(その2)(http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-10013078461.html )で「宗教教育」について書いたのですが、もう少し考え直して「おやっ」と思いました。「そういえば、自民党の憲法草案が出てたな。」ということです。今の議論は大体が現行憲法を前提に議論しています。しかし、憲法と絡めて読んでみるとその姿は変わってくるはずです。少し読み直してみました。


【自民党新憲法案第20条3項】

国及び公共団体は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを行ってはならない。


少し分解してみましょう。

① 国及び公共団体は、

② 社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、

③ 宗教的意義を有し、

④ 特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを

行ってはならない。


簡単に言えば、

①は私的な団体(私立高校等)の行為は排除されるということ、②は社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えない宗教教育その他の宗教的活動ならOKということ、③は宗教的意義を有しなければOKということ、④は特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉とならなければOKということです。この4つの条件のうち、一つでも外れればOKということになります。

これまで「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動をしてはならない。」となっていたのに比較すると、よりクリアーする要件は緩やかになったといっていいでしょう。


この点が靖国神社参拝についてもたらす影響は大きいのですが、それは別の機会にすることとして、宗教教育という観点から考えてみたいと思います。


今の教育基本法改正の政府案には、前文に「日本国憲法にのっとり」という一文があります。つまり、憲法が改正されればそれにのっとって教育基本法も解釈されることになります。では、上記の自民党案では、憲法で課される上限はどれくらいになり、教育基本法上、何処までのことが可能なのかということが問題になってきます。


まず、「宗教(宗教教義ではなく)とは何か」を教えることは、④の条件が外れてくるのでOKということになりそうです。更には、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲であれば、国及び地方公共団体が特定の宗教の教義を教えることはOKという結論もありうるでしょう。さて、それが今、学校で教えているような「知識」としての宗教教義を越えて、もう少し教義そのものについても触れるところまで行っても社会的儀礼又は習俗的行為の範囲と言い得るか。これは微妙ですが、法解釈としては可能性がゼロとまでは言えないのではないかと思います。


もうちょっと整理すると、以下の4つはすべてOKになります。

● 社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものであっても、国及び地方公共団体が行わないもの(例:私立高校)

● 国及び公共団体が行い、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものであっても、 社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えない宗教教育その他の宗教的活動(例:特定の宗教に関する一般的な教養を公立学校で教えること)

● 国及び公共団体が行い、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものであっても、宗教的意義を有さないもの(例:特定の宗教教義的なものであるが道徳、倫理的な色彩の強いものを公立学校で重点的に教えること(ちょっと自信がありませんが))

● 国及び公共団体が行い、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有するものであっても、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉とならないもの(例:宗教教義でない宗教そのものを重点的に公立学校で教えること)


・・・とすると、実は一見民主党案よりも宗教教育については下がっているように見える政府案も、来るべき憲法改正までを見据えれば民主党案並み、あるいはそれ以上に踏み込むことが念頭にあるということも考えられます(その場合、現在の教育基本法改正の政府案の読み方はガラッと変わります)。もしそうだとしたら、この論争は自民党が憲法と教育基本法のパッケージで戦い、民主党は教育基本法だけで戦っていることになります。それでは噛みあうはずがありません。自民党としてそこまで考えているのかどうかちょっと自信がありませんが、ホンネでは「表立っては言えないけど、憲法案と併せ読めば実は向いている方向は同じなのよ。分かってねん。」ということなのかもしれません。


なお、しつこいようですが、私は宗教教育については今、やっているくらいでいいと思います。それ以上の情操面は別に宗教という言葉を付さなくても、道徳、倫理の世界で教えていけば十分だという発想の人間です。