彼女は事も無げに、上司の隣で見学を続けている。




一応挨拶をして、事前に伝えていた
今朝オペ見学のことを確認すると




はい、知ってました。でも、先生の外来を見学したかったので。





と、中々に強気な返事が返ってきた。




まぁ‥それならいいんだけど。



思う所はあるが、限られた時間の中で
興味のあることを優先的に学んで貰うのは
間違いじゃないし‥




上司をちらりと見ると、特にいつもと変わらない様子で淡々と診療を続けている。


用件だけ受け取って、それじゃ、お願いしますと
その場を離れることにした。






そうして、彼女は1日中、上司に着いて回っていた。
皆で一緒に食堂でランチをするとき
彼の隣に座る彼女はご機嫌だった。

その瞳はキラキラと輝いて、
上司の表情を伺い見たり、笑ったときに
軽くボディタッチ!迄して



まるで、ご主人様に気に入られたい一心で
フリフリしている子犬ちゃんだ




見学したいけど、彼に気に入られたいというのが本音なのかな‥?
さすがに女のわたしから見れば、
彼女の行動が意図したものであることには
気付く。




彼の方はというと、相変わらず表情ひとつ変えず
そんな彼女の行動を気に留める様子も無い。

だけど

若くて可愛い子犬ちゃんに付き纏われ、
内心少しは良い気分になっているんだろうか。
なんて‥



食事の後、自分のデスクに戻り
眠気覚ましのラテを飲みながら‥ぼんやりと考える‥




心が騒がない訳はない。
だけど、ただの嫉妬とも違う、複雑な感情だ。


子犬ちゃん、なんて人の事揶揄しているが
実際に飼い犬なのは、わたし自身だ。
わたしにも、あんな素直さがあれば‥と思う。



だけど素直じゃないわたしは、
彼への好意も、認めたくない感情も
ぐっと心の奥に仕舞い込んで
おくびにも出してやらない。

この胸の痛みすら‥快感に感じて
そうして、また彼との関係のスパイスにする。



わたしは、立派な飼い犬になります。




ラテを飲み干し、長く溜息をつく‥
白紙に戻して、午後に向かう。