東京、千葉、神奈川じゅうの精神科の大病院に電話をかけまくった私、


最後に予約が取れたのは、都立松沢病院という精神科の大病院。


明治12年に設立された、150年近い歴史ある精神病院です。

以前は、上野公園内にあり「癲狂院」という名称だったそうです。

(こわすぎる名称…)



明治からある歴史ある精神病院で、

かつ都立という名称だから、首都東京を代表する医療を期待できるだろう、と勝手に思いました。


それにおそらく都立の精神病院に勤務できる精神科医は、前述した「白衣を着た売人」のアホ開業医と違って、選ばれたエキスパートだろう、とまたまた勝手に思いました。



しかし若い頃、美容院だかどこかで読んだ「ルポ裏社会」のような漫画で、おもしろがって都立松沢病院に潜入したルポルタージュ漫画を読んだことがあります。


待合室の患者さんが、ヨダレをダラダラ流しながら幻覚を見て、うなっていた…と絵が描かれており、とても怖かったです。



病院の予約の前日は、

「明日になれば、きっと何かが変わるはず。

ああ、ここまで長かった…。」

と毎回、希望を感じていました。


しかし同時に、

「どうしようもならなかったら、どうすればいいんだろう…。」

と毎回、不安、いや恐怖も感じていました。


何故なら、薬物依存症という病気、

病気なのだから、医師に頼るしかないと思っていたからです。



仕事の午前休を取り、夫を連れて1時間以上かけて到着した都立松沢病院。


学生時代、京王線沿いにアルバイトに通っていた頃、京王線から眺めた都立松沢病院は、どんよりして見えましたが…



しかしそんな不安もなくなるほど、2012年に改装された都立松沢病院は、光が入り、キラキラとしていました。




…と思ったのも束の間、

待合室では、60歳くらいの女性が、ヨダレをたらしながら、

「あーん、あーん」

とあえぎ声を出していました。


病院ならではの造りで、待合室に響き渡るあえぎ声。

医師ではない私が憶測でその女性の症状を語るべきではないのですが、

やはり向精神薬の副作用は恐ろしいものではないでしょうか。


そんな恐怖を感じながら、夫と無言で待ちました。



そしてついに予約時間より遅れて、診察室に呼ばれました。


50代くらいの経験豊富そうな医師。


毎回、診察室に入るたび、精神科医を見て、

「もしかしたらこのお医者様こそ、何とかしてくださるかもしれない。」

と希望を持っていました。



さすが都立松沢病院の精神科医、英語も堪能で、私が通訳の必要もなく夫と会話をしてくださいました。


私も短い診察時間で、必死で頼みました。



「夫を入院させてください。」



「うちは急性期の患者しか受け入れられないんです…。

(病床数は、900床近いのですが、それだけ急性期の患者さんがいらっしゃるんですね…。)



「急性期とは、例えば薬で狂って暴れている状態ですか?

まさにそういう状態になりました。

警察も呼びました。」




「その時、警察からの要請があれば、何とかなったのかもしれませんが、それは警察の判断だったので、今となっては…。」




「じゃあ通院させてください。

何か薬物依存症を治すプログラムや療法はありますか?」




「薬物依存症を治すプログラムや療法はないんですよ…。」




「じゃあ毎回、先生にお会いできるだけでもいいです。カウンセリングはありますか?」




「カウンセリングもないんですよ…。」




「家には小学生の子供が3人います、お願いします、何とか助けてください。」




「通院は可能ですが、

向精神薬を処方しなければ、通院はできません。


しかも今日は初回だったので、長くお話しできましたが、

次回以降の診察の目安は、

3分程度。


診察内容は、

薬を飲んでいるか、

効いているか、

量を調整するか、

どうかの話のみになります。」




「夫は薬物依存症です。

向精神薬の処方は危険です。

向精神薬の依存症になってしまいます。」



すると…精神科医がとんでもないことを言ってきました。




「まあ、

市販薬に依存するか、

向精神薬に依存するか、

どっちを取るかですよね。




市販薬の依存は、フラフラと町中の薬局で手に入れるので、歯止めがきかないですが、



向精神薬の依存は、どれだけオーバードーズをしても、それ以上は処方箋がなければ手に入らないですし…。


まあ市販薬の依存より、向精神薬の依存の方が、まだコントロールしやすいかもしれませんね。」





正気ですか?



向精神薬の依存症は、覚醒剤より治療が困難といわれています。



向精神薬の依存症患者が、

クスリがなくなったら、

「ああ、なくなっちゃった。

仕方ない。

我慢しよう。」

となると思いますか?


運が良ければ刑務所行き、

運が悪ければ…



もういやだ。


そういえばアメリカで、カトリックの神父様がおっしゃっていました。


「精神病院に行ってはいけない。

精神病院に行けば、

ほとんどのケースで、依存症は悪化する。」


本当にその通りでした。





もう充分わかった。


薬物依存症は、

精神科医には頼れない。


むしろめちゃくちゃにされてしまう。


二度と精神病院には行かない。