新聞でも報じられていましたが、科学誌の「サイエンス」にバイオエタノールが温室ガス削減に貢献する程度は非常に限定的という論文が載っていました。そもそもバイオエタノール自体が大した削減効果がなく、植林をするほうが遥かに効果が高く、ましてや森林を潰してトウモロコシやサトウキビを作るに至っては収支ではマイナスになる、だから幻想を抱かずに植林をしよう、まあこんな感じのことです。


 私もそう思います。バイオエタノールに幻想を抱くのは間違いだと思いますね。油価が高くなると通常の時では絶対に採算の合わない油田開発をやったり、非石油資源の開発に努めたりするようになります。それ自体は技術革新を促進する効果もあるでしょうし、資源開発能力の向上にもなるでしょうから一概に否定すべきものではありません。ただ、バイオエタノールについてはサイエンス誌が言うように効果が高々知れているような気がしますし、ましてや食料価格の高騰に跳ね返ってきたりするのも如何なものかと思います。アメリカでは大豆生産をトウモロコシ生産に切り替えたりしているそうです。ここでの経済的な論理では、大豆は何と競争しなきゃいけないかというと農作物としてのトウモロコシではなくて、エタノール原料としてのトウモロコシです。油価が上がっている時はトウモロコシを作ってエタノールに転換したほうが大豆を作るよりも儲かるということです。そうやって大豆が品薄になり価格が上がる、これが環境・経済・社会全体としてベストの選択ではないように思えてなりません。


 私は「エコロジー」を訴える方に是非森林が失われていく現場を知ってほしいと思います。焼畑農業のケースもあるでしょうし、もっと広義の砂漠化のケースもあるでしょう。私は幸運にも(不幸にも)アフリカ在住時に砂漠化が進むのを目の当たりにしてきました。砂がどんどん町に迫ってくるのはある意味恐怖感すら覚えます。時に「エコロジー」とか「地球温暖化対策」とか「チーム・マイナス6」というと美しい世界のように見えます。現実は砂漠化で家が住めなくなる、海面上昇で生活のみならず命まで脅かされる、そういうことなのです。バイオエタノールのように、社会全体としてあまり汗をかかない選択肢でどうにかできるとはとても思えません。


 地球温暖化の解決策は多分地道に汗をかくようなもの以外にはありえません。エネルギー消費を減らし、植林をして温室ガスを吸収させる、それだけです。バイオエタノールを魔法の杖のように信じる傾向には是非歯止めを掛けるべきです。どうしても推進するのであれば、それが必ず温室ガス削減に幾ばくかでも貢献することが証明されるものに限定すべきです(つまり、森林を潰して栽培したサトウキビから作ったエタノールは使わないといった感じのルールを決める。)。