灰原くんの強くて青春ニューゲーム4
最初に本記事はネタバレと投稿主の主観が多く含まれた内容となっております。ネタバレ回避やご不快になられる方は閲覧非推奨とさせて頂きますあらすじ 夏休みの一幕を経て陽花里との距離が急速に縮まった夏希。その一方で詩からの積極的なアプローチも続き自分の気持ちに迷う中、夏希は夏休みの旅行で仲良くなった芹香からバンドに誘われる。 心から音楽を愛し「一緒に世界を変えよう」と絡んでくる芹香の熱意に絆され、文化祭ライブへと動き始める夏希。加えて彼女が作ったオリジナル曲の作詞を夏希が担当することになって!? 「この曲を、俺が好きな女の子に捧げます」 文化祭という青春の特等席で歌う夏希の想いが向かう先は――?レビューストーリー :★★★★★キャラクター:★★★★★イラスト :★★★★★その他 :★★★★総合 95点/100点内容(ネタバレ注意!)長いので面倒な方は飛ばしてください序章これまでの夏希に対する陽花里の独白から、この物語は開幕する。初対面時は素直にかっこいいと思っていたが、徐々に幻滅する。多分自分のことが好きなんだろうなと思いつつも嫌ではないので普通に対応。しかし、接しているうちに徐々に印象が変わり、意外な不器用さに対し興味が湧いていく。元々自分は学校のアイドル(予定)なので特定の恋人を作る予定はないが、告白されない程度に距離を縮め、夏希のことを知りたいと思うようになっていった。この時点ではハイスペックさと不器用さ、自信の無さからのアンバランスへの興味。だから竜也との一件を見ても今までは仮面を被っていたのだと腑に落ちた。その後、自然体で振る舞うようになっていった夏希が、以前は頑張っていたんだなと思えば可愛く感じられた。それからよく話すようになり、読書の興味が合うことで互いの共感を得られることが嬉しかった。映画デートの時も作戦は見抜いていた。でも、そこまで本気なら、と思える自分もいたが、そこで脳裏に浮かんだのが詩だった。詩は明言こそしていないが夏希への好意が見て取れる。だから自分が夏希と仲良くすることを快く思わないだろう。陽花里は元気をくれる詩が好きだ。ある程度演技でやっている偽物の自分にも力をくれる。ずっと友達でいたい。恋愛感情が友情を引き裂くなら夏希の好意を断るしかない。そう理屈では分かっていても心が浮き立ち、夏希に惹かれている自分を否定できなくなり、気持ちを抑え込もうとし、距離を取った。詩に元気が無くなった時、かかりきりな夏希の様子に複雑な気持ちを抱く自分の気持ちには気づかないふりをした。そのまま遠くから距離を縮めていく詩と夏希を見たまま、七夕まつりに一緒に行くと知ったときはショックを受けた自分がいた。そうはならないだろう、夏希は自分のことが好きで詩の好意を断るだろうと思う自分がおり、詩に対し優越感を持つ悪い自分がいた。だが、詩のような可愛い子に好意を寄せられ、気にならない男子などいない。その事実に気づくのが遅すぎた。もう周囲は早く付き合えばいいのにという雰囲気になっていた。だが、その時自分には暗い気持ちと共に安堵もあった。これで諦めると。諦めるという表現自体が出てしまうほど大きくなっていた感情を封印し、応援しようと決めた。夏の日、家族の問題で思い詰めていた自分を夏希は助けてくれた。会計を忘れたことを口実に心が弱っていた自分は夏希に縋った。夏希なら助けてくれるだろうことは分かっており、自分も精一杯な状態で余裕が無かった。すべてが解決した時、もう自分の気持ちが抑えきれないことを自覚した。星宮陽花里は灰原夏希が好きだ。そう認めざるを得ない。初恋だ。だが、想いを募らせるほど心が重くなる。夏希を好きなのは自分だけではない。詩は周りをよく見ている。自分の気持ちが変わったことにも気づいただろう。「決めた。わたし、詩ちゃんには負けないから」そう夏希に宣言し、もう自分の気持ちを誤魔化さないと決めた。覚悟を決めよう。詩ちゃんと、話をするために。第一章二学期が始まった。席替えにより夏希は所謂主人公席、そして隣には陽花里。雰囲気は甘く陽花里も気持ちを隠さなくなってきている。今日はバイトだと言う夏希に陽花里はバイト先まで一緒に帰ろうと誘うが、夏希は断ってしまう。気持ちの整理がついていないのに二人きりになることが怖い。陽花里も詩も積極的に誘ってくれるが、反射的に二人きりの状況は避けていた。嬉しいはずなのに恐ろしい。矛盾する感情が渦巻いていた。昼休み、校舎裏で一人で食事をしていると芹香と出会う。互いに悩みがあることを話し合いながら夏希は詩と陽花里を選べないことへの自己嫌悪と今後について話す。人に好意を向けられたことが無いことからの悩み。二人からということは一人を選ばなければならない。だから気が重くなってしまう。芹香は応えられない好意を向けられることは当事者にとっても割りと辛い、と返す。その上で振った後、友達でいられるとも限らない可能性を示唆しつつ、夏希の場合は同じクラスで同じグループだから大丈夫だとも話す。露骨にイチャつかれたら辛いがグループも大切だし自分の中で折り合いをつけるだろう、と。ただし、詩と陽花里は好意が重いこと、夏希は友情に対して重いことを心配しながら、後悔のないようにと元気づけるのだった。放課後、バイトにて同じ学校で同学年の新人バイト、篠原鳴を紹介される。陰キャな鳴に親近感を覚える夏希。彼がバイトに入った動機を聞くと、ベースと機材のためだと言う。軽音部に所属しており、十二人いる部員の中で三人だけ浮いてしまっている中の一人であること、その一人に芹香もいること、芹香の場合は技術力とモチベーションの高さから溶け込めていないことなどを聞くことができた。土曜、詩から美織と芹香を加えた四人でカラオケに誘われ、付き合う。点数勝負を吹っ掛ける美織に真っ先に拒否しつつナチュラルに煽る詩、乗る芹香と美織の性格を知っているから仕方なく付き合う夏希。まずは芹香だったが、その上手さに圧倒。次は夏希。ヒトカラの時に練習し、点の取れる歌い方を知っているが、それでは満足できず、思うように歌う。夏希の実力を知っていた詩と目を見張り驚く美織、対して芹香は真剣な表情で夏希を見ていた。点数では一点差で夏希の負け。芹香が告げる。「私、夏希のこと好きかも」「間違えた。夏希の歌声、好きかも」これには詩だけでなく美織も激しく動揺。それからは盛り上がり、楽しい時間を過ごす。カラオケを出たあと、詩から楽しかった、ナツと遊んだのは久しぶりだと言われ、背筋が凍る思いをする。陽花里に対してと同様、詩とも二人きりを避けており、それに気づかれていないわけがない。秋の始まりで肌寒い帰り道のなか、詩は告げる。もし、あたしの気持ちがナツの邪魔になってるなら、言ってね?振り向かせて見せるって言ったけど、ナツの幸せの邪魔をしたいわけじゃないんだ悲しげな淡い微笑を浮かべていた詩に、夏希はその表情を浮かべさせたのは俺だ、と一人ごちる。そんな夏希を見て、芹香は伝える。「詩は、きっと不安なんだよ。夏休み中、夏希が陽花里ちゃんと仲良くなっていくところを傍で見ているから。もう自分にチャンスはないんじゃないかって」「人に好かれるって、難しいよね」夏希は言葉を返すことが出来なかった。美織と二人で電車に乗っていると、落ち込んでいるところを見抜かれるが、美織に取り繕う気にはなれず、今ここにいるのが美織で良かったと思いつつ弱音を吐く。どうすればいい?と問う夏希に、出来ることはアドバイスだけだと返す美織。それを冷たいとは思わない。夏希はそういう美織が好きなのだから。美織は夏希が歌が上手いことに驚いており、ヒトカラで練習していたことを聞くと、本当に知らないことばかりだ、あなたのことは、よく知っているつもりだったのにと、寂し気にも悲し気にも見える表情でこぼす。美織は中学時代の夏希を唯一知っている存在であり、違和感を抱いているかもしれないと夏希は恐れる。だが。「だから、もっと教えてよ。今のあなたが何に思い悩んでいるのかも」と美織は寄り添うように言葉をくれるのだった。だから夏希は今の悩みを美織に話す。今までは美織に何でも相談してきたが、最近は二人のことが好きだという不誠実な自分の気持ちが人に許されることではないという気持ちから、積極的に話さなかった。これまでは能動的に居心地の良いグループと好きな女の子のために努力をし、充実した日々を送ってきたが、自分の気持ちが分からなくなってからは常に迷っている。二人の女子に好かれることは嬉しいことだし幸せだが、こんなことは初めてでどうすれば何も失わずに欲しいものを手に入れられるのか分からない。それを聞き、ニヤけつつ自慢かと言う美織に、そう思われそうだから美織にしか話せないと返す。謝りながらも、そこまで思い悩んで誠実であろうとするのは夏希らしいと前置きをし、怖いのだろう?と問う。ふらふらしていると二人の気持ちが離れていくと言いながら、その時は私が失恋の傷くらいは癒やすとも。一方怜太との進捗を聞くと順調であり、明日デートに行くとのこと。怜太に服を選んでもらうという美織に、自分も服を買わなければという夏希。もう私は選んであげないから、自分で何とかしなさい、と告げられ、その言葉が重く感じられた。怜太とのことを考え、一緒にいないほうがいいと言ったのは夏希であり、おかしな話ではないのだが、心に穴が開いたような思いだった。週明け、先生の頼みで教材を運んでいる途中、第二音楽室から圧倒的な技術のギターが聞こえ、思わず様子を見ると、それは芹香の演奏だった。芹香のギターが好きだという夏希は何でギターを始めたのかと芹香に聞く。芹香は、最初は普通にかっこいいから。父が元バンドマンで家にはロックが流れていた。そんな環境だから自然と弾くようになった。最初は難しくて何度も投げ出したが、徐々に出したい音が出せるようになっていったのが面白く続けられた、と語ってくれた。夏希はその段階に至る前に投げ出し、ギターは部屋の置物になっていた。芹香がギターを貸してくれ、試しに弾いてみると下手ながらも通して弾ける。共に歌う芹香はとても楽しそうだった。芹香は周囲から、よく分からない子だと言われていたこと、感情表現が下手なこと、ギターの音色だけが『私』を伝える手段だった。いつかはすごいバンドを組んで、自分で作った曲を弾くことが夢だと告げる。賛同する夏希に何かを言おうとする芹香だったが、その時音楽室のドアが開き、岩野健吾が入ってくる。しかし、夏希と二人でいるところを見て誤解しつつ帰っていく。岩野は二年生でドラムがかなり上手いらしい。先程芹香が何か言いかけていたことを聞こうとすると保留される。駅までの帰り道はずっと音楽の話をしていた。音楽が好きだ。特に、ロックが好きだ。灰色の青春を送っていた俺に、明日を生きる勇気をくれたから。翌日の昼休み、芹香に呼ばれる。何の様か聞くと、芹香は淡々として尋ねる。「私と一緒に、バンドやらない?」「本気だよ。私たちの音楽で、この世界を変えよう」混乱しつつ、何で俺をと問う夏希に色々あるけど歌声が好きだと芹香は返す。しかし、夏希は何かと断る理由を探す。それでも芹香は食い下がる。夏希なら信じられる。一緒に付いてきてくれる。本当は音楽をやりたいだろう?と。それは芹香の言う通りで、だから怖気づいている。芹香の実力に対し、自分への自信の無さから不安を抱いている。断るのは簡単だが、それでいいのか自問自答をする。誘いを断って最高の青春、後悔のない青春を送れることになるのか?「やろうよ、夏希。私は、夏希と一緒がいい」芹香は練習の後が見える手を差し伸べる。脳裏に過ったのは昨日の光景。ギターを弾く芹香の姿。音色に魅入られ、かっこいいと思い、純粋に憧れた。後悔のないように、芹香に言われた言葉を思い出し、夏希は芹香の手を取った。放課後、芹香と共に作戦会議を始める。まずはバンドメンバーを揃えること、最低限必要なのはドラムとベース。芹香と夏希にはそれぞれ心当たりがある。岩野と篠原だ。岩野には一度断られているが、夏希がいる今なら説得できると言う。それぞれが誘うこととなり、夏希は芹香と共にギターを買い、その日は解散する。夜、ギターの練習をしていると、陽花里から着信が入る。バンドを組むことになったことを知らなかった陽花里は少し拗ねており、弁明した。陽花里は文学ばかりでロックには疎く、試しに薦めてみたが反応は芳しくない。だが陽花里はそれでもロックを好きになりたいと言う。何故かと聞く夏希に、陽花里は告げる。「夏希くんの好きなものを、わたしも好きになりたいって思うから」同じものを見て、同じものを得られるのなら、その方が嬉しい。夏希くんが自分の好きな小説を読み、感想を共有できて嬉しかった。だから、自分もそう在りたい。陽花里にも好きな曲が見つかり、他の曲も薦めている夏希に、陽花里はどんな曲を歌うのか聞く。芹香のことだから、きっと俺の好きな曲だよと返す夏希に対し、「随分、芹香ちゃんのことを信頼してるんだね?わたし、普通に嫉妬してます」と直球の好意をぶつけてくる陽花里。同時に応援するとも伝えてくれる。「謎解き少女は恋を知らない」は新人賞に応募したらしい。夏希のバンドを楽しみにしてるという陽花里に対し、ハードルを上げるなと返す。そんな夏希に、そこは任せろ!と言った方がかっこいいと陽花里は告げ、夏希は反省する。落ち込んでいる様子に陽花里は可愛いなぁと笑い、嬉しくない。男としてはかっこよくなりたいと返答する。最後に陽花里は小説、夏希は音楽。互いに頑張ろうとエールを送り通話を終える。目指すものは違っても通じ合っている。せめてギターを弾いているときだけでも、自信満々に、迷いなく君を好きだと言えるような強い人間になりたい。そう思う夏希だった。翌朝、ギターを持つ夏希を中心に談笑。そこに陽花里が登校し挨拶を交わすが、詩と陽花里は神妙な雰囲気で違和感を覚える。居心地悪く感じる空気に唯乃が数学の小テストの話題を投げ、陽花里は寝ていたため知らず、詩は勉強していないと二人して嘆く。その時には元の雰囲気に戻っていた。分からない部分を聞きに来る竜也。彼は変わろうとしている。放課後、芹香が岩野を呼び出す。夏希がボーカルをやることに疑問を呈すが、とりあえず合わせてみることとなる。岩野のドラムは正確で力強く、芹香の実力についていける。夏希も歌いつつ最初はギターを使っていたが、ミスが多くついていけなくなったため、ボーカル一本に絞る。段々と生演奏の楽しさが分かりつつ、曲が終わる。岩野はギターはともかく夏希の歌声を認める。芹香は改めて岩野を誘い、夏希も同調する。岩野は今年いっぱいだと条件を出す。元々芹香の目標は文化祭であり、残り期間は一ヶ月半。死ぬ気で練習せねばならない。岩野は医学部に進学するため、来年から受験勉強に集中する必要がある。芹香の演奏には魅力を感じており、参加すればバンドを続けてしまうかもしれない。それを懸念した芹香は活動を文化祭までとし、岩野は引き受ける。残るは篠原の勧誘となった。二日後、喫茶マレスにて篠原とバイト中に芹香がやってくる。シフトが終わり、芹香と三人で話し合いを持つ。無事勧誘は成功し、バンドが成立する。間章1詩の独白。夏休み最終日、唯乃と陽花里と三人で遊んでいた。今年の夏休みは今までで一番楽しく、その理由は二つある。一つはグループの存在。詩は昔から友達が多く特定のグループに属することはなかった。しかし今のグループは居心地がいい。竜也は昔からの大切な友達。乱暴で言葉選びも悪いが、肝心な時は優しく、落ち込んでいる時は、いつも傍にいてくれる。怜太はいつも一歩引いた位置で物事を見ており、たまに何を考えているか分からないけど、自分たちが何かアイデアを出した時は彼がまとめる。自信が有りすぎるところが玉に瑕。唯乃はいつもクールだがたまに可愛いところを見せるのがズルい。怜太が男子の世話役なら唯乃は女子の世話役。まだ詩に見せていない顔があるので見てみたい。陽花里は高校に入ってから一番仲良くなった子。初対面時、奇跡のような可愛さの子が実在するのかと思った。性格も計算でやっているところもあるが天使のようで、話も弾み、ドジなところも可愛く、ずっと一緒にいてほしい。そして夏希は初恋の人であり、もう一つの理由である。帰り道、陽花里が詩に話があると誘う。詩も今日の本題がそれであろうことは気づいていた。唯乃は気を利かせ席を外そうとするが引き止められる。陽花里から夏希が好きであることをしっかりと詩の目を見据え、告げられる。言ってほしく無かった。明確化してほしくなかった。見ないふりをしていた。それと同時に先に詩が好きになったのに後からこういうことを言ったことを謝罪される。謝るようなことじゃない。好きになったのは同じだと、何とか言葉を絞り出す。こんな暗い口調は自分らしくない。もっと明るく振る舞わないとと思う。「負けないよ!だから、あたしに気を遣うのは、やめてね?」上手く言えてるか不安に思う自分に、陽花里は安心したように微笑する。「うん。わたしも、負けない」「どっちが勝っても、恨みっこなしだからね」「うん。その時は、できるだけいつも通りにするよ」「どうなっても、友達でいてくれる?」「……うん、約束」口約束だ。多分そう上手くはいかない。自分は夏希と陽花里が付き合っているところを間近で見ていられる自信はないし陽花里も同様だろう。だからこれは願いだ。自分は星宮陽花里が好きだ。恋愛感情を除けば夏希以上に。だから自分の恋が原因で友達を失うなんて結果は嫌だ。それでも夏希を諦められないから約束をしている。きっと陽花里も同じ気持ちだろうと思う。他人を心から信じられるなど思ったことは無いが、今だけは信じたいと思った。第二章芹香から譜面が行き渡り、練習することになる一行。芹香渾身のオリジナル曲である『black witch』最初は芹香がボーカルで流す。初めてにしては良く演奏できたかに思われたが芹香からは酷評。芹香に遠慮しすぎており、個性が消えているらしい。次は夏希が歌うことになったが、ボーカルとギターの併用が難しくミスが起きる。段々とリズムが崩れ中断。自分のせいだと思う夏希だが芹香からの指摘はなく、リズム隊の二人に注意が行き、二人も納得している。夏希はまだこれからなのだ。十時間近く練習し、その日は終了。意気消沈する夏希に芹香は何でも初見でこなす印象があったから新鮮だったという。篠原も比較対象が芹香なだけで十分上手いと評価する。まだバンドの名前が決まっていないと話している時に部活を終えた詩と美織に出会い、一緒に帰ることに。詩に初日の感想を聞かれ、自分が足を引っ張っているとこぼす。なんで頑張るのかと聞く詩に、良い演奏をしたいからと返すが、原動力やモチベーションが見えてこないと言われる。自問自答をすると、かっこいいところを見せたいからだ、と胸の内から答えが出てきた。無理はしないで、と心配する詩。今のままでも十分かっこいいと。嬉しい言葉ではあるが、詩らしくない気遣いだとも思う。解散時、芹香と美織は詩のことを健気だと語る。詩は自転車通学であり、自転車を取りに学校へ戻っていったのだ。モテるんですね、と尊敬しながら話す篠原に、夏希は好かれるより、好きでいるほうが楽だ、と返す。間章2怜太の独白。昔から他人のことがよく見え、大抵は予想通りの結果となった。失敗することが分かっているのに、なぜそうするのだろう?と幼いころは考えた。だが、失敗すると分かっているのは怜太だけであり、世の中の人間は深く物事を考えていない。そう気づいてからは世界が簡単に見えた。だから予想を超えてくる相手に興味を持つようになった。それは度を超えて馬鹿だった幼いことの竜也であり、能力に反して自己評価が低い夏希でもあった。こういう人間は見ていて飽きなかった。中でも一番は本宮美織だった。今まで何度か女子と付き合うことはあったが、恋心を持つには至らなかった。だから自分には人に特別な感情は抱けないのかと悩んだりもしたが、杞憂だった。美織の初見は特別可愛いというくらいで今までの女子と大差がなかった。だから定型的な断り文句で遠ざけようとしたが、美織はあの手この手で強引に連れ出した。怜太に似合う服を探す旅と言ったり、美味しいケーキ屋にどうしても行きたいとごねたり、元々行こうとしていた映画についてきたり、何にしても強引だった。夏希たちを利用したダブルデート計画なんていうのもあった。美織は頭が良く、人を見ている。自分が本気で嫌がったらやめるだろうし、自分が面白がっていることも見抜いている。その強かさも好ましかった。だけど中学時代、自分の曖昧な態度が原因で女子同士の仲が悪くなり、いじめが起きたことがあったので彼女を作るつもりはなかった。どんどん距離を詰めてくる美織にそれを話し断った。本音で話すほどに美織を気に入っていた。「今はいいよ、それでも」美織は首を横に振り、殻に籠もった自分を連れ出した。それは予想外の行動で、その背中に惹かれた。「怜太くんのクールな顔、笑顔に変えてあげるよ」これが恋だと気づくことに時間はかからず、初恋であり、成就させたかった。しかし今、美織は本人が気づいているかは不明だが段々と夏希に惹かれ始めている、怜太は自分に自信がある方だが、夏希と比べて魅力が勝っていると言えるほど自惚れてはいない。揺れている今のうちに決める必要があり、時間は自分の不利。そんな打算で動けるほどに美織を好きになっていた。幸いにも夏希は未だ迷っている。多分、本当は答えが出ているのに気づかないふりをしている。夏希は少し優しすぎるから、けど優しさが人を傷つけることもある。第三章一週間が経過し、『black witch』の目処が立った。次の曲もオリジナルにするかカバーにするかで相談をする。知らない曲ばかり演奏されても乗りづらい。それなら芹香の曲を知っている曲に変えればいい。SNSに演奏を乗せれば『black witch』は名曲だから興味を持ってもらえる。そこに芹香が提案をする。「それなら私のミーチューブチャンネルでも宣伝してみよっか?」登録者数四万人近くいるらしい。岩野は古参アピールでドヤる。チャンネル名は『可愛い女子高生セリカのギターチャンネル♡』色々ツッコミどころはあったがミーチューブに動画をアップするのはアリだと判断。SNSだとフルの動画は乗せられないので誘導も出来る。それなら文化祭の宣伝など無しでレコーディングした動画を上げてみることになり、篠原が自作し夏希が宣伝。芹香は作曲に専念することに決まる。文化祭のステージは十五分ほどで、三曲ほど。二曲目の候補は出来ており、テーマは「過去」とか「後悔」。歌詞はまだ途中。それぞれパート練習をしながら歌詞を考えることとなった。練習は十九時で終わったが夏希は居残り練習する。篠原と岩野は帰宅したが、芹香はアイスを買って戻ってきた。歌詞で詰まっている芹香は夏希に作詞をやってみるよう提案し、過去も後悔も今自分がここにいる基盤だから、と夏希は引き受けることにした。いざやってみると、そう上手くはいかない。悩んでいると陽花里から新作について相談があるとチャットが来る。作詞なら陽花里に相談出来るのではと思い、会うこととなった。陽花里と話していると周囲から可愛いと囃し立てるような声が聞こえてくる。目が合った陽花里を可愛いと褒めると、可愛いと言われるより綺麗って言われる方が好きだと照れ隠しをしながら真っ赤な顔で睨み肩をぶつけてくる。最近は暴力?で訴えてくる傾向が強い。バンド活動の調子などを話し、作詞について相談をする。曲を聴いてもらい、今までで一番しっくり来た歌詞を渡して見てもらう。陽花里からは、この歌詞が悪いとは思わないが、伝わってくるものがないと指摘される。自分の過去がどういうもので、何を後悔しているかも分かるが、それで何を伝えたいかが分からないという。※ここから歌詞について、今後について話し合いますが、陽花里が名言製造機となっています。是非本作をご購入ください。歌詞についてのアドバイスをもらると店員がパンケーキを運んでくる。食事を始める姿が可愛く、見つめていると、いたたまれない空気になる。陽花里から新作の相談を受けると、何の役にも立たなそうな助言をしてしまい、陽花里は笑っていた。門限に近づき帰り道。駅のホームで「頑張れ!ライブ、楽しみにしてる!」と叫ぶ陽花里に、今度は「任せろ!」と返すことが出来た。作詞が完成し、その曲には『モノクロ』と名付けられた。そして三曲目の話になり、夏希は三曲目の作詞にも立候補した。他にもまだ伝えたいことがあったから。練習はどんどん熱を帯びていく。楽しく居心地の良い時間。どんなに苦しくても音楽を作り続ける。まだ足りないが理想のクオリティに近づいてきている。練習後、ギターを弾きながら三曲目の歌詞を考えていると岩野がやってくる。岩野は夏希にバンドを始めた理由を聞く。すると夏希は色々あるけど、結局一番はかっこいいところを見せたいんだ、と答えた。好きな女の子にか?と付け加える岩野に夏希は頷く。岩野の理由はモテるためだった。このバントに入る前に三年のバンドに入っており、ドラムを教えてくれた師匠がいた。その人のことが好きだったが、最近彼氏ができたらしい。彼は文化祭のバンドで彼女の幸せを祝福したいと言いプレッシャーをかけてきた。それは夏希の人となりを理解しての行動だった。昼食を竜也と二人で取っていると、詩のことを聞かれる。最近は元気を失っており、それを竜也は見ていられない。夏希がふらふらしているから不安であり、隠そうとしているとも。謝る夏希に、夏希のせいではないと言いながらも「幸せにしてやれ」と言う。夏希は返す言葉を持たなかった。放課後はスタジオにて練習。夏希は芹香に三曲目の歌詞を渡す。悪くはないが、まだ肝心な要素が足りていない。ひとまず、これを元に曲を作ることとなる。夏希の愛が伝わる曲にしてあげる、という芹香に、やっぱり分かるよな?と聞くと、どう見たってラブソング。読んでいるだけで顔が熱くなる。青春してるね、と言われ、反論が出来ない。私は好きだよ、こういう青臭い歌詞、と前置きしつつ、タイトルを尋ねられ答えると、「大好きじゃん」と言われてしまう。未だバンド名が決まっていないメンバーに岩野が考えてきていた。『mishmash leftovers』寄せ集めの余り物。即決定だった。スタジオ練習が終わった帰り道、芹香と会話する。芹香は仲の良い友人と何度かバンドを組んで来たがモチベーションの違いで決別している。だから期限が決まっているのはちょっとだけ気楽だと言う。音楽に対しては真摯でありたいという芹香だが、才能があり、同じモチベーションを持てる仲間なんてそうそう見つからない。自分の演奏さえ良ければいいと思えず、口を出さずにはいられなかった。みんなで最高の演奏がしたかった。それなのに、このバンドはいつまで続くだろうと怖がった。その時傍にいる人と目指すもの、賭けるものが一致するなんて都合の良い幻想だ。一緒に走れる仲間が欲しいなら、自分で探すしかない。「……ねぇ。夏希は、私と同じ夢を見てくれる?」だから芹香は夏希を選んだ。「なに弱気になってんだ。らしくない」夏希はしおらしい芹香の背中を叩く。「俺たちの音楽で世界を変えるんだろう?」「明日も練習するぞ。俺たちの夢を叶えるために」夏希に音楽の才能はない。少なくとも芹香の才能とはかけ離れている。いずれ引き離されるのは分かっている。あの演奏に一目惚れした時から分かってる。でも文化祭までなら頑張れる。芹香と同じ夢をみるために。こうして夏希の黒歴史は増産される。間章3夏希の独白。あいつを幸せにしてやれよ、という竜也の言葉がずっと耳に残っている。自分の考えが甘いことには気づいている。歌詞を考えている間、自分を掘り下げていった。音楽で自分を表現しようとすれば気づかないようにしていたことにも気づく。逃げていただけだ。選択から、答えを出すことから逃げていた。その結果、必ずどちらかを傷つけることになるから。本当は『自分』が人を傷つけることが怖いだけ。自分は優柔不断な性格だ。正確には灰色の青春を過ごしてから優柔不断になった。大きな失敗をして臆病になり、何かを選ぶにも、その先に起こることを想定して、自分が何か下手を打っていないか確認する癖がついている。慎重と言えば聞こえはいいが実際は臆病者だ。結局自分に自信がない。誰かを選ぶということは、その人と恋人になるということ。人と付き合ったことのないハリボテの自分でいいのか?恋人という存在が現実味を増すごとにつれて問いかけが頭の中を駆け巡る。責任という重みがある。片思いの時は恋人という存在に現実味がないから楽だった。選ぶことも選ばないことも苦しい。偽装しても意味がない。本当の自分で答えを出す必要がある。だから悩んでいるふりをして結論を先延ばしにしてきた。でも、その行動が人を傷つけているなら、勇気を出してくれた人に気遣わせてるなら変わるしか無い。自信を持てる、かっこいい自分に。第四章文化祭の準備期間に突入。クラスの出し物はカフェ。夏希は接客担当で昼休みの準備に参加している。夏希がライブをやることはクラス中に広まっている。芹香によるとミシュレフの出番は大トリらしい。『black witch』のSNSは徐々に拡散されている。だが芹香は文化祭の間、自分のチャンネル名を変更することに決めたらしい。タイミングを見計らって『モノクロ』も投下した。評価は上々である。三曲目はライブにて!ということにしてあるが、まだ完成していない。芹香には今日が歌詞のタイムリミットだと宣言される。昼休み、屋上から街を眺めていると陽花里が声を掛けてくる。心配する陽花里に事情を話し、仮の歌詞はある程度納得できているものの、自分の弱さや迷いばかりが出てしまっていて、伝えたいことはそういうことじゃない、と伝える。何を伝えたいのかと聞かれ、「もっと、こう、俺は変わるんだ。変われるんだ。君のためなら世界を変えるんだ、みたいな意志を感じられる歌詞にしたい」と伝える。でも今更歌詞を変えるのも悪いかなと思ってる。今の歌詞も悪いものでもないとも。「駄目だよ、夏希くん」自分を納得させようとした時に陽花里は告げる。「変わるんだって、そういう意志を示したいなら、諦めちゃ駄目だよ」陽花里は怒っていた。真剣な瞳で見つめ、語りかける。「妥協したら、世界は変わんないよ」という陽花里の言葉には重みがあった。きっと陽花里自身が普段からそう思っている。「夏希くんが自信を持って歌える最高の曲にして、最高のライブをしてほしい」と言ってくれる陽花里に協力してもらうことにした。スマホで歌詞を見せ、一緒に考える。この曲のコンセプトがどういうもので何を伝えたいかを包み隠さず伝えて試行錯誤し、ついに完成する。結局あまり役に立たなかったという陽花里に星宮がいたから完成したという夏希。それはそうだけど、と呆れたように言う陽花里。夏希は飛び出すように出ていく。「こんな歌詞わたしに見せられても……どうしろって言うんだよ、ほんとにもう」陽花里は一人ごち、夏希は聞かないことにした。出来上がった歌詞は皆に受け入れられ、鳴には恥ずかしい歌詞とツッコミを受けた。文化祭初日、クラTを渡された夏希。1周目の時は背中に名前が入っていなかったが今回は「ナツ」と書かれていた。存在の薄い鳴のことが心配になり向かったが、鳴も無事に渡されていた…が忘れ去られそうになっていたらしい。クラスのカフェで接客。八割程度の席が埋まり盛況。夏希と共に完璧な営業スマイルの陽花里が対応している。陽花里に男子生徒が寄り付こうにも竜也が睨みを効かせ、牽制になっている。心配しなくても唯乃ママがしっかり面倒を見てくれるらしい。すると材料が足らなくなり、買い出しを頼まれ、自由時間であった詩も付いてくることとなった。買い物を終え帰る途中、静かな雰囲気が訪れる。今の雰囲気なら言える気がする。「なぁ、詩。俺、大事な話があるんだ」「うん。あたしもある」「でも、ちょっとだけ待って。今はまだ駄目」「ねぇ、ナツ。今日だけでいいから、文化祭、一緒に回ろう?」それから二人は色々なところを回った。黄昏色の空、五時間目の終わりを告げる鐘。校舎前の石段に並んで座り、片付け作業の様子を眺める。今頃クラスも片付けが行われており、全部撤収するわけではないが、参加する必要はある。「ナツ、聞いてくれる?」立ち上がったタイミングで詩がいった。普段は輝いている瞳が、なぜかぼやけているようにみえる頷くと詩も立ち上がり数歩歩いて振り返る。そこには向日葵のような笑顔があった。「あたしね、ナツのこと、好きだよ。大好き」この世界で一番に、と続ける。「だから、あたしと付き合ってください」生まれて初めて受けた告白。冷たい風が吹き抜けていく。自分より先に覚悟を決めたのは詩だった。ならば答えなければならない。佐倉詩という人間に好かれ、彼女に惹かれた人間としての責任を果たす。「ごめん。詩の気持ちには応えられない」「俺には好きな人がいる」未来のことを想像したとき、隣にいるのは詩じゃなかった。隣にいてほしいと願ったのは、昔からずっと、たった一人だけだった。ここからの二人の切ないやり取りは是非本作をご購入ください翌朝は眠りが浅かったのか早く目覚めた。一年二組の教室に向かう道中、廊下に知っている少女が立っていた。「いよいよだね」という彼女の目線の先には野外ステージがあった。今日は最初にして最後の本番。互いに聞いている音楽を語る。「やってやるぞ。俺たちが世界を変えるんだ」「うん、私に置いていかれないように、ちゃんとついてきてね?」こつんと拳を合わせ、挑戦的な笑みを浮かべる芹香が頼もしい。こうして文化祭二日目が始まる。全員が早めに集合し、音合わせを行う。本番への緊張ではなく、このバンドの終わりを惜しんで。だが、徐々に日が沈み、本番が近づいてくる。軽音部のステージは二日目最後。三組中、ミシュレフは最後である。準備をするテントに岩野の師匠が訪れる。岩野は師匠に彼氏が出来たことを祝福し、師匠のために最高の演奏をすると力強く宣言する。そうしているうちに、一組目が終了する。満足に練習をしていなかった彼らは悔しそうにしていた。二組目は部長のグループ。段々と客が集まり、彼らがミシュレフが目当てであることを理解している部長は自分たちを前座として見事勤め上げる。メンバーそれぞれがバラバラの理由で集まった寄せ集めの余り物が、芹香を中心にまとまる。司会の声が響き、膜が上る。まず見えたのはステージに溢れる大量の客。生徒だけでなく外部客も混ざっている。観客列の真ん中には、ほとんどのクラスメイトがおり、その中心に陽花里がいた。陽花里は胸の前で両手を組み、夏希を見上げている。夏希と目が合うと頷き返す。最後列の木陰では怜太と美織がいた。そして、詩と竜也の姿は見えない。ハイハットの音色が響き、演奏が始まる。1曲目は『black witch』下手なMCより演奏で魅せることを決めていた。ライブの高揚感にメンバーは酔いしれる。1曲目が終わり、メンバー紹介のMCを挟み、2曲目は『モノクロ』。モノクロになってしまった世界に後悔をし、変えてくれた皆に感謝を送る歌。演奏が終わり、残響が響く後に訪れる静寂。夏希は最後の曲紹介を行う。胸を張り、内心の緊張を悟られないよう、かっこつけて言う。「この曲を、俺が好きな女の子に捧げます。聞いてください-- 『星へ』」スローテンポで落ち着いた雰囲気。盛り上がる曲調ではなく聞かせる曲調に客はリズムに合わせて体を揺らす。観客の真ん中辺りを見ると、彼女の周りだけ妙にスペースが空いている。星宮陽花里は、穏やかな笑顔でじっと夏希を見上げていた。歌詞やバンドへの想いが綴られます。是非本作をご購入ください演奏が終わり、集まるメンバー。飛びついてくる芹香。「……夏希!」「私たちの、勝ち!」芹香はそう叫ぶ。帰ろうとしたステージの外では鳴り響くアンコールの声。もう少しだけミシュレフの時間は続くのだった。間章4詩の独白。とても切ないです。これも本作をご購入し、お確かめください第五章文化祭が終了し、クラスの打ち上げげ。バンドの打ち上げは後日に行うことに。もんじゃ焼き屋の6名席。藤原・日野・唯乃・怜太・陽花里の五人の席へ。バンドの盛り上がりを語る面々だが、陽花里は何も話さない。目が合うと顔を逸らされ、クラスメイトからの生暖かい目が注がれる。陽花里が緊張していると唯乃ママが頭を撫でる。バンド活動がこれで終わりだと話すと惜しむ声が周囲から溢れる。怜太に美織と一緒に見ていたことを聞くと、付き合うことになったと告げる怜太。一瞬思考が空白に染まったが祝福する。夏希の協力のおかげだと怜太は言う。少し息苦しくなり、店の外に出る。詩と竜也がいないことには誰も触れなかった。ここから本巻最重要シーンです。是非本作をご購入ください最初に報告する相手は決まっていた。着信に出た美織は妙に穏やかな声色だった。話していると違和感が増してくるが、美織が平静を装う以上は何も聞けない。美織は怜太と付き合うことになったと報告した。神妙な声音での報告は益々夏希の疑問を深める。喜んでいない。何かあったのか。自分は何か勘違いをしているのか。美織は泣いていた。その理由を聞こうとすると美織は被せるように話してくる。ライブが良かったこと。通話をしてきた理由が陽花里と付き合うことになった報告だろうということ。夏希は美織に協力を感謝するが、全てが予想と違う。もっとテンション高く盛り上がれるはずだと思っていた。確かに途中から様々な理由で協力し合う関係ではなくなっていた。しかし解せない。何かを決定的に間違っている気がする。美織はパートナーの解消を宣言し、これからは陽花里に支えてもらえと通話を切った感想また内容説明が長くなってしまいました。重要な部分をピックアップしようとすると、どうしてもこうなってしまうようで。・ストーリーについて今巻は雨宮先生によると、『選択』がテーマだそうですが、私は『青春』そのものでも良かったと思っています。音楽にかける青春、恋に悩む青春、そういったものが今巻では凝縮されていました。文化祭というイベントを利用していますが、クラスの出し物描写が少なかったのは焦点を当てるべきポイントが最後のバンドだったため已む無しと言ったところ。今回は各章の間に陽花里・詩・怜太・夏希の心情が語られました。作中でキャラクター視点を切り替えながら進める作品が多い中、こういった作風も良かったと思います。内容によりけりですが、主人公の一人称視点で進めた方が読みやすい作品もありますし、本作もそうだと思っています。また、内容説明には載せていませんが、作中で様々な現存しているバンドや曲名が出てきます。どれも名曲ですので、是非視聴していただければと思います。・夏希について悩み多き主人公である夏希。外面的能力はハイスペックでも内面は1周目の失敗から弱くなり、自信を失っています。そんな夏希からすれば、何でこんな美少女が二人も好きになってくれるの!?嬉しいけど、どっちか選ぶなんて無理!これなら片思いの状態の方がよっぽど楽だよ!と言いたかったでしょう。自信がない上に誠実だから物事を深く掘り下げ、余計なものまで抱えてしまう。二人を気遣うあまりに選択を長引かせてしまいました。それでも数多ある恋愛作品の中では相当に早いですが。今回、そんな袋小路にハマっていた夏希を救ってくれたのが芹香であり音楽です。自信を失くし逃げていた夏希の手を強引に掴み、自分のワガママに付き合わせた芹香。でも、そのワガママであるギターと音楽に夏希は惹かれていました。元々1周目で孤独だった夏希を癒やしていたのはロックです。ギターこそ挫折していましたが、その事実は揺らぎません。今回は「強くて」要素はほぼ歌のみでギターは努力で補いました。作詞にも挑戦し、その成功には陽花里が大きく関わっています。間章で怜太が推測したように、おそらく夏希は今巻初期の時点で陽花里を選ぶことを決めていたけど、詩を傷つけることを恐れ、そこから逃げていたと思われます。しかし歌詞の作成を陽花里に協力してもらう内に陽花里の強さに触れ、決意をしました。結果、陽花里と恋人となりますが、対人経験値が少なすぎる夏希が恋人と、振ってしまった友人と、すれ違った相棒とどう向き合うのか楽しみです。・陽花里について前巻にて学校のアイドル(自称)も笑いましたが、今回の(予定)でも笑いました。ともあれ、陽花里はかなり早い段階から夏希に興味を持ち、惹かれていたことが書かれています。しかし夏希同様に友情と恋愛を秤にかけ、当初の陽花里は友情を選択していました。夏希とは仮面を被ることや、友情に重きを置くことなど似ている要素が多いです。だからこそ夏希に惹かれ、前巻の事件で後戻りが出来ないほど、想いが強くなったのでしょう。そして決意してからの陽花里は強かった。詩に宣言し、夏希の隣に立ち、時には叱咤し、背中を押す。かっこよく在りたいと望む夏希に、かっこよく在れと励ます陽花里もまた、かっこいいです。そこには最早天然ゆるふわアイドルの面影はありませんでした。強い。夏希は陽花里との恋人生活に不安を感じていますが、高校1年で初恋で成就して、初めて付き合うのだから、失敗が無いはずはなく、理想を求めすぎています。陽花里だって同じはずなのですから、そこは支え合って幸せになって欲しいですね。・詩について今回、失恋を経験してしまった詩ですが、夏休み最終日に陽花里に宣言された時点で諦めてしまっていたようにも見えます。元々詩は夏希が他の誰かを好きだと知っていながら好きになっており、振り向かせるよう頑張っていましたが、夏休み中に一気に距離を詰めた陽花里に引け目と不安を感じてしまったと思われます。そして振られてしまった後に落ち込んでいくだろう自分を助けてほしいと願ったのが間章で陽花里と交わした約束なのではないかと思います。失恋したからと言って夏希も陽花里も大好きなことに変わりはないと信じたいのが詩なのですから。今後、詩に対するキーパーソンは竜也と陽花里であると思うので頑張って欲しい。・芹香について今巻のヒロインとも言える芹香。周囲から何を考えているか分からないと思われていて、自分の感情を音楽で表現したい。音楽を通じてかっこいい自分で在りたいと強く願う、ロックに生きるギャル。チャンネル名はどうかと思うよ?可愛いのは認めるけどw 技術・モチベーションが共に高く、付いてこれる人がいない。そんな彼女が求めたのが夏希であり、今巻の骨幹となっています。岩野こそ脱退をしましたが、夏希も鳴も軽音部に在籍しています。彼らを通じて、どう交流していくのか、新たなバンドを組むのか。それ以外にも夏希と美織の関係に踏み込むのかなど今後の活躍が期待されるキャラです。・怜太について1巻から私の中で好感度が低いというか、嫌いではないけど不気味なキャラ認定をされてしまっているのが怜太です。今巻でその傾向が更に強くなりました。というのも、間章を見ていただけば分かる通り、洞察力がずば抜け過ぎて、登場人物の中では異端に思えてしまいます。更に、赤線を引いた箇所があるのですが作中に1回も描写がありません。これは意図的なのか、行間を読んでほしいという作者様の要望なのかが読めません。もし意図的なのだとしたら、怜太にもタイムリープ説が浮上します。逆にタイムリープ説を採用すると色々腑に落ちます。ただの有能キャラなのか、それとも何らかを抱えたキャラなのか…。・美織についてうーん。詩も可哀想なんですが、それ以上に可哀想に思えるのが美織です。ただし、美織の場合は自爆であり、自業自得な部分があることも否めません。最初が軽率であり、その後全てが遅すぎた。それが美織の現状です。今までの夏希は美織の本心に気づいていませんでした。それは美織の演技の上手さであり、夏希が美織を無条件に信頼するが故のことです。しかし、そんな夏希でも、そろそろ美織の現状に気づき始めています。このままでいることが美織にとって本当に幸せなのか?そうでないとすれば、どう行動するべきなのか。美織にとって今は完全な袋小路であり、どう抜け出すのかが見ものでもあります。ちなみに、BOOK☆WALKER様の特典にて海水浴場での陽花里の心情が見れます。もし、まだお買い求めでない方がいましたら、ご一考ください。次回、5巻は夏。おそらく7~8月だと思います、今から楽しみで仕方ありません!