私は、夫を依存症回復支援施設に入れたいと思い、ワンネスとダルクへ電話をしました。


電話受付はだいたい平日の日中なので、

私は仕事のお昼休みに電話をかけました。


午前中、会社では笑顔でバリバリ仕事をして、


休憩時間、外に出た瞬間に電話。


スーツ姿の方が行き交う東京のオフィス街で、


「夫が薬物依存症です、助けてください。」



会社では何事もない平気なフリ、

平和な家族がいる設定で会話、

これを何年も続けるのはキツかったです。


心の中で、

「もういやだ、何事もない平気なフリをすることがキツすぎる!」

と叫びながら、


でも”何事もない平気なフリ”をすることによって、

何とかやってこれた気もします。


 

同僚女性に、

「ねえ、アメリカ人の旦那さんって、

家事をやってくれたり、

何でもない日にお花をプレゼントしてくれたり、

『愛してる』とか『君は美しい』とか言ってくれるんでしょ?

いいなあ〜、うちの旦那なんかはさ〜。」


なんて言われたりすると、


内心、私は、お相手のご主人がうらやましかったです。

もう死ぬほどうらやましかったです。


働き柱のご主人がいて、

住宅ローンや車のローンが組めて、

子供の進学に私立の選択肢があり、

資産運用も、

「私はよくわからないから、もう主人に任せっきり。」


私には絶対に届かないような、安心感でした。


夫に守られている妻…

うらやましくて涙が出ました。



薬物依存症になる前に何度も夫が言ってくれた、

「僕が妻子を守る」


今は守るどころか、

夫が家族を崩壊させていっています。




何よりもうらやましかったのは、

コンビニなどにいる、よそのパパと子供たち。


「パパ、これ買って!」

とねだられ、

当たり前のように財布からお金を出す、どこかのパパが、とてもすごい人に見えました。





ところで…

私は元々フレンドリーな性格のせいか、よく他人と仲良くなります。


会社近くのコンビニやレストランの店員さんとはだいたい仲良しになってしまいます。


中でもよく行っていたお店のおばちゃんは、私がおいしいと言った付け合わせを、サービスで

「夜ご飯の足しにしなさい。」

と持たせてくれたり、

「午後も頑張って。」

とヤクルトをくれたり。


だから私もお土産を渡したりしていました。



しかし夫がこういう状況の時は、ランチタイムに人と会う余裕がなくなり、パッタリとおばちゃんのお店に行かなくなってしまいました。


「あのおばちゃん、寂しがっているかなあ…。」



それから数ヶ月後、お店に行くと、おばちゃんが

「あら、あなた!

どこ行ってたの?

心配したのよ。

行き交う人たちを見て、あなたがいないかな〜と探したり…。」



私は笑顔で、

「ごめんなさい、ちょっと色々とあって…。

でも大丈夫、また通いますね。」






するとおばちゃんは、


「そうよね…。

色々あるのよね…。


ここはね、あなたくらいの年齢のOLさんが多いじゃない?


いつも『おばちゃん、おばちゃん』って慕ってくるOLさんたち、

やっぱり突然、姿を見せなくなることがあるの。


そしてしばらくして、

数ヶ月後、はたまた数年後に、

ひょっこりまた来てくれて。


私が

『心配したのよ。』

って言うと、



あなたみたいに、

『おばちゃん、ごめんね。

ちょっと色々あって…。

でも大丈夫だよ。』

って。



色々あるのよね…。


大都会の大きな会社で、

ビシッとスーツを着て、かっこよく働くOLさんたち。


でもやっぱり、色々あるのよね…。」