先週の日曜日、団体戦の柔道世界選手権(男子)がやってました。勿論、テレビの前で「ぐびなま」を飲みながら見てました。こうやって、テレビの前でくだを巻いている自分はすっかりおっさんです。


日本チームは調子悪かったですね。テレビでは十分に伝わらないのですが、あの体育館でのフランス人の応援というのはすごいのです。一度、パリ国際柔道を見に行った時に感じました。あれだけ相手に応援が行き、自分がやじられたら、かなり凹むと思います。審判もホーム・タウン・デシジョンの一つもやりたくなるものです。まあ、2008年の北京でも似たような状況になるでしょうから、その練習だということですかね。

それにしても、フジテレビは不親切でした。7人戦で先鋒、次鋒戦をやった後、コマーシャルが入り、その後、何のアナウンスもないまま中堅戦を映していたりして(その間五将戦があったはず)、非常に分かりにくかったです。私は大体頭の中でストーリーを補いながら見ているので、それ程苦にはしませんでしたが、一般の人は「あれっ?」と思うことが多かったでしょう。「坂口憲二、平井理央、『がんばれ、ニッポン!』も良いけど、もうちょい全体像の見えやすい番組作りをやれ」とか言いながら、テレビの前でくだを巻きまくっていました。


日本チームはすっかり研究されていました。「ガッチリ袖と襟を掴まれたら(つまり、スタンダード柔道をすれば)負ける」ということからスタートして、ともかく持たせてもらえませんでした。私もどちらかというとガッチリ組んでやるタイプなので、掴ませてもらえずに振り回された挙句、背負い投げ、袖釣り込み、小内刈り、肩車などで投げられる嫌さをよく理解できます(レベルは違いますけど)。しかし、それが世界のスタンダード化しつつあるのは残念ではありますが仕方ないのかもしれません。日本の学校でも「組まなくていいから、襟を持ったらガンガン巴投げとか肩車とか諸手刈りとか隅返しとかやれ!」と教える指導者が出てくるかもしれませんね。一般的に日本の柔道界ではとても嫌われるスタイルですが。


あと、最近ルールの改正があったらしく、いわゆる巴投げ、引き込み返しに対する反則を取らなくなりました。自分から背中をつけて投げようとする技なのですが、ともすれば時間稼ぎ、不利な体勢から逃げるときにも使われるので、これまでは比較的厳しく見張ってきたものです。特に場外側に向かって行う巴投げは即「(技の)掛け逃げ」として反則を取られていたのですが、それまで許容されているようでした。あれは見ていて本当に不愉快でした。鮮やかに一本を取る柔道から、チョコチョコとポイントを稼いで勝つ柔道への転換なんでしょうね。一本を美学とする日本柔道にとっては不利な制度改正です。そして、今回はそれに翻弄されまくっていました。昔なら相手に「掛け逃げ」で反則が出るところが、逆にこちらが「消極的だ」という指摘で反則を取られているのを見て、私の巻く「くだ」は最高潮に達していました。


私はいつも思うのですが、いつもこの手のルール改正は欧州に有利になるようになっています。あまり陰謀論は好きではないのですが、ともかく日本(と韓国)に不利な改正ばかりが実現します。私が想像するに、日本の柔道関係者は国際柔道連盟(IJF)できちんと意見表明できていないのではないでしょうか。IJFの公用語は英語とフランス語。どちらかができないと全くお話にならないわけです。多分、ここで通訳でも連れて議論に参加しているのではないかと懸念されてしまいます。それでは絶対に多数の意見を纏め上げることはできません。欧州人はなんだかんだ言って、少し勉強すれば英語くらいはできるようになりますから、結局、外国語の下手な日本人だけが、目の前であれよあれよと変更されていくルールに地団太を踏みながら、有効な反論をできずにいるという姿が浮かんできます(韓国は今、IJFの会長を出している。)。上記のルール改正だって、おそらく欧州の理事あたりが「巴投げだって技じゃないか。十分な体勢で入っていないからって、それを掛け逃げだというのはおかしい。そんなことを言ったら、十分な体勢で入っていない技はすべて反則にしないとおかしい。」みたいな一見もっともらしい理屈をつけて議論を展開してきたのではないかと思うのです。それをおかしいと思いつつ、有効な反論ができない日本勢、そして、欧州勢からの加勢・・・、結果は明らかです。「かつて強かった御仁」ばかりが国内の業界を仕切っていいのは相撲だけです。国際化したスポーツ、柔道では外国語を操れる人材をきちんと育成して、国際社会で日本のポジションをきちんと述べ、抗していけるだけの人材を有さないといけないと思います。でないと、柔道のルールはどんどんおかしくなり(見苦しい柔道を奨励するようになり)、生真面目な日本人に不利になっていきます。まあ、これは多くのスポーツについて言えることですが。


ところで、フジテレビは全然取り上げませんでしたが、優勝はグルジア。小さな国です。450万人程度の国です。私は2004年の年末に行きました。ちょっと長いですが、旅行記を書いています。


http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-10012590767.html

http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-10012590794.html

http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-10012590811.html


説明するのが難しいのですが、中央アジアからイラン、トルコあたりの地域では「強い」、「力持ち」ということがとても持て囃されます。イランは重量挙げの有力国で、トルコ、ウズベキスタンなどはレスリングが強かったと記憶しています。グルジアは相撲の「黒海」の母国です。


一番記憶に新しいのは、シドニーでのズラブ・ズビャダウリの活躍です。と言っても分からないでしょうから、以下の写真を参照ください。オリンピック90キロ級決勝で、日本の泉選手の技を返しているシーン です。これは結構衝撃的でした。


今回の世界選手権にはズビャダウリは出ていませんでしたが、それでもグルジアチームは韓国、ロシアを撃破しての優勝。選手層がとても厚いのだと思います。グルジア、結構楽しい国です。中東とキリスト教の文化の融合する場所です。地方には治安の悪いところがありますが、首都のトビリシは全く問題ありません。だから、どんどん日本選手が行って練習してくればいい、そう思います。