題の意味は「人民、祖国、トルクメンの父!」という意味です。日本に普通に住んでいる人は全く関心がないと思いますし、関心を持たなくても十分に生きていけます。


2003年正月に私がトルクメニスタンという超マイナーな国に行ったのですが、町中には大統領のサパルムラート・ニャゾフの写真と「Halk, Watan, Turkmenbasy!!」のパネルが、首都アシガバードの町中に溢れていました。ほぼすべての建物にニャゾフ大統領の写真が飾ってあるわけです。かの国は天然ガスで儲けているので建物はとても立派です。立派なのですが、すべての建物にこの顔がデカデカと奉られていると違和感ありまくりです。


(↑ トルクメニスタンという国)


(↑ ニャゾフ大統領)


(↑ 町中の建物はすべてこういう感じになっている。写真がニャゾフ大統領)


極めつけが、アシガバードの街のど真ん中にある金の像。ニャゾフ大統領の像です。何がすごいかと言うと、100メートル級のタワーの上に金の像があることではありません。この像、太陽の方向を向くようにヒマワリのように回転するのです。街の何処にいても見えるこの像。ちょっと圧倒されます。


(↑ 太陽のほうを向いて燦然と輝くニャゾフ大統領像)


しかも、このタワーには登れちゃったりして、街の全景を眺めることができます。一番印象的なのは、場違いまでに豪華な大統領府宮殿です。オイル・ダラー恐るべしと思わせる一瞬です。



(↑ タワーから見た大統領府宮殿)


多分、ニャゾフ大統領はトルコの建国の父、ケマル・アタテュルクのようになりたいのだと思います。トルクメンバシという名前も露骨に意識しています。たしかにアタテュルクはトルコでは絶対的に尊敬を集める存在で、よく写真を街中で見ますから、それになぞらえているつもりなのでしょう。ただねぇ、あなたがねぇ・・・、ちょっと違うんじゃないか?と思いたくなります。


このニャゾフ大統領、これだけではなく政策面でもすっかり変なのです。「地方に住んでいる人間には図書館など不要」と言って、首都アシガバード以外の図書館は全部潰してしまったり、金歯はよくないといって禁止してしまったり、それはそれは変なのです。ちょっとオカルト気味だなと感じることが多いです。


このニャゾフ大統領を見ていると、世の中には色々な独裁者がいるもんだと感じます。某国の一風風変わりな指導者が相対化されて見えてきます。ただ、アメリカはトルクメニスタンを「悪の枢軸」とは絶対に呼びません。何故か、理由は簡単です。天然ガスがたくさん出て、しかも独裁の方向性が無害であること、これに尽きます。石油の出ないベラルーシのルカシェンコ大統領は「悪の枢軸」に入れられてしまいました。それを「ダブル・スタンダード」と呼ぶか、リアリスト外交と呼ぶかはまあ議論のあるところですが。


なお、トルクメニスタンは石油の価格をものすごく下げているのか、首都のアシガバードから500キロ飛行機に乗って10ドルでした。これも外国人価格で、現地の人は1ドルだとか行ってました。500キロ飛行機に乗って100円、もうムチャクチャでした。


ちなみにトルクメニスタン、普通に観光に行くのは相当苦労します。まずビザが取りにくい。行っても街中が寂しい。歴史で勉強したパルチアなんて国に関心があれば面白いでしょうが、歴史に関心のない方はとてつもなく退屈な国に見えるでしょう。私は世界遺産のメルブ遺跡を見てきましたが、誰も保存の労を取っておらず朽ち果てて行ってました。私が行った世界遺産の中で「超マイナー」な部類に入っています。あと、馬に関心のある方は面白いかもしれません。漢の武帝が欲してやまなかった汗血馬、あれはトルクメニスタン産の馬だそうです。汗血馬を求め、西域に何度も遠征軍を出した話は有名です。今でもトルクメニスタンは馬を大切にしていて、「馬大臣」までいるそうです。


(↑ メルブ遺跡)


(↑ プロフ(ピラフのようなもの))


(↑ 田舎で見た結婚式)



(↑ アシガバード郊外のトルクーチカ・バザール(赤い絨毯が綺麗))


某国の独裁者がテレビでクローズアップされる度に、比較してしまいます、トルクメンバシのおじさんと。