以前の私のブログに以下のようなコメント がありました。どれもこれも「なるほど」と思うもの(一部は私の誤り)でしたので、少し敷衍していきたいと思います。なお、その他すべてのコメントに対してお返事したいのですが時間が限られるため難しい点をご理解ください。


【頂いたコメント】
1)統一朝鮮が誕生したら、日韓基本条約はどうなるのでしょうか?破棄されるのか、あるいは、おそらく旧韓国が主導するであろう統一朝鮮が後継国家として引き継ぐのでしょうか?
2)日韓基本条約において、すでに北の分のお祝い金も、韓国政府が朝鮮半島唯一の合法政府であるとの韓国の主張のもとに、日本は韓国に渡していたように思います。統一朝鮮にまたさらに、お祝い金を渡すような交渉は、筋が通らないのではないでしょうか?
3)相手が統一朝鮮ではなく北朝鮮の場合の話です。定義の話なのですが、日朝は国交はありませんが、交戦したわけではありません。「平和」条約というのは変なのではないでしょうか?あるいは、米国に基地を提供したことは、交戦国とされるのに十分なのでしょうか?


● 1)について
 日韓基本条約の扱いについては統一の形態によると思います。統一まで日朝で国交正常化があるのか、ないのかということも考えなくてはなりません。私は「多分ない」という前提で考えています。
 韓国が北朝鮮を吸収するかたちで統一するのであれば、日韓基本条約はそのままという扱いになり、北朝鮮にも自動的に日韓基本条約が適用されるということで処理することもできるでしょう。ただ、対等での統一ということになれば、新たな条約を作り、その条約が北朝鮮部分との基本条約も兼ねるというストーリーになりそうな気がします。
 ただ、新しい条約を韓国も交えたかたちで作るのは相当に厄介になるでしょう。なかばパンドラの箱を開けた状態になって、日韓基本条約で纏めた内容の改変を南北朝鮮で主張してくることすら考えられます。日韓基本条約では幾つか歴史認識に触れるところがあります(例えば、韓国併合についての認識や韓国の独立時期についての認識)。今の韓国国内には、その認識は韓国がまだ劣勢にある時に押し付けられたものであって覆したいという感情があります。日韓基本条約の内容はいつまでも朝鮮半島における韓国部分には適用されていくことを厳に確保していくべきでしょう。その中で韓国との横並びで絶対に北朝鮮にも同じ条項を適用しなくてはならないところは必ずそれを確保していくということですかね。それはとても大変ですけど。


● 2)について
 ただ、それは北朝鮮への援助がなくてもいいということではありません。これはちょっと歴史的に経緯が変化しています。
 日韓基本条約では、韓国政府は国連決議で示されているとおりの朝鮮半島唯一の合法政府だとなっています。当時、北朝鮮と対峙していた韓国は「韓国が朝鮮半島唯一の合法政府」との前提から「日韓基本条約で日本と朝鮮半島の関係はすべて正常化された」と主張してました。その当時の韓国の主張から言えば、日朝国交正常化交渉をやっていること自体が変なのです。ただ、当時から日本は「日韓基本条約は日本と朝鮮半島南半分との条約であって、北半分については一切触れていない。日韓基本条約では北半分はいわば空白としてある。」という立場でした。これは国会答弁でも表明しています。
 まあ、その後の経緯もあり、今、韓国政府が「うちだけ合法政府だから、日朝国交正常化交渉は必要ない」なんてことは言いません。韓国政府内では統一した際のシナリオとして、「できるだけ北朝鮮との国交正常化を韓国としても上手く活用しながら、朝鮮半島全体(南部分も含む)に日本からお金を出させよう」なんていうことを考えていても驚きではありません。
 先のブログにも書きましたが、私は日朝国交正常化交渉は金王朝が続く限りにおいて最終妥結は難しいと思っています。統一する過程でどう転ぶかはその時の状況次第ですが、統一後は日朝国交正常化交渉は統一朝鮮との交渉に変化します。統一朝鮮はあまりに南北の格差が大きくて経済的に上手く行きません。相当に困難を極めるでしょう。その時の国全体のナショナリズムの方向は「日本が悪い」というふうに日本に不満の捌け口を求めるでしょう。その時には、統一朝鮮へのお祝い金というかたちで、対北朝鮮国交正常化以上の援助を南北朝鮮全体で求めてくるような気もします。


● 3)について
 おっしゃりとおりです。私の間違いです。
 余談になるのですが、韓国や北朝鮮は「自分達は第二次世界大戦で抗日で戦ったのだから『平和』条約という呼び名は正しい。」と主張すると思います。ここも実は歴史認識なんですよね。迂闊でした。


 まあ、なかなか難しい問題ばかりです。よく勉強したいと思います。