【以下は1年余前の参議院選挙が終わった直後に書いたものです。ちょっと時期的にどうかな?と思わなくもないですが、時間もないのであえて載せておきます。】


 今回、参議院で与野党が逆転したことで色々な影響が出ることを以前書きましたが、私はこれを機会に「参議院改革」を進めてはどうかと思っています。与野党が逆転したことの成果として、目に見えるものが出てきた方が良いように思うのです。


 今の参議院に向けられている批判は「衆議院のカーボンコピー」というものです。衆議院で可決したものを参議院で否決するようなケースは本当に稀です。私は衆参両方の議論をよく見ていましたが、あまり質問の内容に差があるようには思えませんでした。参議院は「良識の府」と良く言われますが、質問のレベルが参議院の方が高いとか、長期的視野に基づいているとかいうことがあったかというとちょっと疑問です。そうなってくると、後は権限の面で「予算は衆議院先議」とか、「法律が参議院で否決されるか、60日以内に採決されないかの場合は衆議院で2/3で可決すればいい」、「憲法改正、国勢調査権、国会同意人事などでは権限は同じ」といった話になります。それでは議論も似通ってしまいます。折角、選挙の仕方も違うし、任期も違うのに、やっていることが基本的に同じというのはもったいないような気がしてなりません。


 ところで、私は衆議院でも参議院でも「1票の格差」を問題にする議論が嫌いです。厳密に1票の格差を両院で実現しようとすると、その先にはやっぱり「カーボンコピー」があると思うわけです。同じベースで同じくらいの比率で割り振られた議席に基づいて選出されてくれば、やはり発想も似通ってくるでしょう。そうではなくて、完全に考え方を変えて、アメリカやフランスのように「上院は領土(や州)と利益団体を代表するのである」というふうにして考えるのが良いように思います。このあたりは過去に書きました のであまり繰り返しません(が是非読んで御批判いただけると幸甚です。)。今、江田新議長は、1票の格差対策として「複数県の選挙区統合」みたいな話をしていますが、そういう一時の取り繕いでは参議院の抱える問題は解決し得ないでしょう。


 ちなみに、世界のスタンダードでは二院制の議院内閣制の下でこんなに上院が強い国は稀です。多分、日本だけでしょう。だからこそ、今のように参議院で負けたことをもって政権が揺さぶられるようなことも起こりうるわけです。私は別に参議院の権限を弱体化させる意図は毛頭ありませんが、衆参両院の権限をちょっと整理することによって「衆議院のカーボンコピー」などという恐らく誰のためにもならない批判を避け、より機能的な参議院を実現できるような気がするのです。


 まず、国会のあり方、役割分担から考えてはどうかと思います。一番良いのは「衆議院は政策を打ち出す機関、参議院は政策をチェックする機関」という仕分けだろうと思います。これまでも似たような提案はあったのですが、あまり実際には結実していません。衆議院はどうしても解散があり、恒常的に選挙を意識せざるを得ず、かつ選挙が政権選択になりますから政策メニューを提供して国民の信を問う志向性が内在されていると思います。逆に参議院は解散なしで6年間やりますし、腰を据えて行政のあり方を厳しく質し(正し)ながら、中長期的な国のあり方を問う場として位置付けてみてはどうかと思うのです。その時に考えられる役割は、打ち出していくというよりも、むしろチェック機能を働かせるような方向でしょう。


 まずは選挙の方式と権限で差異化を図っていくことは意味ある改革ではないかと思います。そして私は「チェック機能の強化」ということで一番最初に思いつくのは「決算」と「人事」です。このテーマはそれぞれがある程度思い入れがあるので、また次回以降に書きます。