専務さんは、私に深々とお辞儀をされ、私たちの車は駐車場を出た。
富士の山は、青空にくっきり聳えていた。
私は、微睡みの中、目が覚めた。
そこは夢にまでみた彼の懐だった。
彼は、私の髪を撫でながら
「ゆき、目が覚めたんだね。お腹空いたろう!お昼食べ損ねちゃったな」
私は頷いた。
時が止まることを祈らずに居られなかった。
ずっと このままで居たい。
彼も同じ思いなのか‥一向に動こうとしない。
「ゆき、ゆき‥」
私は彼の顔を見上げた。
「ずうっと、傍に居てくれないか。ゆきを こうして毎日抱いていたいよ。
僕は後、何度、ゆきを抱くことが出来るんだろうか?僕は、後 何年 生きられるのか‥
そう考えていると、ゆきに傍に居て欲しいよ」
「何、言ってるの~あなたは、ずうっと元気よ。長生きして、いっぱい抱いてね」
「分かった。ゆきを、もっともっと素敵な女にしてやるさ!」
別れの時間が迫っていると思うと、切なさが湧いてくるのである。
しかし、戻らねばならない。
「来月の予定がまだ立たなくて、ゆきには悪いが もう少し待ってね」
「大丈夫よ!新月を待つことにしましたから」
私は、彼に そう伝えて新幹線に乗った。
大阪までは二時間と少し。
私の乗っている新幹線に子どもたちを巧く乗せなくてはならない。
英には、本当に感謝してる。
私は、また、ここで母としての切り替えに戸惑いながら転換する術を身に付けるのだ。