「ずっと着ける結婚指輪だから、一番頑丈な素材で作りたい」
「結婚指輪の素材の丈夫さについて比較をして欲しい」
また、
「細い指輪にしたいので、丈夫な素材はどれですか?」
という声をいただきました。
そこで今日は、結婚指輪の素材の丈夫さについてお伝えしたいと思います。
店頭では、デザインはこれだ!、流行はこれだ!、とか、こうすれば指が細く見える、というような新品の状態の良し悪しに目が行きがちですが、本当に大事なことは一見、目に見えないもの。
長い目で見て、ずっと身につける本人にとって大事になるのは、最終的には素材の良さ。地金だって石だって、そうです。
うわべのデザインに悩むより、素材について真剣に考えてほしいと思います。
また、細い指輪を制作する場合などは特に、素材の丈夫さの違いが如実に現れますので、細い指輪をご希望の方にも、この素材の丈夫さの比較は、役立てていただけるはずです。
それでは、結婚指輪の素材を網羅して、比較をしてみたいと思います。
ちなみに、丈夫さというと硬さ、脆さ(耐衝撃性)、破断強度、耐摩耗性などの複合的な要素の兼ね合いになるので単純ではないのですが、まず硬さ(硬度)を比較すると、想像がしやすくなるのではないかと思います。
素材の硬度一覧
以下、弊社でジュエリーの素材として扱っているものを、大まかにビッカース硬度が低いもの(柔らかいもの)から並べてみます。
純金 HV20~30
純プラチナ HV20~30
純銀 HV20~30
プラチナ900パラジウム100焼鈍 HV40
プラチナ900パラジウム100鍛造 HV40~HV70(鍛造度に応じて)
プラチナ900イリジウム100焼鈍 HV50
プラチナ900イリジウム100鍛造 HV50~HV60(鍛造度に応じて)
プラチナ950ルテニウム50焼鈍 HV50
プラチナ950ルテニウム50鍛造 HV50~HV100(鍛造度に応じて)
22金グリーンゴールド焼鈍 HV30
22金グリーンゴールド鍛造 HV30~40(鍛造度に応じて)
22金イエローゴールド焼鈍 HV50
22金イエローゴールド鍛造 HV50~60(鍛造度に応じて)
22金オレンジゴールド焼鈍 HV50
22金オレンジゴールド鍛造 HV50~70(鍛造度に応じて)
14金ピンクゴールド焼鈍 HV70
14金ピンクゴールド鍛造 HV70~100(鍛造度に応じて)
シルバー950焼鈍 HV50
シルバー950鍛造 HV50~HV70(鍛造度に応じて)
シルバー925焼鈍 HV70
シルバー925鍛造 HV70~HV100(鍛造度に応じて)
バナジウム鍛造 HV140前後
ニオブ鍛造 HV140前後
タンタル鍛造 HV150前後
チタン2種鍛造 HV180前後
ジルコニウム鍛造 HV180前後
ハフニウム鍛造 HV200前後
サージカルステンレス(SUS316) HV200前後
SUS304 HV200前後
SUS440C焼鈍 HV200前後
SUS440C焼入れ HV500前後
イリジウム HV450前後
ルテニウム HV500前後
ロジウム HV400~500
レニウム HV400~500
タングステンカーバイド HV1700以上
たとえ硬くても、脆かったら丈夫とは言えない
硬ければ丈夫か?というと一概にそうとは言えません。
脆い金属(展延性のない金属)は、強い衝撃が加わった際にパリンッ!と割れてしまったり、欠けてしまったりします。
上記の一覧の中では、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、タングステンカーバイド(タングステンの指輪は正式にはタングステンカーバイドです)は、展延性がなく比較的脆い性質を持っています。
また、展延性のない金属は、指輪のサイズ修正もできません。
ですので、脆い金属は丈夫さという点ではやや不安があります。
鍛造は丈夫なのか?
上記の一覧をみてもわかる通り、鍛造した地金は、焼鈍した地金(鋳造した状態と硬さはほぼ同じ)に比べて、硬度が高く、丈夫であることは確かです。
ただし、鍛造プラチナと言われているものは、プラチナ900パラジウム100では最大でもHV70程度、ハードプラチナと言われるプラチナ950ルテニウム50でも最大でHV100程度です。
なので、鍛造といっても、鍛造プラチナも鍛造ゴールドもそこそこの硬さだと考えた方がいいです。
ステンレスは金属アレルギーに注意
上記の一覧で、サージカルステンレスやSUS304は硬くて丈夫ですが、合金組成としてはサージカルステンレスが鉄×クロム×ニッケル×モリブデンの4元合金、SUS304が鉄×クロム×ニッケルの3元合金なので、どちらもニッケルが含まれており、金属アレルギーの方は要注意です。
ちなみに、軍用ナイフなどに使われるSUS440Cは、鉄×クロム×炭素がメインでニッケルはわずかにしか含みません。焼入れを施すと非常に硬くなるので、上記の中でも最強と言えます。ただし鉄系合金なので耐食性はやや低く、汗などでもわずかにサビが発生します。
総合評価では、鍛造のハフニウムがもっとも丈夫で実用的
こうして見てみると、結論としては、鍛造のハフニウムがもっとも丈夫ということになります。
ハフニウムは耐食性は抜群、汗や酸・アルカリにも溶けないので金属アレルギーの原因になることもなく、適度な粘りもあってサイズ修正が可能、美しい銀色は色褪せることもない、と非常に優秀な性質を持ちます。
サイズ修正加工や、万が一骨折などで指輪を切断しなければならない場合なども考慮すると、ビッカース硬度でHV150〜200あたりがもっとも扱いやすいとも言えます。HV300を超えると切断はかなり困難ですが、HV200程度ならば男性の力ならばニッパーでなんとか切断できるからです。またHV150以上の硬度があれば変形がまず起こりえないです。
そういう意味で、ジルコニウム、チタン、ニオブ、タンタルも日常生活に十分な硬さがあり丈夫だと言えます。
ハフニウムは非常に希少な金属なので手に入りづらく、加工できるところも少ないのですが、丈夫さと実用性において、おそらくこれ以上の金属素材は、現状では存在しないかと思います。
幅2mm以下の細い指輪をお作りする場合も、鍛造ハフニウムであれば、丈夫な上にバネ性もあるので、変形することはまずありません。
幅2mm 細くても変形しない、丈夫な鍛造ハフニウムの指輪
ハフニウムの結婚指輪については、こちらのホームページで、他にもいろいろなデザインやバリエーションを見ることができます。
→ https://tantalum.tokyo-diamond.jp/
こちらも併せてお読みください。
【素材比較】ハフニウムとジルコニウム、何が違うのか??
https://ameblo.jp/ringology/entry-12238883130.html
【制作に掛ける想い】なぜ僕がレアメタルで指輪を作るのか。
https://ameblo.jp/ringology/entry-10501431535.html
金属アレルギーにならない結婚指輪
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