今日はずっと観たいと思っていた「パーフェクトデイズ」の映画を観に、新宿の映画館に来ました。
シネフェスで浜村淳さんが言われていたように、中野さんはこの映画に沢山出てくるわけではありませんがとても存在感がありました。
主人公の日常が揺れ動く瞬間のキィパーソンとして登場…。
透明感があり若いのにどこか突き抜けた感じの、飄々とした感のある女優さんです。
大阪の映画フェスティバルで受賞した俳優さんは、その後皆さん人気が出ている、とのことですので、今後の活躍が楽しみです。
この映画は、アメリカのアカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされて話題になっておりましたが、果たして受賞するかは、明日3月11日の発表待ちとなっていますよね。
それに先んじて、
日本アカデミー賞主演男優賞を役所広司さん、そしてこの作品の優秀監督賞をヴィム・ヴェンダースさんが受賞されました。
そして、今日やっとこの作品を観ることができて、
主人公の台詞は少ないながら、とてもいい作品で、明日のアカデミー賞受賞も予感しました😆。
外国人の監督とは思えぬ作りです。
行間に漂う、日本的とも言える「木漏れ日」のように揺らぐような情感を、果たしてアメリカ人が理解するかはわかりませんが、これは日独の合作映画とのことです。
役所広司さんの無言の演技力、その目と表情に色々な思いが表れていて、思わず引き込まれ、素晴らしいと思いました。
その前に、
使われている音楽が(60)70年代からの若い頃に馴染んだ曲ばかりで、とても懐かしく、その頃青春を過ごしたヒトは、それだけで主人公の複雑と思える背景を想像しながら、
監督の世界観のようなものに引き込まれていくのです。
なるべくネタバレ無しに書こうと思いますが、もしもあらすじを知りたいならこちらをご参考に。
↓
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/PERFECT_DAYS
観るまで知りたくない方は読み飛ばしてください。
ここからは私の独善的妄想が多少入り混じりますので悪しからず、そのつもりでお読みください。
主人公は、公衆トイレを掃除する仕事をしているのですが、
毎日厳格とも言えるような決まったルーチンで生活することを固く決めているようなのです。
朝は、近くの老人がお掃除する箒木の音で目を覚まし、きっちりと布団をたたみ、自分が育てている草木に水を吹き掛け、決まった位置に置いてある持ち物を一つずつ取り、アパートの前の自動販売機でコーヒーを一本買って飲んでから仕事に出かけます。
何日も違えない、主人公のルーチンを繰り返し見ていると、この人はもしかしたら刑務所に入っていたのではないか…。(刑務所の暮らしは知らないが、規則正しい生活をさせられ、それが倣いになっていると想像)
そのことがヒトに言えない秘密となっていて、無口なのかもしれない…。
車に乗ってかけるのは、もう古くなったカセットテープです。
そして画面から、アニマルズの「朝日の当たる家」が流れます。
こうきたか…というような選曲。
意外でもありました。
これは、その後、飲み屋の女将役の石川さゆりさんがギターの伴奏で日本語でも聞かせてくれます。
主人公はこの女将に好意を抱いているように見えるけども…。
主人公は毎日同じルーチンで生活しているとはいえ、車に乗ってかける曲は同じではありません。
2日目?はドック・オブ・ベイ「The Dock of the Bay」でご出勤。
あら、ら、オーティス・レディングですやん。
これも懐かしい!😊😆
そして、途中にも軒並み嬉しい懐かしい選曲の音楽が流れて、つい聞きいってしまったのでした😅。
イギリスのバンドで友達のミュージシャンが好きだったThe Kinks の、Sunny Afternoon。
😂ちゃんと映画を観ろ、っての!
…
という話ですが、この映画のタイトルでもある「パーフェクトデイ」も流れていました。誰の歌でしたかね?
ついでにいうと、
極めつけは、
最後に、
去っていく役所広司さんの悲しみとも、小さな幸せを噛みしめるとも言い難い、色々に変わる表情のアップのバックに、私も大好きでよく聴いていた、
ニーナ・シモンの「Feeling Good」が流れて、なんだか泣きそうになりました。
結局…こんな淡々とした静謐な生活を送る主人公の今の生活に至る背景は明かされずに映画は終わります。
本を読んだり、カセットテープの音楽を聞いたりしながら、毎日木漏れ日を撮影する主人公。
毎日の小さな変化や偶然を心のなかで味わっているようにも感じるのですが、所々に嵌絵のように映される暗いはっきりしない映像が過去の暗い出来事を想像させ、観ているものを不安にさせるのです。
木漏れ陽の写真を「日記」か「領収書」のように、几帳面に缶にしまっていく主人公の姿は、
決まった日常のルーチンの中で、不安で不吉なようなおぼろげな映像が入り混じり、ある種異様な姿にも感じられる。
それは、もしかしたら彼の、忘れたい「犯罪」?の過去と関係あるのかもしれない…。
主人公が決まって飲みに行くお店。
浅草の地下鉄から上がっていく所にある雑貨屋さんや飲み屋街ですよね。私も見たことがあります。まだありますよね?映画のようなテーブルのお店は無かったと思ったけれど。
あの主人公のアパートを見た時、昔、若い頃にお友達が住んでいて、1度行ったことのある、押上の駅付近の路地のアパートに似ている、と思ったのですが、やはり、どうもあの撮影は押上、向島のあたりだったようです😳。
植木に水をやる、「お帰り」と言ってくれる決まった数軒の飲み屋に通う、決まった時間に銭湯に行く、コインランドリーで洗濯、古本購入、毎晩の読書に至るまで、厳格な画一的とも言える彼の生活のサイクルは、見方を変えれば病的とも見え、ストイックで、淡々として、やがて見るものに清々しくさえ思えてくる。
そしてその生活のバランスを崩すのが、おじさん、と彼を呼ぶニコという娘の登場。
それが初めに書いた中野有紗さんなんですね。
とうやら彼女のお母さんと主人公は何か事情がありそうです。
おじさんとは住む世界が違う、と彼女の母親に言われたとニコは言うのですが、彼は何も答えません。
ニコを迎えに来た彼女の母親と主人公との再会。唯一、彼の背景が感じられるのは、このニコとその母親とのやり取りだけなので、この場面は敢えて内緒にしておきましょう。
ただし、ニコが「すっぽん」のヴィクターになるかも…と言った事について、
ご参考まで。
https://jitupuli.com/patricia-highsmith-the-terrapin/
これ以上は止めておきます。
Who is HIRAYAMA?
ささやかな幸せを日常に見つける映画とも書かれていたりしますが、
主人公の役所広司さんの演技を堪能する映画、皆様もご覧ください。
お勧めしたい良質な映画と思います。
追加しました
残念ながら、アカデミー賞の長編映画賞受賞は逃しました。受賞作は『関心領域』でした。題材的にもやはりこちらが受賞が妥当か、と思われます。こちらの作品もまた観たいと思っております。
2024. 05. 12 追記(覚書ーヴィム・ベンダース監督の話による)
パーフェクトディズに使われていた曲
・Pale Blue Eyes 《ヴェルベット・アンダーグラウンド》
・The House of the Rising Sun 「朝日の当たる家」《ザ・アニマルズ》
・Feeling Good《ニーナ・シモン》
・青い鳥《金延幸子》
・(Warlkin' Thru The )Sleepy City 《ローリング・ストーンズ》
・Brown Eyed Girl 《ヴァン・モリソン》
読んでくださりありがとうございます。