りーたん劇場~劇団と読書と時々リアル~

著者:坂木司(敬称略)


初めて読む坂木作品である。

コミック化もされている作品で、坂木氏の作品の中でも知名度は高いのではないだろうか。


元ヤンでホストのヤマト、本名・沖田大和の前に、突然現れた少年・神保進。

少年は大和に会うなりこう言った。

「初めまして、お父さん」

父親が生きていることを知り、進は家出をして大和に会いに来たのだ。

ホストクラブで起こしてしまった事件で、大和はホストを辞し、宅配便の仕事をすることになる。

こうして元ヤン元ホスト・大和と、実の息子で大人びた少年・進の、ひと夏の物語が始まった。


簡単なあらすじである。


ありがちなストーリーだが、作者独特の言語センスと巧みなセリフ回しで、

とても新鮮な気持ちで読めた。


ところどころに表れる元ヤン設定も最大限に活かされ、

沖田大和という人物をより個性的に彩っている。


と、ここまで書いて気付かれた方もおられるだろうが、

主人公の名前は「沖田大和」。

名前の由来はおそらく、いやたぶん間違いなく、

「宇宙戦艦ヤマト」と同艦初代艦長・沖田十三であろう。


本編内で名前についてはまったく言及されていないが、

こういったあたり、詳しい人が読むとニヤリとしてしまうはずだ。


隠し味の加え方も非常に巧い。


それなりにページ数はあったが、とても読みやすかった。

ある程度読書をしてきた人なら、すらすらと読めてしまうだろう。


坂木作品に惹かれたので、もっと坂木氏の作品を読み漁ってみようと思う。

そう思える作品だったと言える。



さて、ここでひとつお知らせが。

知っている人も多いかもしれないが、

これまでの読書レビューはすべて、1冊で完結するものばかりだ。


実は、別の作品でかなりの冊数を読んだのだが、シリーズ物はレビューを書いているとキリがない。

ので、省いている。


レビューとは別に、今まで読んだ本をエクセルファイルに記録しているので、

筆者の読書記録を見たい人は、

声をかけていただければ、スカイプでお渡しする。



そして次回もまた未定だ。

おそらく宮部みゆきの「ICO」だとは思うが、

まだわからない。


では、また次回。


りーたん劇場~劇団と読書と時々リアル~

著者:有川浩(敬称略)


ずいぶん前に読み終わったのだが、なんとレビューを書いていなかったので、書いておこう。

宝塚―西宮北口間の8つの駅を舞台とし、様々な乗客たちが織りなすエピソードを、全16話、つまり1往復の間で描く。


何となく乗っている電車の乗客たちが、わずかな偶然から絡み合っていく。

たかが電車でよくここまで書けたものだ、

と感心せずにはいられない。


心温まるエピソードや考えさせられるエピソードなど、バラエティに富んでいる。

まったく違った話が絡んでいく描写は秀逸。


映画化が発表され、来年初夏に公開が決まっているが、

是非とも見に行きたいと思う。


有川氏の本領発揮ともいえる作品だ。

是非みんなに読んでもらいたい。


りーたん劇場~劇団と読書と時々リアル~

著者:有川浩(敬称略)


乙女だってオタクだっておっさんだって自衛官だって

ベタ甘ラブで何が悪い!


と、素敵な言葉が帯に書いてあった本作品。

帯の背表紙の部分には「有川浩」の隣に「最強恋愛小説家」とまで書かれている。

間違ってはいないが。


本作は「クジラの彼」と同じく、自衛隊ラブコメの集大成といえる短編集であり、

表題でもある「ラブコメ今昔」を含む六つの短編が収録されている。

今回も「クジラの彼」と同じく、それぞれを別作品とみなしたうえで、少しずつ感想を書いていく。


・ラブコメ今昔

表題にもなった作品。

陸自ベテラン二佐の夫人との馴れ初めと、それを追う若き自衛官2人が織りなす、二色の恋愛模様である。

時代とともに恋も移り変わるもの。

有川氏の描く恋愛は、そんな移り変わりをも完璧に表現している。

見事だ。


・軍事とオタクと彼

遠距離・オタク・草食系男子と、現代恋愛の要素がふんだんに盛り込まれている。

このオタク海上自衛官の彼氏、けっこう筆者と趣味が似ているかもしれない。

ちなみに解説しておくと、作中で出てくる「コーカサスカブト」であるが、正しくは「コーカサスオオカブト」であり、

コーカサスオオカブトをモチーフにした仮面ライダーは、「仮面ライダーカブト」に登場する「仮面ライダーコーカサス」しか存在しないのだが、

仮面ライダーコーカサスが登場するのは、「劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED OF LOVE」だけなので、

日曜に一緒に起きて見た、というのは一致しない。

有川氏には珍しいミスだが、何か意図があるのだろうか?


・広報官、走る!

これも海上自衛隊のお話。

「広報に必要な適性は女ったらしであることだ!」

というぶっ飛んだ一言で始まる。

であるが、これも正当なラブコメであろう。

見事だ。


・青い衝撃

「青い衝撃」は英語に直せば「ブルーインパルス」。

ブルーインパルスとは航空自衛隊松島基地第4航空団第11飛行隊の愛称であるが、

本作「青い衝撃」は、ブルーインパルスのパイロットを夫に持つ女性がメインに描かれている。

ファンって、女って怖いね。

と言わざるを得ない内容である。


・秘め事

上官に隠れてその娘と恋愛関係になる、というのがどれだけ恐ろしいことか、みなさんには想像がつくだろうか。

これも航空自衛隊であるが、自衛隊の中で航空が「死」に一番近いところにいるということを、

再認識されられた。


・ダンディ・ライオン~またはラブコメ今昔イマドキ編

「ラブコメ今昔」に登場した若い自衛官男女の交際の始まりを描いた作品である。

うまくループになって、いい感じだ。

漠然とした表現しかできないのが悔しいところではあるが、

それしか言えないのだから仕方ない。


以上である。

やはり有川作品は読んでみて、としか言えない。

読んでみてください。


さて、次回レビューはおそらく、坂木司の「ワーキング・ホリデー」になるだろう。

坂木作品初挑戦ということで、楽しみにしている。

では、また次回。