されます。当時は治療薬も十分ではなかったでしょうから、命を落とした方も居られたのではなかろうかと思います。今でも北回帰線くらいから南に行けば、まだ普通に存在する病でしょう。


 このマラリア、(医学的なことは分かりませんが)治療薬はあっても予防薬がないということだそうです。キニーネなんてのもありますが、あれはたしか罹った時に高熱にならなくなるだけだったと記憶しています。しかも、肝臓に負担がかかって身体的にきついそうです。私はこの手の薬にはお世話にはなりませんでした。予防薬を見つけたらノーベル医学賞でしょう。今でもアフリカ、アジア等ではマラリアで亡くなっていく方がたくさんおられます。是非、医学の発展を望むばかりです。


 ただ、現代社会では地球温暖化でどんどんこの手の病の北限が上がっていっています。この調子だと沖縄でマラリアが発見されるのはそう遠くないのではないかと懸念してしまいます。まだ、日本では熱帯病に対応する体制が十分ではないため、マラリアで高熱が出ても病院では風邪薬を渡されるケースが多いようです。輸入木材等、いくらでもマラリアが日本に入ってくるきっかけはあるでしょう。


 今、世界ではかつて存在しなかったような熱病が突如流行ることがあります。デング熱、エボラ出血熱(これはヒドいらしい)、最近では昨年チクングニヤという名前の熱病がマダガスカルやレユニオン島(マダガスカルから東に行ったところにある仏領の島)で流行り、欧州でも少し発見がありました。こういう熱病は元々宿主が何だったのかもよく分かりません。一つ確実なのは、新しい熱帯病というのは人間が開発行為を行うことで付随的に出遭ったものということです。


 人類が森林を切り開き、そしてこれまで出会わなかった、人類が免疫のない病と出会う。そして、それがグローバル化の中で世界中に広がる可能性がある、陳腐ではありますがそういうことです。


 少し話が飛びますが、船舶の世界ではバラスト水規制というのが本格的になってきています。これは空の船が重量を増すために海水をタンクに取り込む海水のことを指します。その際に色々な生物や植生までをも海水と共に取り込み、到着地でその海水を海に戻すと、到着地の生態系や植生を壊してしまうことになるということですね。まあ、セイタカアワダチソウやブラックバスが日本の生態系を駆逐したことの海洋版です。今後、このバラスト水の排出を規制していかないとこれこそグローバル化の流れで世界の貴重な生態系が壊れていくことになります。


 グローバル化の闇の部分と言っていいのかどうかは分かりませんが、何でもグローバル化してしまうと世界は壊れてしまう、そういう好例だと思います。