クリスマスになり、


何故か夫に、

なかなか話をしてくれない夫の父。


私は焦っていました。


何よりも困ったことは、夫の父のガールフレンドであるペニーさんが、

ひたすら話し続けるんです。



「息子の同級生のジェイは、銃で自分の頭を撃って自殺した。



ブランドンは、ドラッグのオーバードーズで死んだ。」




アメリカのパンクロックバンド、

ザ・オフ・スプリングの歌詞

「The kids aren’t alright」のようなアメリカの実態。




ペニーさんの息子の同級生=夫の同級生が、

薬物のオーバードーズや、自殺で次々と亡くなっていました。


ペニーさんは、

「聞いてよ!

一緒にアメフトをやっていたジェイを覚えてるでしょ!

ドラッグのオーバードーズで死んだのよ!」


というノリでした。



あまり夫に、悲しい故郷の話をしないでほしい。


まさにオフ・スプリングのあの曲と同じように、



私たちが若い頃は、

地元も活気があり、未来もあった。

地元のみんな、元気だった。


貧困街のやばい通りの子供たちも


うちのめされずに成功できたし、

地元から虐げられはしなかった。



今じゃ地元は廃れ果て、

みんなも疲れ果てていれる。



大人になった子供たちは、

人生に疲れ切っている
。


どうしてあんな小さな地元が


まるで底なし沼のように沢山の命を飲み込んでしまうんだ。



投げ捨てられた可能性と、

放り捨てられ
た毎日。



「昔は良かった」とかつての地元を懐かしむ
も、


とても見てはいられない、

儚い人生を、砕かれた夢を


目にするのは辛い。


(歌詞を和訳しましたが、まさにこんな感じの話でした。)





それからペニーさんたちは、

腐敗したアメリカから逃げられる打開策だと思ったのか、


夫の父と、ペニーさん、

娘のコートニーちゃんは、


「私たちも、あなたの海外転勤にくっついて、

🇯🇵日本に行くわ!」



話を聞いてみると、

ペニーさんは、私の夫が米軍で高収入だと勘違いをしているのか、


日本で、

私の夫が

アメリカにあるような大きな家を借り、


そこでみんなで住んで暮らそう。





※ペニーさんの希望する

「みんな」の定義


夫と私と子供3人の家族

+夫の父

+彼女のペニーさん

+ペニーさんの娘




夢物語でした。


米軍は、もちろん結婚は自由ですが、


万が一、配偶者の私がドラッグに溺れていたり、はたまた北朝鮮のスパイで、実は米軍基地を爆破しようなんて考えていたら大変ですから、


結婚の後に


コマンド・スポンサー・シップ


という認定を米軍から受けなければなりません。

 


私は結婚後にこのコマンド・スポンサー・シップの認定を受けるのに、10ヶ月かかりました。



これは米軍が、私を危険人物ではない、

米軍の配偶者にふさわしい、と認定するものです。


ちなみに私は結婚してちょうど10ヶ月後に第1子が産まれたので、

夫は一生懸命、私のコマンド・スポンサー・シップが取れるように尽力してくれました。


米軍からいただける扶養手当や出産金の額が違うそうです。


しかしそれだけでなく、

コマンド・スポンサー・シップがないと、

夫の海外転勤についていくこともできず、

転勤先の米軍基地内の住宅に住むことはできません。


つまり家族が離れ離れになるのです。


日本の米軍基地にいた頃は、

レストランなどで、よく日本人妻のいる米軍男性に、夫は話しかけられ、こんな会話をしていました。


「はじめまして、ちょっと質問してもいい?

日本人の奥様のコマンド・スポンサー・シップは取れた?」




「今、頑張ってるよ。

妻は妊娠しているから、出産までには取らないと。」




「それは大変だね、間に合いそう?」




「僕は今の上官とは折り合いが良く、妻も上官にきちんと礼儀をわきまえているから、気に入られている。

だからうまくいくよ。」



一説には、上官との関係も大切だと聞きました。


私は日本人なので、夫の上官に出会ったら、


「主人が大変お世話になっております〜」

と「サザエさん」のおフネさん並みに低姿勢でした。


ちなみに「お世話になっております」という英語表現はなく、私が日本語をムリヤリ英語にするので、かなり奇異だったらしいです。笑い泣き


夫には、

「日本人妻の習慣だろうけど、やはりアメリカ式ではおかしいから、

お辞儀も『主人が大変お世話になっております』も言わなくていいよ。滝汗」と諭されました。



コマンド・スポンサー・シップを得るには、


健康診断や、

日本の警察署から私の犯罪歴がないかの提出などがありました。

(高校の時に、友達4人と1台の原付を4人乗りして、無免許運転で逮捕されましたが、あれは大丈夫だったのかな)





米軍の配偶者にふさわしい、と認定されるのは、実は難しいことではありません。


普通に生きていれば可能ですが、


逆を言えば、

ドラッグ依存性や犯罪歴などがあれば、コマンド・スポンサー・シップはもらえません。




更に、夫の父は、

当然、夫の配偶者ではありません。


特別な事情があれば、夫が夫の父を扶養に入れることは可能かもしれませんが、


まだ49歳で、しかも犯罪歴のある父親を、扶養に入れることを米軍は認めないでしょう。


加えてペニーさんは、夫の父の配偶者ではありません。


夫の父は、まだ法律上は夫の母と婚姻関係があります。


つまり、

夫の父と、ペニーさんは不倫関係。


家族でもないのに、米軍が扶養に認めるわけがありません。




しかし、

夫の日本転勤についていく気まんまんの、


夫の父と、

愛人のペニーさんと、

ペニーさんの娘。


ペニーさんは、中学生の娘に

「あなたは日本に転校するのよ〜🇯🇵」

という始末。



しかし、ペニーさんには、

あと

息子が2人います。


息子2人とも、

違法ドラッグで刑務所に収監されています。



ペニーさんの話す夢物語は、

夫の父と、

娘のコートニーちゃんとの

3人家族。



ペニーさんが語る夢物語の中に、

刑務所に収監されている2人の息子はいませんでした。




何だか他人の話でも、

それが悲しかったです。


私にも子供が3人おり、この子たちとバラバラになることは絶対に考えられないです。

一生、子供たちの近くで、子供たちの人生を見守りたいです。



ちなみに家族間の

「スープの冷めない距離」は、

実はアメリカの言葉です。


アメリカでは

子供の自立を促すものの、


やっぱり「スープの冷めない距離」に住みたい、

という感覚も強いらしいです。




ところで、ペニーさんの娘の中学生のコートニーちゃんは、人懐っこくて、とても可愛かったです。


夫の父にも懐いており、


コートニーちゃんが甘えて夫の父の膝の上に座ったりしていました。



私の夫はそれを見て、嬉しそうに、



「お父さん、良かったじゃん。

娘ができて。」

と笑っていました。


夫は優しく笑っていましたが、


内心はどうなのかな…。



例えば、

私の両親が不仲で別居し、

父が愛人を作り、

その愛人の娘と仲良くしていたとしたら?


そんなことを考えました。



すると…


複雑な表情をする私に、


夫の父が、


取り繕うように聞いてきました。



「り、凜?

どうした?


何だか元気ないじゃないか?」




そうです。


「はい、私は元気ではありません。


夫の薬物依存性を治したいんです。


お義父さん、

お願いします」