とある農業関係者と話していた時、「緒方さん、食料自給率が最も低い食品って何だと思います?」と質問されました。ちょっと悩んでいたら、その方が「私はピザだと思うんですよね。生地の小麦粉、チーズ、オリーブ・・・、大半が輸入品じゃないですかね。」と言われました。詳細に調べたわけではないのですが、「さもありなん」という気がします。


 今、日本の食料自給率はカロリーベースで40%程度と言われています。上げようと努力していますがなかなか上がりません。農林水産省のサイトを見ていると、仮に一日必要なカロリーをすべて国産品で摂取しようとするとどういう食生活になるのかというリストを見つけました。なかなか見ていて示唆的なので是非見てください(ココ )。肉を食べることなど殆どままならず、米と芋と卵とちょっとした野菜くらいが何とか手に届くくらいですね。戦後間もない頃の食生活に戻るということでしょう。今度、時間があったら話のタネにこれを実践してみようと思ったりします。


 今は中国やオーストラリアやアメリカから食べ物を大量に買っています。ただ、中国から輸入できるのがいつまで続くのかは分かりません。むしろ、中国とは買い争いをしていく相手になるのではないでしょうか。そういう中、オーストラリアは最近立て続けに旱魃が起きています。アメリカでも天候の異変が増えています。生産量が減った時、これらの国は日本に優先的に食料を流してくれる保証などありません。最後の最後は勿論自国への供給が大切ですし、そうでなくても高い価格を提示してくれる人に売るのが資本主義の世界です。


 小泉総理にしても安倍総理にしてもあまりこういうことへの関心は低いです。しかしながら、これから中国が世界中で食料を買い付けるようになってくる中、国策として食料自給率を上げることを考えていい時期でしょう。まずは日本人がもっと米を食べれば自給率は10%くらい上がるような気もします。かつて日本人は年150キロ近く米を食べていましたが、今は90キロを切っているそうです。もったいないことです。私はすべての食料品を自給すべきと言うつもりは毛頭ありませんが、30年後、50年後の世界はどうなっているか分からない中、天下国家の大計としてある程度は自分で食える国でないといけないと思います。


 私は比較的粗食でも生きていけるのですが、私よりも若い世代の人になると上記の「国産品だけで必要なカロリーを摂取する場合の食生活」に耐え得るかなと不安になります。牛丼も、ピザも、寿司も食べられない世界に我慢できない人はたくさんいるでしょう。食料自給率向上の鍵は、変化してしまった日本人の食生活なんでしょうね。肉食主体の生活になり、ライフスタイルが欧米の食生活に似通ってきて、伝統的に日本で生産していない農産物を嗜好するようになっています。こればかりは、個人の自由な選択ですので「良い」とか「悪い」とかいうものではなく、また現時点では強制できるものでもありません。だからこそ、自給率向上が難しいのですね。