「捨て犬の報酬」の本格的な稽古の前に。
過去の映像を覗いてみた。
今から約2年前に初めて演じた「捨て犬の報酬」
人生初の独り芝居。
笑えるほどに酷かった。
ただセリフを吐いているだけ。
リズムも間も強弱も何も伝わってこなかった。
据え置きの画質の悪いビデオだということを差し置いても、
果たして俺はあの時、本当にこの物語を伝えることができていたのだろうか?
30分の長台詞を覚えるということだけでも四苦八苦。
大変なことはわかっていたけど、万全の準備をして臨んだつもりだ。
ベストを尽くした!と思った。
でも、
その場に、存在することができないほど、余裕がなかった。
この映像からはそう感じ取れた。
今年の4月に島根で演じた一番最近の「捨て犬の報酬」
指先の動き、視線のやり方、間の取り方、リズムの取り方。
すべてのことが段違いによくなっていた。
約1年間で、セリフが身体に浸透し、
その役として、その場に存在できるようになっていた。
自分が思い描きたい「捨て犬の報酬」がそこにあった。
確かに、気になる個所はいくつかある。
これをこうすれば、こう変わるし、こっちの方が、こういう風に見えるから良いだろう。
それでも、これはこれで正解なんじゃないかと思う。
描きたい方向性は、変わっていない。
何よりも、素直にこの物語の良さを出したい。
凝った演出など必要ない。
シンプルに物語を伝えたい。
自分が一番最初に、この物語を読んで感じた、あの時の感動をそのままに。
この物語に触れる人に伝えたい。