私は美術館、博物館があまり得意ではありません。長々と鑑賞するなんてのはもっての外です。どんどん歩いて見ていって、それで満足できるのならそれで良いじゃないかと思うわけです。したり顔で「この絵のこの部分がね・・・」といった解説など全く受け付けません。そもそも、絵や彫刻なんてのはパッと見て「うん、良い」、「ダメだ」と思えればそれでいい、それが私の感覚です。だから、絵の前で立ち止まったりなど絶対にしません。

 ということで、私はフランスにいた際もあまり美術館、博物館には行きませんでした。かの有名なルーブル美術館は、目の前までは何度も行ったことがあるのですがついぞ中に入ることはありませんでした。パリのオルセー美術館は20分程度で出てきました(が、それなりに満足しました。)。唯一複数回いったことがあるのがパリの「ポンピドゥー・センター」。どう考えても理解不能な現代美術が並んでいて、あのサイケデリックな感じが私の感覚にフィットするのです。ロンドンの大英美術館もさっさと出てきた記憶があります。

 しかも、欧州の美術館には不快感を催すものがたくさんあります。それは中東、アフリカから盗んできた展示物がこれ見よがしに飾ってあることです。大英博物館で見たミイラ、「おまえ、エジプトに返せよ。死体だぞ、これ。」と憤慨しました。フランスの美術館にも世界あちこちから盗んだり、ひっぺがしたりしたものが飾ってあります。あれを見て私は全く感銘も感動も受けません。「いい加減にしろ、バカモン!」と怒りだけがこみ上げます。だから、私はそういうのがないポンピドゥー・センター(現代美術)が肌に合うのかもしれません。

 しかも、欧州諸国は「悪かった。返す。」とは絶対に言いません。「我々が保存していなければ朽ち果てていた。当時の国際法によれば違法ではない。」、「あれは買ったのだ。」みたいなことを平気で言います。植民地時代の(歪んだ)啓蒙主義がいまだに残っています。ホントに偽善の塊だと思います。

 ああいう植民地主義の残滓、あれがある限り私の足が欧州の美術館に向くようにはならないでしょう(向いてもパッと入って出てくるだけですけどね)。向こうも私のような不心得者に来てほしいとは思わないでしょう。

 ただ、私が美術館を苦手にしているのは、単に人間がアウトドアにできているだけなのかもしれません。美術館はダメですが、チベットの風景ならそれだけで一日は過ごせますからね。