先日、歯科医師の方と話していた時のことです。非常に興味深い話を聞きました。「緒方さん、日本全国にあるコンビニの数は41000です。開業している歯科医がどれくらいいるか知っていますか。」。正直なところ、私には想像も付きませんでしたが、なんと63000あるそうです。


 その話を聞かされて以来、街中にある歯科医の数がとても気になるようになりました。気にしてみるようになると、たしかに多いですね。私が住んでいる半径500メートルだけでも7~8の歯科があるように思います。福岡県だけで3000の歯科があるそうです。よく考えてみるとこの県内だけで九州大学歯学部、福岡歯科大学、九州歯科大学と3つも大学があります。まあ、それだけ歯学部、歯科大があれば輩出される歯科医の数も増えるのは当然です。


 かなりの過当競争がある一方で、診療報酬の点数は下がってきています。「歯の神経の治療なんて、結構厄介な割には点数低いんですよ。」と言われました。おのずと保険外の診療の割合が高まってきます。たしかに最近見ていると「インプラント」という言葉が非常に流行っています。あれは保険外ですが、「インプラント」という言葉がこれだけ日常的に使われるようになるというのは、勿論審美的な意味での歯に関心が高まっていることもあるのでしょう。ただ、そういう保険外の治療に積極的に乗り出していかないと経営が成り立たないということも大きな要因のようです(スイマセン、他人事のような書き方で。)。「数年前までは総収入の5%くらいが保険外だったが、今は2割だ。」と言われると、歯科業界を取り巻く環境が大きく変わりつつあるんだなということが分かります。


 私自身、ちょっとポジションを決めかねていることの一つに「混合診療」というのがあります。色んな方の話を聞き、書物も読んでみたのですが、一方で「混合診療を解禁しないと、新しい医療技術の導入も起きてこないし、そもそも経営面でも苦しくなる。そもそも現場では事実上解禁に近いことが起こっている。」という意見があり、他方では「混合診療を解禁すると国民皆保険制度の良さが失われ、お金のない人が後回しになる。」という意見も聞きます。もっと進んで「混合診療解禁は高い医療技術を売りつけたいアメリカの陰謀だ。」くらいのことを言う人までいます。私は現場感がどうしても欠けるので、どっちの意見を聞いても「なるほどなぁ、一理ある」と素直に納得してしまいます。これについては、もっと勉強していきたいと思っています。


 いずれにしても、コンビニより歯科の数が多いという現状は長期的には維持不可能ではないかと直感的に思います。いずれ統廃合の動きが出てくるのではないでしょうか。少しずつ大学教育のレベルから修正していかないと、最終的には変なこと(例えば、共倒れ的な事態)になるんじゃないかと問題意識を持ちました。