北九州に特有とまでは言えませんが、この地方によくある方言というのがあります。幾つか紹介します。


● モノを机に「なおす」
 これが一番、東京で堪えました。ちなみに「机の中にモノをしまう」ことを意味します。
私は大学一年時に塾の先生をやっていたのですが、テストの時間になると「はーい、皆、机のものを全部机の中に『なおして』」と言うと、生徒が「はぁ???」という顔をするのです。「先生、何を修理するんですか?」と真顔で聞かれました。ともかく、この「なおす」だけは標準語だと思っていただけに通じなかったときのショックが一番大きかったです。


● はわく
 「掃く(sweep)」のことです。これは今でも修正できない数少ない方言です。私は今でも「掃く」と「吐く(vomit)」がどうしても同じ音に聞こえて仕様がないのです。どうしても「はわく」と言いたくなる気持ちを抑えることが出来ません。


 その他、全く通じなかったものとして代表的なものとしては以下のようなものがあります。
- 腹をかく(腹を立てる)
- お金をこまめる(お金をくずす)
- 穴をほがす(穴をあける(比較的鈍器であける感じ))


 まあ、その他にも現在進行形の助動詞「よる」(●●しよる)とか、伝聞を意味する助詞(又は接続詞)の「ち」(●●しようっち)など多々東京で通じずに苦労したことがありました。大学に入学した当時、私は相当に訛っていたみたいで、鹿児島県出身の同級生から「君訛っているよ」と言われた時には「何を、鹿児島の外れからやってきたおまえに言われたくない!!」と憤慨したことがありました。ただ、東京出身の友人からも、青森出身の友人からも、皆から「訛っている」と言われたため、私は矯正活動に努めました。標準語をマスターするにはそんなに時間はかからず、すぐに適応してしまいました。逆に今、北九州に帰ってくると「東京の方ですよね?」と聴かれる機会が圧倒的に多く、「いえいえ、私は完全に地元の人間なんですけど・・・」と答えざるを得ません。


 東京生活が15年になると地元の方言を使うにはある程度意識しなくてはならなくなってしまいました。少しずつ取り戻しつつあるのですが、未だに母の話す言葉を聞いていると違和感があります。いかんですね、こういうことでは。