昨日までフジテレビで「はだしのゲン」のドラマ2話連続でやっていました。中井貴一も石田ゆり子も良い演技をしていたと思います。子役の少年も良い演技をしていました。ドラマ自体の出来は悪くなかったと思います。


 しかし、私は思いました、「この話は実写でのドラマ化はしてはならないのではないか」と。あまりにリアリティが伝わらないのですね。子供の頃「はだしのゲン」を読んで受けたあの衝撃と恐怖感、広島を訪れた際に平和記念資料館で目の当たりにした原爆の壮絶さを示す多くの品を見た時の印象に比すると、ドラマの中で繰り広げられるのはあまりに美化された姿のように見えました。


 原爆の悲惨さを伝えたいというドラマ制作者の方々の気持ちはよく分かりますし、テレビを見て気持ち自体は伝わりました。しかし、実際に起こったことは、先日のドラマで繰り広げられるようなそんなにやわな世界ではなかったはずです。もっと言うと、あれを見て、多くの人が「原爆というのはこういうものだったのか」と思うようになっていいのか、私は甚だ疑問でした。

 私たちには常に原爆の悲惨さをきちんと知り、それを後世に伝えていく義務があります。勿論、私たちの世代は実際に体験したわけではないので、すべてを正確に伝えることができるわけではありません。ただ、その伝える手段の中で「実写版ドラマ」というのは適切でないように感じた次第です。


 「私達は道徳的に、そして歴史の検証として、ドラマというかたちで原爆のことを伝えていくことができるだろうか」、そう真剣に考えました。この点は議論があるところだと思います。異論、反論大歓迎です。