「胃の具合どうですか?」
「随分良くはなったが、本調子ではないんだ」
「お肉は大丈夫なの?」
「いやっ、今日は少な目にしておくよ。ゆきは、沢山食べなさい」
「あなたが戴けるもので良かったのに‥」
「いいんだよ!ゆきに、此処のお肉を食べさせたかったんだよ」
一口食べて、彼がそう言ったのも解るような気がした。
一口食べると口の中で溶けていく上質のお肉に感激した。
しかし、彼は私の半分も食べなかった。
三鷹に営業所をオープンするために忙殺の日が続いているそうだ。
そんな大事な時期に、我が儘で彼を振り回してしまっていることに猛省した。
「ゆき、何かデザート食べようよ」
彼は、全く お酒を頂けない代わりにスイーツが大好きだ。
私たちは、丸太の橋を戻りホールに入った。
ラタンのテーブルがバランスよく配置され、椰子の木で仕切られた店内は、まるで南国ムードだった。
しかし、聴こえてきた生演奏は、確かロシア民謡だった。