ちょっと先の話ですが、6月に洞爺湖サミットがあるのと同じ時期(5月末)に第4回アフリカ開発会議というのが行われます。一応、5年に1回やっている会議で最初の時は細川首相がホストでした。冷戦が終わり、アフリカへの関心が下がり始めた時期にこういうイニシァティブをやったこと自体は評価して良いのだと思います。


 この第4回アフリカ開発会議、私なりにポイントを纏めてみました。多分、そんなに間違っていないと思います。


● リビアのカダフィ(カッザーフィー)は来るか?
 これは一般の方には「?」でしょうが、非常に大きなポイントです。金銭面で貧しいアフリカのパトロンをやっていたりして、一部のアフリカの国はカダフィの言うことなら何でも聞きます。しかも、カダフィは(最近はそうでもないですが)United States of Africaとでも言えるアフリカの連帯を強く打ち出して、今のアフリカを牽引してきたようなところがあります。彼が呼べるかどうかは大きいですね。
 実はそれよりもカダフィが来ると別の意味で盛り上がります。彼はちょっと変わっているので、かつては何処に外遊しても、巨大なテントを立てて、アマゾネスのようなカダフィの取り巻き女性が居て、そこに滞在するというのが常でした。最近はホテルに泊まったりもしているようですが、東京の日比谷公園あたりにバカでかいテント建てないかなぁ、と個人的には興味は尽きません。


● ジンバブエのムガベ大統領の扱い
 ジンバブエのムガベ大統領、イギリスと激しく喧嘩しています。簡単に言うと、ジンバブエにいた白系ジンバブエ人(英国との二重国籍が多い)を強権的に追い出したことに端を発しています。先日、ポルトガルのリスボンで行われたEUアフリカサミットでは、事前にイギリスのブラウン首相は「ムガベが来るならボイコット」と主張し、実際にムガベは来たのでブラウン首相はボイコットしました。ドイツのメルケル首相も会議の場でムガベ批判をしましたが、セネガルのワッド大統領や南アフリカのムベキ大統領はムガベを防御していました。以前も書きましたが、アフリカにおける土地問題というのは現地の人の琴線に響くのですね。このムガベを呼ぶことに対しては、イギリスから「国際的な認知を与えるので控えてほしい」と働きかけがあるはずです。さて、それに日本政府はどう対応するか、面白いですね。


● その他、出席関係
* 私ならまず、ガボンのボンゴ大統領の出席を確保するようにします。理由は単純です。一番大統領歴が長いからです。長老政治が息づくアフリカでは、(どんなに悪いヤツでも)尊重されます。ボンゴは大統領就任が1967年です(タイプミスではありません)。まあ、彼が「アフリカ開発会議、大事にしような」と言えば「そうかな」と思う元首クラスは多いでしょう。
* エジプト(ムバラク)、チュニジア(ベン・アリ)、モロッコ(モハメド6世)のアラブ諸国からは元首(大統領)の出席が期待しにくいですね。それは単にあまりアフリカという意識がないということです。よく外務省時代に「エジプトはアフリカか、アラブか、中東か?いや、そのどれでもない。エジプトはエジプトなのである。」なんて話をしていました。これはつまり「エジプトはその時々に応じて、アラブ、アフリカ、中東といったカテゴリーを使い分けて、色々な顔をするが、その実、どれも利用してるだけで、何処にも属さない『エジプト』というカテゴリーなのである。」ということです。
* スーダンのエル・バシール大統領もなかなか扱いが難しいです。ダルフール問題の張本人ですから。


● とどのところ・・・
 会議の成否は「どれくらい首脳級が来るか?」、これに尽きるのです。「単に出席だけで判断して良いの?」と思うかもしれませんが、これが真実です。そこで意識しなくてはならないのは中国です。中国が数年前に中国・アフリカサミット(と呼んだかどうかは記憶が定かでありませんが)をやった際は、ほぼすべてのアフリカの国が大統領か、首相を出しました。今回のEUアフリカサミットも同様でしょう。日本が第3回アフリカ開発会議をやった際、首脳級は23ヶ国、かなり差をつけられています。誰を出すかというのは、どれくらい重視しているかと同義です。今回はアフリカの全在外公館のすべてのエネルギーを傾注して、日本の威信にかけて40ヶ国越えを目指してほしいですね。多分、中国が呼ぶ時はかなりの費用負担をしていると思います。日本がこの会議をある程度成功し、中国にも見劣りしない成果に導きたいのであれば、そういうことも考えたほうが良いのかもしれません。ともかく、この会議は最後に写す日本の総理を中心とした記念写真、これがすべてです。ここに誰が入るか、この一点に賭けていいはずです。


● そういう中にも・・・
 アフリカの国の中でエース級の大統領には目を付けて、厚遇しておくことが必要です。以前も書きましたが、私はタンザニアのキクウェテ大統領とマリのトゥーレ大統領はこっそりと厚遇しておくほうが良かろうと思います。あとは恐らく唯一の女性出席者であろうと思われるリベリアのサーリーフ大統領ですかね。
 ちなみに、アフリカには王様が2人居ます。かつて、皇帝を名乗った中央アフリカのボカサなんてのがいましたが、これらの王様は正真正銘の王国の主人です。スワジランドのムスワッティ3世とレソトのレツィエ3世です。一応、儀礼上は一番上に来ます。


● 中身としては・・・
 あまり出席者の話ばかり書くと、中身を聞かれるので最後に少しだけ。恐らく、最大の議題は「貿易」です。ここで大胆なイニシァティブが出せるかどうか、これは総理官邸の強いリーダーシップなしには実現しません。ここでアフリカにとって実のあるものが出せるなら、出席者は自ずとレベルが上がるでしょう。無税輸入、輸入特別枠の設定あたりなんでしょうね、きっと。ただ、アフリカと一言で言っても豊かな南アフリカから後発開発途上国まで千差万別ですから、アフリカ全体に対して何か優遇措置を取ろうとすると事務的にはなかなか難しいです。特に農林水産省は徹底して嫌がるでしょう。

 まあ、そんな疑問を呈すると、そもそも「アフリカ(大陸を一つのものとして捉えて)開発(を議論する)会議」というコンセプト自体が突き崩されそうになりますが、私はアフリカ開発会議自体はとてもいいことだと思っています。
 一つ確実に言えるのは、会議の成果をODAのオンパレードにしてアフリカの歓心を買うことは止めたほうがいいということです。もう、そういう時代ではないでしょう。そもそも、もうそんなことでは歓心は買えません。


 ということで、長々と書きました。洞爺湖サミットは衆議院解散との関係で語られることが多いです。とどのところ、「G8首脳に囲まれて写る写真」を引っさげて解散したいということでしょう。何を議論するかよりも、結局「記念写真」が目的なんだろうな、と最近の議論を聞いて思います(勿論、環境問題等重要課題山積なのは知っていますが世論ウケとして)。このアフリカ開発会議も似たようなところがあるのかもしれません。