アンナ・ポリトコフスカヤが暗殺されました。ロシアの女性ジャーナリストです。チェチェン情勢を執拗なまでにフォローしてきた女性で、かねてから政権側から命を狙われていると言われていました。彼女がどういう人かは以下の本によく現れています。如何にチェチェンでロシア軍が無茶をやっていて、それがロシア国内(ロシア軍内)にも病理を撒き散らしていることを鮮明に語っています。私は2年くらい前にチェチェンの近く(グルジアの南オセチア共和国)まで行ったことがあるのでチェチェンには一方ならぬ思い入れがあります。


チェチェン やめられない戦争

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140808918


 最近、ポリトコフスカヤは「プーチニズム」という本を上梓しました。中は読んでいませんが、強権政治を強めるプーチンを批判した内容になっていることは容易に想像できます。そういう反体制派の動きを快く思わない勢力が、彼女を暗殺したのでしょう。彼女の本を読むと「いつか来るべき死」に対する恬淡とした感じを受けたものです。


 以下は私の好きな言葉の一つです。イギリスの思想家、ジョン・スチュアート・ミルの言葉です。何と訳していいのか悩ましいですが、とどのところ、一人の意見を圧殺することは、人類全体の意見を圧殺するのと同じくらい正当化されないということです。

「If mankind minus one were of one opinion, then mankind is no more justified in silencing the one than the one - if he had the power - would be justified in silencing mankind.」


 私はチェチェン情勢についてはポリトコフスカヤほど純粋な気持ちを持っているわけではありません。軍事介入自体が否定されるべきかどうかということについて少し留保したい気持ちがあるからです。ただ、そうであったとしても暗殺で言論を封殺するようなことは絶対に許されるべきではありません。改めてミルの言葉を噛み締めるばかりです。


 あまり日本で関心を持つ人もいないでしょうけど、ポリトコフスカヤ暗殺、これは重大な出来事です。