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【前回のあらすじ】
夫が子供の前で大声での罵倒、私の首を掴みひきずったことで、こんな環境では子供達が健やかに育てることができないと思い、子供達と家出することを決意した。
夫が家を留守にしている間、私の母と一緒に生活する上で必要なものをキャリーケースや大きな袋に詰め、荷造りを行った。
車を自宅前に停車させるため、私の母と1番上の子供が先に家を出た。
私は下の2人の子供と一緒に沢山の荷物を携えて、玄関で車が停車したという連絡が入るのを待っていた。
そこで玄関の扉が「ガチャリ」と開き、現れたのは休日出勤したはずの夫だった。
突然現れた夫を見て、私は声が出なかった。
どうしよう…
まさか夫に出くわすと思っていなかったので、家出するとバレてしまった時の言い訳を考えていなかった。
正直に「あなたとこれ以上一緒に生活することなんてできません。」と言っても、
夫は取り合ってくれないどころか、
夫の逆鱗に触れ、また暴力されてしまう可能性もある。
あの時のことがフラッシュバックして、
夫が目の前に立つだけでも私の心拍数が急上昇していくのがわかる。
夫が、怖い。
この時の私は、頭が真っ白にななり
ただただ夫への恐怖心でいっぱいだった。
さっき私を守ってくれた子供の前に立つだけで、精一杯だった。
無言のままの夫と
様子を伺う私。
しばらく沈黙があった後、夫が口を開いた。
「…どこ行くんだ?」
「…私が行く間、子供達は実家に預けるから、その準備。」
「そっか。気を付けてな。」
夫は優しく声を掛けるどころか、荷物を半分ほど持ち車まで運んでくれた。
子供達に愛想良く「楽しんできてな〜」と手を振り、
私の母には「子供達のこと、よろしくお願いします」と軽く挨拶をした。
そして私に「まぁ、楽しんでこいよ。」と声を掛け、挨拶が終わったタイミングで母は車を発進させた。
DVをした後、優しくしたり謝罪してくるというのはよく知っていたが、これがまさにそうなのかと思った。
夫は仕事に出掛けたと思っていたが、恐らく気晴らしにパチンコにでも行ってきたんだろう。
少し時間を置くことで気持ちを鎮め、家に帰ってきたのだろう。
例え、夫が反省してどれだけ優しく接してきても、もう私の気持ちは揺るがない。
あの時感じた恐怖を、ショックを、
子供の反応も、すべて忘れたりしない。
ショッキングな経験は、心からなかなか消えない。
幸い、あの光景を見た子供はいつも通り遊んでいる。
先程の夫とバイバイする時も、嫌がらずに普通にバイバイしていた。
私はトラウマになってしまったが、
子供はそうではなくて安心した。