中東和平、イスラエルとアラブ諸国の果てしない争いです。私は明確な見解を持っています。「深入りしないこと」、この一言に尽きます。中東和平というのは、とどのところAmerican-American Problemだと思っています。グリップの効かない国は無理をしないのが一番です。


 そもそも、イスラエルとパレスチナが和平を実現するにはエルサレムの問題が解決する必要があります。無理なのです、あれを解決するのは。ユダヤ教の聖なる嘆きの壁の真上にイスラムの聖地アル・アクサー・モスク(ハラーム・アッシャリーフ)があるわけで、こりゃ無理なわけです。パレスチナ難民のイスラエル領内への帰還権についてもイスラエルはきっぱり否定していますし、正直なところ100年やっても遺恨が解消されることはありません。多分、このまま推移していくのだと思います。それが良いことだとは全然思いませんが、事実認識としてある程度の諦念観は必要なのです。


 「どうせ終わらない問題だし、日本としてグリップが効かない」ことを大前提に考えるならば、日本にできることは以下の2点に集約されます。

● 情報収集と適時適切なメッセージ発信
● 双方に恨まれない程度の「貢献」


 これでいいのです。これ以上の事をするのは無駄ですし、成果を得ることもできないでしょう。


 まずは情報収集。中東和平では偏ったメッセージを出した瞬間にボコボコにやられます。言葉遣いはとても大切です。だから現状をきちんと認識できるだけの情報収集とそれを解析する能力は不可欠です。そして、適時適切にメッセージを出す。これはそんなにお金もかかりませんし、通常の外交活動の範囲内でできることです。


 そして、程々の「貢献」。あまり何もやらず、お金も出さないと色々と恨まれます。石油資源を持つ湾岸諸国から総スカンを食うのは賢くありません。だから、中東和平問題への入場料くらいの気分で関係者に支援をしてあげればいいのだと思います。それ以上のことはやってもあまり効果がないし、中東諸国に無駄金をたかられるだけなので止めておいた方がいいのです。くれぐれも「日本の貢献により中東和平が進む」などという幻想は抱かないことです。きっぱり「入場料」と割り切って、捨て金の気分で支援をしておくくらいがいいでしょう。


 勿論、中東和平には色々な難しい歴史的経緯もありますし、これまで日本が貢献してきた分野もあります。ゴラン高原に派遣されている自衛隊の方々の苦労たるや並々ならぬものでしょう。ただ、中東和平に幻想を抱いてはいけません。今の日本が置かれた位置をきちんと見極め、無駄な資源、資金は使わないでやっていく、この発想が大切だと思います。そう考えることでシリア、レバノン、エジプト、ヨルダンとの関係は相当変わるでしょうし、外交上、別のフロンティアも広がってくると思ったりするわけです。


 ちょっと雑な意見ですけどね・・・。