題の文(文とも言えませんが)、何の訳か分かるでしょうか。これで「3時のあなた」と訳します。


これはかつて誰かから「某三権の長の英語履歴には『3時のあなた(注:某三権の長は司会者をやっていた)』が『You at 3 p.m.』と訳されている」と聞いたことがあって、「そんなバカな!」と思っていたのですが、本当に偶然見てしまいました・・・、履歴書に「You at 3 p.m.」の記載を。どういう機会に見たかはちょっと言えないのですが、私が見たその履歴書英訳(少し古いものでした)にはしっかりと書いてありました。まあ、普通ならちょっと意訳して「Meeting You at 3 p.m.」くらいにするんでしょうが、それにしても「You at 3 p.m.」、大ヒット作です。絶対に英語を母語にする人には理解できないでしょう。誰が書いたんでしょうね、某院の事務局ですかねぇ。


まあ、英語の直訳というのは得てして、とてつもない訳を作ることがあります。私が聞いたもので良かったと思うのは、

○ 来るなら来い! : Come, if you come!
○ 彼は使えない男だ : He is useless.


ただ、これくらいなら、まだジョークになるくらいだからかわいい間違いなのです。私が見た有害な間違い、そして嫌な思い出というのがあります。


あれは外務省でWTOを担当していた時のこと。経済とか通商とかが担当だと主張している某省の課長補佐との協議でした。同某省担当部局が作成した英語の資料に、非常に多く「Correspondences of the Japanese Government」という表現が出てくるのです。イメージとしては、


【Correspondences of the Japanese Government】
1. ・・・・
2. ・・・・
3. ・・・・
(「・・・・」部分には具体的なアクションが書かれている)


といった感じなのです。率直に言って「さっぱり意味が分からん」のでした。「Correspondence」には「手紙、書簡のやり取り」みたいな意味があるので、「日本政府が何か手紙でも書いたのか?」と思いながら読むのですが、全く意味が通じません。しばらく悩んで、「これは日本語にしてみると何となるのか?」と思いながら考えてみました。そして英和辞典、和英辞典を読んでみて、ようやく意味が分かりました。これは「対応」という語を訳したかったようなのです。つまり「日本政府としての対応」、そして、具体的なアクションが書いてあるわけです。


しかし、英語を理解する人なら分かりますが、この「Correspondence」は「AとBが対応している」とかいった文脈で使われるもので、類義語は「一致」です。残念ながら、これでは全然意味が通じません。書くとしたら、(こなれてない表現ですが)「Measures taken by the Japanese Government」くらいが良いのではないかと思えます。多分、和英辞典を見て「対応」の欄に「Correspondence」を見つけてそのまま多用したのでしょう。


当時の緒方課長補佐は、某省課長補佐に説明を試みました。「あのですね、ここでのcorrespondencesはちょっと意味が違うんですよね。」・・・、私の言い方が良くなかったのでしょうか、即座に相手は気を悪くしました。「何がいけないと言うんですか?」・・・、既に雲行きがどんよりどよどよしてきていました。「いや、これだと英語としてちょっと意味をなさないんですよね。」・・・、その後に来ました、今でも忘れられない名文句が。「そんな細かいニュアンスをチマチマ言われても困るんですよ。こちらの意図するところが通じるのなら、それで良いじゃないですか。」・・・。


「いや、そこまで胸を張って言われると困っちゃうな。いや、もしかしたらこの御仁は、某省に良くありがちな『米国●●大学卒』で、アメリカに殆ど行ったことのないオレと違って英語の使い手かもしれん。オレの指摘はチマチマしたニュアンスの問題なのか。」・・・とは全然思いませんでしたが、あまりに胸を張って「意図するところが通じる」と主張し、それを信じている人に言っても無駄かと思って、それ以上言いませんでした。まあ、そのペーパー自体の作成者クレジットが「某省」だったので、「国際派気取りで勝手に恥かいてろ」というのが正直なところです(ホントはそれではいけないのですが)。その他の部分も英語としては「ちょっと如何なものか」という思う部分が多々あったのですが、すっかり両者間の雰囲気がどんよりどよどよしていたので、あれこれ指摘するのはもう止めました。


あまり英語の間違いをあげつらうとイヤミなヤツとして嫌われますが、「You at 3 p.m.」、かなりのヒット作です。