「空飛ぶタイヤ」池井戸潤



リコール隠しの罪と罰。
数年前の事件が思い出されます。

「個人と会社が喧嘩したら、
 絶対に個人が負ける。」
のは世の節理ですが(たいていはね)

赤松運送のトラックのタイヤが走行中に外れ、
歩道を歩いていた母親に衝突。
原因は赤松運送側の「整備不良」と断定され
死亡事故として刑事裁判となる。

社長赤松は「整備不良」に納得せず、
検査を行った財閥系大会社の
ホープ自動車に最初は不満を、
だんだんはっきりと疑いを持つ。
ホープ自動車の車は欠陥車ではないか、と。

中小企業対財閥系大会社。
それを軸として
(本当の軸は人の命の大切さ、ですが)
警察や公的機関
メーンバンクの銀行や
その他グループ企業
他の運送会社や
子供たちが通う小学校
そして家族が
繋がっています。

一つの事柄は、世界のすべてと繋がっている。

従業員を信じて業務上過失致死など絶対無いと
必死に戦う赤松社長。
しかしホープに勤める人たちは
赤松運送の社長など歯牙にもかけず。
「ホープにあらずは人にあらず。」
(ホープは関連企業がたくさんあります)
のような殿様商売。
プライドが高い。
また、サラリーマンなら誰しも
持ってるとありますが
「バランスシート」
会社人はいやあ損得勘定がうまい!!
皮肉に感動しますです。

最後のほうで、
消費者は、ホープ自動車の事故だから
許してあげるか、なんて思ってくれると
思ったら大間違い。
個人消費者相手に、財閥の権力を振り回して
どうする!?とありますが
まさに・・その通り。。

会社の常識、社会の非常識。
会社の体制批判だけでなく
その後ろ側の家族の話もいいですよ。

この物語のように、うまく何もかも運べばいいんですが。。
空飛ぶタイヤ/池井戸 潤

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「少女七竈と七人の可愛そうな大人」桜庭一樹


「白っぽい丸」から抜け出す為に、
辻斬りのように男遊びをしよう。

そんなモノローグで始まる物語。
こんなにも陳腐に、
悲しくなる物語は無い。

一年の半分以上を
雪に閉ざされる狭い町で、
少女「七竃」の母親は
七人の男と辻斬りのように寝る。
隣の席に朴訥として座っている
本当に好きな男ーー
そして絶対に好きになってはいけない男ーに

「七竃の実は七回燃やさなければ
 燃え尽きないほどに実が堅い。
 そうして上質な灰になる」

と聞かされて。


そうして生まれた少女七竃。
親に似ず、壮絶にまで「綺麗」な
「かんばせ」を持つ彼女は、
自分とよく似た「かんばせ」をもつ
雪風と一緒に閉ざされた世界を過ごす。
やがて二人のかんばせがよく似ている事に
気づかれるまで。

二人は囁く。
「七竃のかんばせがすごく綺麗なのは」
「「母親がいんらんな時に
  出来た子供だからだ」」

彼女達の住む旭川に少しずつ降る雪のように
しんしんしんしん積もっていく。
下のほうが固まったり、
上は踏み潰されて濁ってきたり。

不信や寂しさや恨みや
あいが。

一章ごとに語り手が変わるこのお話。
最後から二番目の話が
一番悲しかった。
陳腐に悲しかった。

タイトルから優しいように、
「可哀相」ではない、「可愛そう」な大人たち。


辻斬りのように、七人と寝るべきなのか?
こんなにも世間と自意識世界が歪んでくると、
いったい何が正しいかわからず、
こんな風に委ねてしまってもおかしくない、
いいのではないか・・・と思ってしまう。
少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭 一樹

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「ありふれた魔法」盛田隆二


タイトルが、帯で隠れていて、
タイトルは「ありふれた」だと思っていた。
そしたら本当は「ありふれた魔法」で
しかもスピッツの曲のタイトルからの
引用だった。
ちょっとそれはおもしろくない。

「リアリズムの名手」と帯にあり、
確かに登場人物たちが仕事してるシーンは
「リアリズム」満載。もともとがだしね。
けど話の流れからいうと不満が多かった。

主人公の性格と、ラストと。
普通はこんなにさわやかに終わらないと思うが?
なにもかも壊して、
なにもかもを持っていって、
からっぽのなかに、
徒労感だけが残る、、
そういう暗いラストじゃないかな・・。

こんなに激しく恋に落ちるつもりはなかった。
だけど・・・
という風に書いてあるけど、
こんなの苦悩じゃない。
こんなの
「自分でもどうにもならない」ということ
を書いてるとはいえない。と思うし、

恋はそんなものじゃない
と思う。


不倫はそんなにいいものじゃない。
罰されて罰してしかるべきだと思う。
もっと苦しくてもっときつくて
もっとどうにもならなくて壊れてしまいそうになるんだ。
ありふれた魔法/盛田 隆二

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