「お義父さん!?今、どちらに!?」





「最近、刑務所から出所したんだ。」





「そうだったんですか…!

それより今、大変です!


夫が『死ぬ』と言って、

もう24時間近く姿を見ていません!

こちらは雨風が強いです!」





「え!?」





「夫は市販薬をもう2年間も乱用し、

重度の薬物依存性です!」





「え!?」





「米軍はもうそれを知っています!」





「え!?」




夫の父に向かって、

いきなりとんでもないニュース3連発、

時系列バラバラチーン




「ルーク(夫のあだ名)に会ったら、僕に電話をしてくれ!」





「だから!会うも何も、死んでるかもしれないんですよ…」


私はその時、泣き出してしまいました。




「ああ、神様…。

凜、落ち着いてもう一度、家に戻ってみて。

息子は帰り着いてるかもしれない。」




私はまた運転をして、自宅に戻りました。




外から見たら…


電気のついていない真っ暗な自宅。



それでも祈る気持ちでドアを開け、リビングや寝室まで探しましたが、



やっぱりいない…。




どうしよう。




その時…



また電話が鳴りました。



今度こそ、



夫の

電話番号から



「もしもし!!」





「…ごめんなさい。」





「パパ、今どこ!?」




「もう怒らないでほしい。

〇〇通りの携帯電話ショップが空いていたから、事情を話してスマホを充電してもらった。」




私は慌てて、また来た道を戻りました。


夫は、24時間かけて、

43キロを歩きました。



携帯電話ショップに着くと、

お店の前で夫はしゃがみこんでいました。


見たことのないパーカーを着ていました。



「携帯電話ショップの人が貸してくれた。」



私はまず、携帯電話ショップに入りお礼を言いました。



パーカーを貸してくれた店員さんは、


「外は雨風が強く寒いから、ご主人に店内でお待ちするように伝えたんですが、


『濡れてるから申し訳ない』

と遠慮されたんです…。」




マジメな夫らしいな…。





「夫がお世話になりました、ありがとうございました。

お借りしたパーカーは洗濯して、明日改めてお礼に伺います。」

とお礼をお伝えしました。




車に乗ると、一番上の子供が

「パパ、

(新しいパーカー)似合うね!

それ好き?」


子供は、夫が見慣れないパーカーを着ていることに気づいてあげていました。




夫は子供たちに、

「ごめんなさい。パパが悪い、ごめんなさい。」と言うと、



子供たちはみんな優しく、

「パパ、寒い、寒い、ね(日本語)」


「ママ、パパ寒い。」


パパが濡れていることを心配していました。




私は

「お腹すいてるよね?まず急いで何か買おう。」




「食べたいけど、気持ち悪くて…。」




「あったかいスープとか売ってるお店を探すよ。」




すると夫がちょっと安心したように、嬉しそうに、ちょっと笑って、

「ねえ見て、このマフラー拾った。」





「…汚いよ(苦笑)」





「あとちょっとだったんだ。

ここまで来ればもう家が近いけど、さすがに靴擦れが辛くて。」





「まさか43キロ歩くとはね。

ひとり箱根駅伝ですか。」



もう口論は休止して、

ちょっと笑いながら、車を運転していたら、


電話が鳴りました。




「あ、そうだ!あなたのお父さんからだ!」





「…なんで?」





「最近、刑務所から出所したらしいよ。


…もしもし、お義父さん?

…はい、見つかりました!

…はい、今、隣にいます!

…はい、話したいですか?」





すかさず夫が、

「No!!」




スピーカーフォンにしていた為、お義父さんは、

「え!?

今、ルークは『話したくない』って言った?」





「うん、まあ…。」





「何でルークは父親の僕と話したくないんだよ?

意味がわからない。」




その言い方に、

夫が私のスマホを奪い、


「何だ!?」




するとお義父さんは、

「息子よ、聞いてくれ。

誤解だ。

僕は武器なんか持っていなかったのに、

恋人のマリーの車がデコボコなのを、僕の犯罪に上乗せされて刑務所に収監されて…。」






夫は、

「そんな話はどうでもいい!


一体いつまでこんなバカなことを繰り返すのか!


死ぬまでか!

依存性で死んでいくのか!」




(↑これ、

私がいつも夫に言っている言葉。ポーン)





「いや、僕だってお酒をやめたい、

何故なら…。」





すると夫は、電話口の父親に向かって、



「もうやめろ

やめろ!

やめろ!

やめろ!

やめろ!」



繰り返し、

「Stop it!!

Stop it!!

Stop it!!

Stop it!!」



薬物依存症になる前は、

いつも冷静だった夫の


悲痛な叫び声。




夫の



やめろ!

やめろ!

やめろ!

やめろ!


という悲痛な叫びを聞きながら、


私は…


それ、

夫に対する

私の気持ち


夫よ、

頼む。

思い知ってくれ。