この世の実在性はどの程度なのか?
生きものには意識があります。
意識は個体という唯一の存在の統一性を保つために不可欠です。
例えば、分かれ道でどちらかを選択しないといけない。
条件反射で処理する生きものでは問題は生じないでしょう。
しかし、すこし高度になり、過去情報の蓄えが豊かになると、
今の刺激と過去情報を総合的に判断する必要が。
ここで、意識が発生します。
今の刺激と過去情報を総合した世界像をつくるのです。
蟻には蟻の世界像があります。
その中心は嗅覚による世界でしょう。
すべての生きものには特有な世界像があります。
人に特有な世界像、それが私たちの世界です。
無数の感覚情報があります。
体内感覚は特に重要です。
その実感はあまりに強烈。
痛みなど特に明瞭。
その実感が強烈なために、
その世界が実際にあると、錯覚、思い違いします。
当然です。
ピラミッドは確かに存在します。
人の世界では明白な事実。
しかし、その存在性は確かなものではありません。
他の生きものにとっては、単なる景色の一部でしょう。
大した興味を抱かせない自然の一部。
ピラミッドが作られた当時。
大王が抱いていた悩みも、
大王だけ固有のもので、
他の人々や生きものにとって、
無視でき、無いと思える出来事です。
あなたの意識がどれほど強烈であれ、
それはいつか消えます。
それが死です。
しかし、意識が消えるだけで、
あなたの死体は残ります。
やがて、灰となり煙になって、
宇宙の中で拡散していきます。
大王が抱いた願望や悩み。
そしてピラミッド。
どちらも、同程度の重みと幻想。
年月と共に消えていくもの。
つづく