よく、財界のリストラ、官の肥大・ムダなんてことが言われます。大体、官がよく叩かれます。無駄が多い、サービス精神がない等々。まあ、それらの批判には一定の根拠があるので官側もあまり抵抗できません。官僚叩きは単なる時代のトレンドを越えて、普遍的な人気テーマになりつつあります。役人批判をすれば胸はスカッとしますし、学歴が高いと言われるお役人が頭を下げると溜飲が下がるというものです。


そういう中、私が「最もムダが多い場所、最も改革マインドに欠けた場所」だと思うところは、実は「国会」です。中から見ていると「ホントに無駄が多い」と感じます。


まず、国会の事務局、ホントに「決まったことしかやらない人達」です。何かを改善しようとかいう気概を感じません。霞ヶ関はここ10年くらい、各方面からボコボコにされてますのでかなりサービス精神を持とうとしていますが、そんな世間の風も何のその、国会の事務局というのは「これぞお役所仕事!」という感じです。何かを効率化しようとか、そういう気概を全然感じません。あの雰囲気、ちょっと今時珍しいです。テキパキ動く職員の姿を見ることはとても稀です。


しかも、衆議院と参議院にほぼ同じ機能があります。近く廃止されると聞いている速記についても、養成から速記方法まで全然両者間で接点はないそうです。法制局、調査局、国際部警務部、庶務部、管理部もホントやることは同じなのに、全く同じものがそっくりそのまま存在しています。あれを改善しようとしないその心意気には感心してしまいます。参議院の独立性とか色々な言い訳は聞くのですが、「そういう言い訳はいいから、基本的にはサービスは統合しなさい」と思います。


あと、国会図書館。とても良いものを持っています。そのデータベースの水準は日本一と言っても良いでしょう。能力もかなり高いです。あらゆる公刊の蔵書が揃っているそうです(エッチな本とかまで。さすがに裏系の本があるかどうかは定かではないのですが。)。しかし、残念なことに一般の人にあまり開かれていません。折角のあの能力、もっと開かれた組織であるべきなんですけどね。国会の図書館ということで、一般の人を遠ざけています。今時そんな四角四面の組織、お役所だったら叩かれまくります。国民から遠い存在である国会図書館であってはならないと感じるんですけど。


更には、国会側の非効率がお役所に波及しているという側面が多いのです。今、国会で質疑が行われると前日にはお役所側が質問に立つ国会議員に質問を聴取に来ます。そして、それを受けて答弁者(大臣とか)用の資料を作成します。その聴取をしている間は関係あると思われる(「関係ある」ではなくて「関係あると思われる」であることに注意。)部局がずっと待っているわけです。そして、その聴取の時間が遅くなると、それを受けての答弁書きもずれ込んで結局深夜の残業→タクシーということになるわけです。これ、膨大な人が残業を強いられているんですよね。一人の議員の都合により、残業代、タクシー代がともすれば数千万円かかっているんじゃないかと思うんです。これだけじゃなくて、議員への説明、議員からの資料要求・・・、まあ、ともかく国会側からの要望に対する対応というのはとてつもない作業になります。大体、こういう待たせ方をしたり、説明に来たお役人に高飛車に出たりするのは「学歴コンプレックス」とか「対役人コンプレックス」のある議員なのです。「待たせる」ことで権威を見せつけるというわけですね。 相対的に野党に多いような気がします。


こういう政の側の非効率が官に流れ込んで、官に無制限、無定量の負担を強いているのが現状なんです。それが、官の側に「自分達は深夜までこんなに頑張っている」という意識を生まれさせ、官僚の心理の中に「こんなに奉仕しているのだから自分達は(給与以外の)様々な恩恵を被ってもいいのだ(例:タクシーチケットの濫用、高価な官舎)」という正当化を生まれさせているような気がします。結局、役人批判をする前に、そのお役人に無理・非効率を強いていることを見直すのも大切なんです。


政官財、きっと一番非効率なのは政(とそれに付随する人達)です。そして、政はその非効率を官にまでばらまいています。何とかならんか、と思う毎日です。