瞽女口説地震之身之上(翻刻)<承前> | 京都盲唖院・盲学校・視覚障害・点字の歴史

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視覚障害教育の歴史を研究しています。京都盲唖院、古河太四郎、遠山憲美、鳥居嘉三郎、石川倉次、好本督、鳥居篤治郎、小野兼次郎、斎藤百合、エロシェンコ、楽善会、雨宮中平、点字

尼の三 ( ヱ ) 子もちのにほひ 朝のつとめハ お小僧斗

のつとめハ かねうつ斗 昼夜小めくり 御布施をむいて
酒とか碁て 寺役をわすれ 居間柱の 状さし見れハ
様ハ丸ま ぞんじよりと にのついたる かなふミ
門徒寺衆ハ 利欲にふけり くわんけ一座に ほうしや四五ど

祖師のほうじや 自坊の法事  ( タゝミ )やねへ 造作普請 ( フシン )

嫁をしつける つきめをすると 後生ハ二の次 先其事に
旦那あつめて 身がつて斗 奢り相談 くわん金さへり
法事しいの 咄をきけば こんど法事ハ 時節がわるい
参詣不足で まふけがないと 祖師の法事を あきなひらしく
人目はちずに 咄をめさる 後生しらずの じやけんな者も
金を上ケれハ 信心者とて 住寺ごりよんの あしらいちがう

なんぼ ( シン )心 りやうけの人も 金を上ケねハ けだうじやなとゝ

葬礼おさへる 宗判せぬと 上をおそれぬ 法外斗
寺が寺とて 同行共も 御講もとりの 咄をきけバ
うとこしうとハ 嫁聟そしり 嫁やハ 舅のざんぞ 
そして近年 安心まへも いたこ長うた 新内なとを
ませて語にや 参りがないと 寝ても起ても 欲心斗
まかせの ぢいばゞたちも あちらこちらて すゝめがちがひ
れが誠か 迷ひはれぬ 後生の大事ハ 頼す方と
すゝめなからも 旦那をよせて 金の無心ハ 御頼方よ
口へ出すハ 自力のたのミ 口へださねバ がいけにそむく
より合たの さうそくなどゝ 知りもせぬこと うかべたやうに

のもわからぬ 後生をもだき はてハ ( タカ )に いさかひはかり

中に見事な りやうけをいひば 両刀つかひと ミやうもくつける
うそか誠ハ 死なねハしれぬ わけてつまらぬ 法花の教へ
蓮花往生て しくじりながら いまたまよひの 目がさめぬやら
他宗そしりて わか宗じまん あまりをしへが かたいぢ故に
ひろいうき世を 小せまくくらす 仏きらひの 神道衆も
和学神学 六根清浄 はらひ給ひと 家財をはらひ 清め給ふと

身上 ( しんしやう ) ( あら )ふ 口のふしやうハ けかれた物を のますくわねバ

いひわけたてと むねと心ハ 只もろもろの 欲と悪との

不浄で染る ねきの ( シヤ )家しやの 神主なとも 神の御末 ( ミすえ )

身ハ高ふれど 冨をするやら あやつりかぶき まやしあつめて 
山事斗り 祈祷神楽も 銭からきめる 夫が神慮に かなふかしらん
わけてにくゐハ いしや衆てごさる となり村へも 馬かこもたき
しれぬ病ひを のミこみ顔に 少しやうだい わるいと見れハ
人にゆつりて 己レははづし さじの先より 口さき上手

しろとたましの 手からをはなし 金匱 ( きんき )要略 ( やうりやく )  ( しやう )寒論 ( かんろん )

いしふんに 習ふた斗 たまに取出し 婦くして見ても
やミの烏で わからぬ故ニ きかずさわらぬ 薬の数を

たんと ( のま )して 衣服をかさり 礼の多少て 病気をつかひ

病家見舞も うけむけ立て らやせとやハ 十日ニ一と
金になるのハ 毎日四五度 されハゐしや衆の をきてといふハ

銭や金にハ かゝはるましく 人をすくふが  ( をしへ )の本と

道のいましめ 守らぬわけハ  ( よく )がふかふて んもふ ( ゆへ )

あんま取迄 夫見習ひて 近い頃迄 上下もんて 
廿四文が 通用なるに いつの程にか いづくの町も

やがて八文 ましたるかわり ちからいれすに 手拍子 ( びやうし )はかり 

すこし長いと なかまがにくむ 又ハ婚礼 法事の ( せキ )

ゆすりがましく 大勢つめて 祝義くやうの 多少をねたり
ならぬ在ハ 手あまるうわさ されば一々 さかして見れハ
士農工商 儒仏も神も くとくことばに ちがひハあらじ
天のいましめ 今よりさとり 忠と孝との 二ツの道と

( をのれ )おのれが 職分守り 上に居る人 下あはれミて

に居る人 上敬ひて 常にけんやく 慈悲心ふかく

奢る心を 慎しむならハ かゝる稀代 ( きたい )の  ( へん )事ハあらじ

かゝるこんきよも あるまい物ぞ さらば仏も 天道様も
恵ミ給ひて 只世の中ハ 末世末代 波風たゝず
四海太平 諸色もやすく 米も下直に 五穀もミのり
地震所か 町在共ニ 子孫さかゆ 末繁盛の

基なるへき ためしを上て 語る此身も  ( ツミ ) ( フ )きやら

地しん潰れの 掘立小屋に しばし篭りて 世人々の
穴とくせとを 書 ( しるし )おく 筆の命 ( け ) おそろしや

※ ブログ管理人所蔵『天保十四癸卯弥生吉日 奥田氏蔵版』
※ 版元 きまゝやひま右エ門 泣和津地声太夫版とは異なる箇所あり