在日米軍の再編で沖縄の海兵隊がグアムに戻ることが決まりました。色々思うことはたくさんありますが、気付いた点だけ(最新の情報に基づいていないので勘違いがあるかもしれません。)。


1.もともとアメリカは外国駐留米軍を削減するつもり
 ラムズフェルド国防長官が打ち出している路線は、大まかに言えば、できるだけ外国駐留の米軍を本国に戻して、外国には重要な戦略ポイントだけを残して、後は一事起こったときに機動的に対応できるようにしたいということです。その戦略ポイントとして日本の役割は高まっていますが、沖縄の海兵隊撤退の話は、そもそも日本からの要望で実現したというより、アメリカ側にもその必要性があったということなのだろうと思います。そういう意味で、本当はグアム移転の話はこちらばかりがお願いするかたちになるのは歪な構図です。ただ、移転の費用負担でアメリカに「そちらさんにも撤退の需要があるでしょ?」と言うと、彼らはそうは言いません。「いえいえ、日本の要請で撤退するだけですから費用はそちらで・・・」と返されるのがオチです。沖縄問題で少し足を見られたということなのでしょう。あまり国内が盛り上がりすぎると、そこで足元を見られてしまうんですよね(決して、沖縄の方々の基地による苦しみを分かってないということではありません。あくまでも交渉戦術に厳に限定した話です。)


2.そもそも、18000人が8000人撤退して10000人になるとされているが、元々実員上沖縄の海兵隊は定員の18000人はおらず実際に兵隊さんが減る数は8000人より少ない。
 今、沖縄の海兵隊の定員は18000人と言われています。しかし、これは定員としては18000人いることになっているだけで、実際に18000人いるわけではないようです。実際は12000人くらいではないかと言う向きもあります(ただ、政府はよく分からないという答弁をしています。)。簡単に言うと帳簿上は18000だけど、実際は12000ということです。したがって、仮にその推定が正しいとすると、8000人削減して定員10000人といっても実際に沖縄にいる海兵隊さんが8000人いなくなるわけではないということになります。この「定員」と「実員」の違いをよく理解していないとモノの見方を誤ります。
 しかし、グアムには8000人規模の海兵隊施設を作るのではないかと思います。そこに入るのは、実は沖縄にいる海兵隊ではないのではないかと疑問を持っています。現時点で全然別の地域にいる部隊がグアムに入ってくることがあるのではないかという疑問は成り立ちます。イラクから戻って来る部隊が入るかもしれませんし、もっと別の地域にいる部隊が入る可能性だってありえます。何故、皆これを指摘しないのかが不思議でなりません。


3.日本側負担の費用は小さく見えるようになっている。
 当初、アメリカの担当者が「日本の負担は3兆円」と言って物議を醸しました。その後、色々と日本側は費用を抑えようとしています。それ自体はとても良いことなのですが、その中にはちょっと「え゙っ?」と思うような理屈もあります。
 たしか、今、防衛庁が主張する日本側負担は6000億円くらいではなかったかと思いますが、その中には日本側がアメリカに資金を貸し付ける部分が含まれていません。アメリカ側に相当の金額のお金を国際協力銀行が貸し付けるのではないかとされていますが、これは「いずれ返済される」という前提で貸されているので、日本側の純負担増には位置付けられていません(もっと正確には市場利子と貸し付け利子の差の分とか返済期間が長期になる分は贈与分に相当します。)。けど、よく考えてみれば分かることで、そのお金で作るのは海兵隊の色々なアメニティ施設です。グアムに作る米軍住居施設は何の利益も生み出しません。せいぜい家賃とかマクドナルドのフランチャイズ費くらいです。返済原資がそもそもないのです。結局、アメリカがそんなお金を返済するかどうか、甚だ疑問です。「日本の負担はそんなに法外なものではない。」と日本側が主張するときは、「ふむふむ、ところで借款分はどうなっているの?」と疑問を持つことをお勧めします。帰ってこないカネじゃないかなと私は睨んでいます(つまり、日本側負担で計算すべきもの)。


4.海兵隊が減れば思いやり予算も減るはず。
 当たり前ですよね、これ。今後、海兵隊の数が減った結果、思いやり予算がどの程度減るかはきちんと見ていかないといけません。私の常識観では結構無駄に使われている予算です。一応、思いやり予算の協定には倹約努力が書いてあったような気がしますが、実際に米側は倹約努力すらしているのかどうかが疑問です。本来あるべき姿は思いやり予算の支出は常に米側支出とカップリングにして、思いやり予算の支出が増えれば米側のポケットも痛むようにすることです。そうやって、倹約努力を制度内に内在しない限り、アメリカが真剣に倹約努力なんかするはずがありません。それはアメリカ側が良い悪いの話ではなく、単に制度設計上、アメリカ側にそういう誘引が働かないというだけの話です。


 その他、思うことは色々あるのですが、お金の関係で気になった点を4点挙げてみました。まだ思い出すことがあるかもしれませんので、少しずつ書いていきます。